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暮らしを描いた絵本といっていい
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投稿日:2022/06/05 |
「まめまめしい」という言葉があります。
児童文学者で今年(2022年)の1月に亡くなった松岡享子さんが原案を書いたこの絵本の中にも、えんどうまめばあさんとそらまめじいさんの二人が働きもので「まいにちあさからばんまで、くるくるとまめまめしくはたらいていましいた」と文章に使われています。
たぶん、その「まめまめしく」から、主人公の働きものの夫婦が「豆」の名前で呼ばれているのだと思います。
ただ、「まめまめしい」という言葉を漢字で書くと、「豆豆しい」とは出てきません。
「広辞苑」によると、「忠実忠実しい」と書くようです。
そして、その意味は「非常に誠実である」や「よく勤め働くさま」と出てきます。
この絵本のおじいさんとおばあさんは、とても働きものですから、やっぱり「まめまめしい」二人なのです。
ところが、この二人には一つだけ困ったことがありました。
それは、何かをしていても他にやりたいことが見つかると、ついそちらの方に手をつけてしまうことでした。
豆のツルが伸びてきたので支柱を立てないとと思いついて、畑に行くと草だらけ。
なので、まず草とりをして、その次はその草をうさぎにあげようとうさぎ小屋に向かいます。
あれれ、豆の支柱はどうしたのかな。
こんな風に二人の生活はどんどん広がっていきます。
豆の支柱を立てることを思い出したのは、夜中になってから。
これでは「まめまめしく」にもなります。
この絵本のはじめに、松岡享子さんのこんな言葉が載っています。
―「暮らす」ということが大事。いそがしく、たのしくね。
松岡さんもきっとそんな風に暮らしていたのでしょうね。
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絵本で「いないいない ばあ!」
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投稿日:2022/05/31 |
赤ちゃんって、どうして「いないいない ばあ!」が好きなんでしょう。
「ばあ!」のあとの、きゃっきゃっ笑う顔の、なんて素敵なことか。まさに天使。
だから、つい、「いないいない ばあ!」をしてしまいます。
さいとうしのぶさんのこの絵本は、まさに「いないいない ばあ!」を絵にした作品。
この絵本で赤ちゃんや小さな子供が笑い出す瞬間が見えてきます。
「あな」が「いないいない」の状態。
そのあとの「なかから…」が、「いないいない」と「ばあ!」のあとのちょっとした時間。
あとは同じ、「ばあ!」
ほらっ、笑った。
「いないいない ばあ!」で飛び出してくるのは、顔ですが、この絵本で「あな」から飛び出してくるのは、モグラだったりネズミだったりネコやイヌだったり。
笑ってしまったのは、トンネルという「あな」から飛び出してきたもの。
「ばあーーーーーー!」と、超特急なんですもの。
なので、ページをめくる前に、「さあて、何が出てくるのかな」なんて、子供たちの興味を高める読み聞かせもあっていい。
いろんな動物の名前を口にする子供たちの、底抜けに明るい笑顔が見えるよう。
さあ、あなたも一緒にのぞいてみませんか。
「あなのなかから…」、と「ばあ!」
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ウクライナにはこんな素敵な昔話もあります
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投稿日:2022/05/22 |
ウクライナは昔話の宝庫だそうです。
それは、人から人へ、口から口へ、伝わったあかしでしょう。
そんな話には、人のぬくもりを感じます。
おそらくこの話もそんなひとつで、日本の内田莉莎子さんが再話の形で文を書いています。
再話というのは、昔話や伝説などを、子供向けにわかりやすく書き直したものをいいます。
内田さんのことを少し書き留めておきます。
1928年生まれのロシア文学者・児童文学者です。祖父は作家の内田魯庵で、莉莎子という名前はモナリザにちなんで祖父がつけたといいます。1997年に亡くなるまで、ロシアやウクライナといった国の昔話の再話や翻訳を残しています。
一方、絵を描いているのがウクライナの画家ワレンチン・ゴルディチュークさん。
日本の絵本画家とはやはりタッチが違いますし、物語の舞台となったウクライナの小さな村の古い家の様子や登場するおじいさんとおばあさんの服装など、私たちの生活とはかなりちがうことがわかります。
そういう時代の違い、国の違いをしっかりととられて、しかし、人々がこういう話に癒された感情は世界どこであっても変わらないということを伝えたいものです。
話はタールを縫ったわらの牛のおかげで、クマやオオカミやキツネを捕まえたおじいさんたちがこれらの動物を逃がしてあげることでハチミツやめんどりなどの豊かなものを手にするというもの。
日本の文学者とウクライナの画家がコラボした、なんとも美しい絵本を私たちは今でも読むことができます。
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たんぽぽのちいさなこどもの大冒険
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投稿日:2022/05/15 |
「蒲公英」、この漢字はなかなか読み方が難しいですが、「たんぽぽ」と読みます。
もっと難しいのが「絮」。これで「わた」と読みます。
たんぽぽの花が咲き終わったあとの綿毛のこと。「絮」では難しいので、普通は「綿毛」とかいいます。
「そらまめくん」シリーズや「やさいのがっこう」シリーズで人気の絵本作家なかやみわさんが描いたこの絵本の主人公は、このたんぽぽの綿毛です。
付いたかわいい名前が「たねこちゃん」。
たねこちゃんには99本のお兄さんやお姉さんがいます。
お兄さんたちは一番小さなたねこちゃんに、上手な飛び方と注意しないといけないことを教えて、飛んでいってしまいました。
残されたたねこちゃんは、なかなか飛び立つことができません。
ついには、スズメに連れ去られてしまいます。
と、あっという間に強い風に飛ばされて地上に落ちていきます。
そこに、雨が降り出して。
たねこちゃんの旅立ちは、ハラハラドキドキの冒険旅行です。
着いたことをは、あまり陽の差さない、こけたちの世界。
たくさんの野菜を描いてきたなかやさんは、とうとう苔(こけ)までキャラクターにしていまいました。
出てくるのが、ほそうりごけ、ぜにごけ、すぎごけ、ぎんごけといった苔なかま。
絵本を持って、苔のなかまたちを探してみるのも面白いかも。
たねこちゃんは、苔のなかまたちに励まされて、小さな自分の場所を見つけます。
たんぽぽの綿毛がどうなるのか、苔って何? と、新しい発見がある絵本です。
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ママは1人でも大好き
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投稿日:2022/05/08 |
『西遊記』に登場する孫悟空に、自分の毛を抜いてふっと息を吹きかけると、たくさんの孫悟空が現れるという術がありましたが、わが日本でも忍者の代表的な忍術として「分身の術」が知られています。
それほどに古来より自分の分身が生まれることが、人間の願いとしてあったということだろう。
この絵本でも、その願望が描かれています。
もっともそれを願ったのは、ママ自身ではなく、ちっともかまってくれなくてふくれっ面のおにいちゃん。
それで、つぶやいたのが、「あーあ、ママが10人いればいいのになあ」。
そうしたら、本当に10人のママが出てきてしまいます。
1人目のママはひざにのせてくれるし、2人目のママは絵本を、3人めのママはうたってくれます。
だから、「今は忙しいの」も言わないし、「あとで」とも言わない。
面白いのは、美容院できれいになるママやかっこよくお仕事しているママも登場してくること。
これって、もしかして、ママの願望だったりして。
作者の天野慶さんが巻末に載せた短文に「子育てをしていると、どうして自分の体がひとつなのだろうと、うらめしく思ってしまうことがある」と、ちらりと本音をこぼされています。
それで、「忍者修行」に出て分身の術を覚えたいと、ユーモラスに語っています。
ママはそんなことをちょっぴり考えているんだ、だったら、パパは?
まさか、逃げ出しの術じゃないよね。
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愛はめぐり、つながっていく
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投稿日:2022/05/01 |
中島みゆきさんに「誕生」という楽曲があります。
その歌詞の一節、「生まれた時だれでも言われた筈/耳をすませて思い出して/最初に聞いた/Welcom」。
ここを聞くたびに、そうだ、みんなこんなふうにしてこの世界に迎えられたのだと胸が震えます。
そうして生まれた私たちはお母さんにだっこされて、お母さんの歌を聞きます。
この絵本は、そんなお母さんの愛に満ちています。
「アイ・ラヴ・ユー いつまでも/アイ・ラヴ・ユー どんなときも」と歌うお母さん。
子供はやがて成長し、いたずらもするようになります。おふろに入るのもいやがったり、悪い言葉も覚えます。
お母さんも時には「こんな子、動物園にも売ってしまいたい」と嘆いたりします。
けれど、子供が眠ってしまうと、やはりあの歌を歌っているのです。
お母さんの愛情はいつまでも変わりません。
最後にはお母さんは歌も歌えなくなるほど年をとります。
すっかり大人になった子供が、そんなお母さんを抱きかかえ、歌ってあげます。
お母さんが歌ってくれた歌は、次に自分の子供にも歌ってあげます。
この絵本のすばらしさは、愛がめぐって、つながっていくことです。
「Welcom」と迎えられた子供は、新しい「Welcom」で世界をつなげていきます。
そこには愛があるはずです。
時代が変わっても、伝えていかないといけないもの、そのことをこの絵本は描いています。
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この場所で本と出会った子供たちの幸せ
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投稿日:2022/04/24 |
これは、宮城県塩竈市の港のそばにあった「うみべの文庫」という家庭文庫のお話です。
児童向けに書かれたノンフィクションです。
家庭文庫というのは、個人が自宅と蔵書を開放して、近所の子どもたちに本を貸し出したり、お話をして聞かせたりする、小さな活動のことをいいます。
「うみべの文庫」は、長谷川ゆきさんという女性が始めました。
ここには5千冊の絵本があったそうです。
「あった」と過去形で書いたのは、今はもうなくなっています。そして、活動を始めた長谷川ゆきさんも2018年に病気で亡くなっています。
長谷川さんが絵本としっかりと出会ったのは、子供が生まれて図書館に通いだしてから。
この頃、長谷川さんは交通事故で大けがをします。それでも出かけた図書館で、知らない子供から絵本を読んでとねだられたりします。
それから長谷川さんは読み聞かせ講座に出たり、実際に読み聞かせをしたりして絵本にもっと親しんでいきます。
そして、家庭文庫があることを知ります。
そこから何年もかけて絵本をそろえていきます。
その数が800冊を超えた2011年3月11日、東日本大震災の大きな津波が襲います。集めた絵本はたった2冊をのぞいて、すべて流されます。
一度はあきらめかけた長谷川さんの夢を知った多くの見知らぬ人の善意で、全国から絵本が集まりだして、長谷川さんはついに家庭文庫の解説という夢をかなえることができるのです。
そんな「うみべの文庫」がなくなってしまったのは残念ですが、長谷川さんの本の力を信じる思いがこうして一冊の児童書になりました。
この本のなかの長谷川ゆきさんの笑顔が、とても輝いています。
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やさいのがっこうで、しっかり勉強しましょう
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投稿日:2022/04/17 |
花が咲いて実になって、それをいただく。
野菜にはそんなイメージがあります。
イチゴもそうだし、トマトもそう。キュウリもナスも、ソラマメもそう。
もっとも八百屋さんで売っている野菜がどんな花をつけるのかあまり見ることはありませんが。
ところが、そんな生育の順番からちょっと想像ができない野菜たちがあります。
ハクサイやダイコン、それにこの絵本の主人公でもあるキャベツ。
なので、キャベツくんは自分に花が咲くって聞いてびっくりします。
イチゴやトマトの花を見ることも少ないけれど、それ以上にキャベツに花が咲くなんて、キャベツくん以上に、この絵本を読む子供たちにも想像できないかもしれません。
キャベツくんが通う「やさいのがっこう」には、なんでもよく知っているなすび先生がいます。
キャベツくんや仲間の野菜たちに、野菜に花が咲く理由を教えてくれます。
先生によると、キャベツくんのような野菜はおいしい時期に収穫されないと花が咲いてしまいます。
つまり、キャベツやハクサイは花になる前のものを八百屋さんで売っているのです。
イチゴやトマトの花以上にキャベツやハクサイの花を見ることはないのは、花が咲く前の一番おいしい時に食べてしまうからなんです。
この絵本ではキャベツの防虫対策としてキク科のレタスがいいことや春キャベツと冬キャベツの違いなど、なすび先生がさりげなく教えてくれます。
「やさいのがっこう」でしっかり野菜のことが勉強できます。
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いつか私のふうせんもとんでいくのかな
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投稿日:2022/04/10 |
できれば、そうならないようにしたいけれど、それは叶わないかもしれません。
私もこの絵本のおじいちゃんのように、「記憶」という風船を手放すことになるかもしれないのです。
今の言葉でいえば「認知症」。
この絵本は、やさしい文章とやわらかな絵で描かれていますが、「認知症」をまっすぐに見つめた作品になっています。
少年はいくつもの風船を持っています。
お父さんとお母さんは少年よりたくさんの風船を持っています。
おじいちゃんは、それよりももっと多くの風船です。
この絵本で描かれる風船は「記憶」です。
おじいちゃんは少年に風船の中のたくさんの話をしてくれます。
おばあちゃんと結婚した時の話だとか。
そして、少年はおじいちゃんと同じ風船も持っています。
それは、おじいちゃんと釣りに行った時の「記憶」。
そんな大事な風船を、おじいちゃんはひとつずつ手放していきます。
最後には、少年のこともわからなくなっていました。
忘れるという悲しい症例を、この絵本はやさしく描いています。
けれど、この絵本には最後救いが描かれています。
おじいちゃんの風船は、いつの間にか少年が持つ風船になっていたのです。
おじいちゃんが語ることで、風船が少年にバトンされたのです。
おじいちゃんから「記憶」は消えていきましたが、その「記憶」を少年が受け継いでいきます。
私たちはそのようにして、生きるということを繋いでいくのだと思います。
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間違ったってかまわない
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投稿日:2022/04/03 |
この絵本は一編の詩がもとになっています。
作者である蒔田晋治さんが中学2年生の担任だった時に生徒に呼びかけた詩です。
だから、よく読むと、先生の顔が見えるようですし、先生の声も聞こえてきそうです。
先生の呼びかけにまなざしをむける子供たちの表情も見えてきます。
蒔田さんは1925年生まれ(2008年逝去)、85年まで公立の小・中学校で先生として働いていたそうですから、この詩もその頃のもの。
それが2004年に長谷川知子さんの絵と手書きの文字で生まれたのが、この絵本。
絵本になって、読者層がうんと広がったことは間違いありません。
蒔田さんはこの詩を中学生の生徒に向けて書きましたが、教室でまちがうことに不安に感じているのは小学生も同じ。
さらにいえば、教室での生活を初めて経験する小学1年生はその不安が大きいと思います。
そんな子供たちへ、「教室はまちがうところ」だよ、「はじめからうまいこと言えるはずない」と教えてあげて欲しい。
世界をみれば、まちがいに満ちている。
「まちがったって誰かがよ/なおしてくれるし教えてくれる」、世界はそう簡単ではないだろうが、少なくとも学校の教室ではそうであって欲しい。
この詩のおしまいは、「そんな教室 作ろうや」という先生の熱いメッセージになっていますが、間違ってもおかしくない、正しい答えを互いに出し合う、そんな教室をつくるのは子供たち自身だと、教えてあげて下さい。
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