主人公のペツェッティーノはオレンジ色の四角。
自分が分からない、何物でもない「ぼく」の象徴でしょうか。
自分に自信が持てないからって、誰かの部分品なんだと思いこむペツェッティーノが切なかったです。
優れている誰かに寄りかかることで、安心したかったのでしょうか。
優れて見える人だって、その人なりの劣等感を抱えているのかもしれないのに。
彼に、思春期の頃の自分を重ね合わせてしまいました。
思い込みが強くて、周囲と自分を比べては落ち込んで、何故だか焦っていて、無闇に動いて失敗して・・・。
でも、ペツェッティーノは転んで、粉々になったからこそ、
自分が自分の部分品が集まってできていると知ったのですね。
「ぼくはぼくなんだ!」
見た目が変わったわけでも、能力が備わったわけでもないけれど
必死にもがいて答えを見つけたペツェッティーノの喜びは
友達だけじゃなく、読んでいる私にも伝わってきました。
レオ・レオニの他の作品のように可愛らしい小動物は登場しないけれど、
色鮮やかな四角、波やこなごなじまのマーブル模様が美しく、強く魅せられます。
絵本は子どもだけのものではない、その思いを強くした絵と物語でした。