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投稿日:2021/06/13 |
体長3メートル近い巨大アミメニシキヘビが逃げ出して大騒ぎになったが、飼っていた動物が逃げ出して事件になることがままある。
逃げ出したのではなく、飼い主が飼えなくなって野に放つという無責任なこともあったりする。
女優の室井滋さんと絵本作家の長谷川義史さんという黄金コンビによるこの絵本の「あとがき」で、文を書いた室井さんは「動物の気持ちと人の気持ち…。大切な命がどうすれば守られるか」を考えて欲しいと書いている。
この絵本のタイトルの「ウリオ」は、大きくなったイノシシの名前。
ウリオは小さいウリ坊と呼ばれていた頃山の中で母イノシシとはぐれていたのを、木こりのおじいさんに助けられる。
そして、おじいさんの知り合いの街に住む一家に預けられることになる。
お父さん、お母さん、お兄ちゃんのマー君、妹のももちゃんたちに可愛がられて、ウリ坊はどんどん大きくなって、今ではキバもりっぱな大人のイノシシウリオになった。
ところが、マー君たちはそんなウリオを怖がったり、嫌いだす。
ウリオにはその理由がわからない。
とうとつウリオはマー君の家を飛び出してしまって、街は大騒ぎ。
おしまいには猟友会の隊長が鉄砲持ってかけつけます。
ウリオはどうなるのでしょう!?
最後はマー君たち一家の懸命の説得で、ウリオは家に帰ります。
この絵本の創作のきっかけは、室井さんの友人の家で暮らすイノシシがヒントになったようです。
この絵本や最近のニュースから動物と私たちの気持ちをわかりあえればいいと思います。
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歯医者さんはこわくない
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投稿日:2021/06/06 |
人生、年を重ねると悔やむこと多くなるものですが、中でも歯もそのうちのひとつだ。
なんといっても、昔の歯医者はこわかった。
女優室井滋さんが文を書き、絵本作家の長谷川義史さんが絵を描く、絵本界のいわば黄金コンビが2014年に発表した歯の予防を推進するこの絵本の主人公であるヨシオ君も、歯医者が大の苦手。
「あの歯をギ〜ッとけずる音、空気をプシューと送り込む音」は、きっと誰もが嫌いなはず。
でも、ヨシオ君は知らないのです。
最近の歯医者さん、というかデンタルクリニックと名前すら軽やかで、音に関してはあまり変わっていないけれど、昔と違って先生の優しいことといったらない。
昔は鬼のような歯医者が多かったが、今は天使。
あ〜あ、昔から天使の歯医者さんがいたら、こんなにも悔やまないのに。
この絵本では歯が全員悪いヨシオ君一家(飼い犬のポチまで歯石がたまっていると嫌われている)が、隣の歯キラリ〜ン一家が何故きれいなのかを偵察しています。
と、どうでしょう。
食事のあとにデザート食べて、さらにはおしゃべりも楽しく、おしまいには「アゴアゴワルツ」で歌い踊りまくっているではないですか。
ここから、この隣の一家の歯がきれいの秘密を解き明かしていきます。
と、すっかり歯の予防推進にはいっていきます。
よい子の皆さん、ヨシオ君のように虫歯になる前に歯医者、いいえデンタルクリニックで一度見てもらいましょうね。
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いのちって、何だろう?
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投稿日:2021/05/23 |
谷川俊太郎さんの詩に岡本よしろうさんが絵をつけた、詩の絵本。
2013年に月刊「たくさんのふしぎ」に載ったものを2017年にハードカバー化された。
谷川俊太郎さんの詩は、実はもっと以前のもの。
絵本の巻末に載っている谷川さんの言葉によると、「まだミニスカートが新鮮に感じられたころ」だという。「若い女性の写真といっしょに雑誌に載った」らしいから、女性誌からの依頼だったのだろうか。
「言葉は力まずに自然に出てきたように記憶」していると谷川さんが書いているように、言葉は平易だし、声に出して読むのにちょうどいい。
けれど、やはりテーマは重い。
海外向けだろうか、英文のタイトルは「WHAT’S LIFE?」となっている。
つまり、いのちって何だろう?
この詩の中で、特に第二連が好きだ。
「生きているということ/いま生きているということ/それはミニスカート/それはプラネタリウム/それはヨハン・シュトラウス/それはピカソ/それはアルプス/すべての美しいものに出会うということ/そして/かくされた悪を注意深くこばむこと」
なにげないものをいくつも並べ、それを「美しい」という。
普段の生活の中で、私たちはそのことを忘れていないだろうか。
そのことは岡本さんの絵にもいえる。
重いテーマの詩だが、つけられた絵はある町のどこにでもいるような家族の日常。
そんな日常の中にこそ「生きる」意味があるのだと教えられているような気がした。
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あの子今頃どうしているのかな
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投稿日:2021/05/16 |
女優の室井滋さんが文を書き、絵本作家の長谷川義史さんが絵を描いた絵本『しげちゃん』は、この絵本で三作目となります。
しげちゃんは小学三年生の女の子。今回はしげちゃんの、淡くて切ない初恋が描かれています。
初恋はいつのことだったのか、みなさんこっそり覚えているものです。
小学生の頃によくケンカをした女の子がいました。担任の先生が「ケンカをするのは好きだからだ」なんて、叱っていましたが、そんなことも昭和の小学校らしい記憶のような気がします。
しげちゃんの場合、大阪から転校してきたちょっとおかしい男の子サエちゃん。(佐枝一郎というのが本名だから、サエちゃん)
サエちゃんはちっとも勉強ができない。でも、いつの間にクラスの人気者になっている。
しげちゃんは気になっているのに、なんだかサエちゃんからはずれそう。
そんな時、サエちゃんが学校に来なくなった。
先生からサエちゃんの家に給食のパンをもっていくように言われたしげちゃんはドキドキ。
そして、しげちゃんはどんどんサエちゃんのことを知っていく。
けれど、サエちゃんはしばらくしてまた大阪に戻っていってしまう。
しげちゃんに自由勉強ノートに書いた最後の手紙を残して。
この絵本を読んで、あの頃のことを思い出しているのはお母さんやお父さんたちかも。
このシリーズ、ぜひとも今後も続けてもらいたい。
なんとしても「しげちゃん上京物語」(勝手にタイトルつけちゃった)は読みたい。
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わたしたちのたいせつなじゅんばん
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投稿日:2021/05/09 |
桜木紫乃さんの初めての絵本は、とても考えさせられる女性の、家族の絵本でした。
この絵本に寄せた桜木紫乃さんのメッセージをネットで読むことができます。
そこには母から自分の名前を忘れられた自身の経験が書かれ、そのあとに「この先、どんどんわたしを忘れてゆく母のことを考えながら、「家族じまい」という小説を書きました。絵本「いつか あなたを わすれても」は、小説からは漏れた、孫の視点で書いてみました。」と綴られていました。
この絵本に登場するのは、幼い私、そしてママとママの名前を忘れたおばあちゃんの「さとちゃん」。
認知症の「さとちゃん」はママの名前だけでなく、これまでのことをゆっくり忘れていこうとしています。
ママはそのことを悲しむのではなく、しっかり受けとめています。
そんな「さとちゃん」がいたから、私とママは「女の子と女の人のちがい」や「初めてのキス」のことなど、少し大人の会話ができるようになります。
それは母から娘に手渡す大切な時間。
初めての絵本作りに桜木紫乃さんは、「不要な言葉を取り払ってゆく作業」と綴っています。
いつも書く物語の文体ではなく、言葉を絞ってしぼってできた絵本だからこそ、伝わる思いというのがあります。
桜木さんのそんな思いが、オザワミカさんの絵にもよく伝わっていて、ここでも「不要な」ものが取り払われています。
「いつか わすれてしまうじかんを/たいせつにすごす」、心の奥にジンをくる言葉です。
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そのことばの先にあるもの
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投稿日:2021/05/05 |
この絵本の作者湯本香樹実(ゆもとかずみ)さんといえば、1992年に発表された『夏の庭 The Friends』を読んだ人が多いかもしれない。
あるいは、映画化された『岸辺の旅』を思い出す人もいるだろう。
どちらかといえば寡作の書き手だが、湯本さんの作品が好きという読者も多いのではないだろうか。
そんな湯本さんが児童というよりかもう少し上の少年少女向けに書いたのが、この作品。
絵本の判型をしているので、中学生や高校生となるとなかなか手にしにくいかもしれないが、読めば何ほどか心に残るものがあるだろう。
「あなたがおとなになったとき/どんな歌がすきだろう」
「あなたがおとなになったとき/空はおなじ青さだろうか」
このように、「あなたがおとなになったとき」がリフレインされていく。
この言葉のあとにつづく問いかけの、あなたの心に響くものがきっとあるだろう。
もうすっかりおとなの私の場合は、「あなたがおとなになったとき/いちばん手にとりやすいところにあるのは/なんの本だろう」だった。
そんな忘れかけているものを、それは子どもであっても少年であってもおとなであっても同じだろう、この言葉が思い出させてくれるはずだ。
そして、この絵本に登場する少女と少年のように、いつしか大きな塀を乗り越えて新しい世界に旅だしていくのだろう。
おとなになるために。
はたこうしろうさんの絵が湯本さんの文をまるで映画のように仕上げてみせた、そんな絵本になった。
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だいじなものを さがしにゆこう
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投稿日:2021/05/04 |
みどりは目に優しい色だといわれています。
初夏の頃の若葉のあざやかな緑を表わす夏の季語に「新緑」があります。
俳句の世界では、その他に中村草田男の「万緑の中や吾子の歯生え初むる」で広く愛用されるようになった「万緑」という季語もあります。
「歳時記」にはこの季語に「木々の緑が深まり、生命力に溢れる様子」と解説がついています。
みどりには、優しさだけでなく、いのちの生き生きとした姿を感じさせます。
この絵本の表紙も、そうです。
荒井良二さんのみどり色を基調にした森の絵が目をやさしくすると同時に、ページの中へと引き込んでいきます。
中には、詩人長田弘さんの文が、これもまた不可思議な呼び声となって、私たちを惹きつけます。
「きみの だいじなものを さがしにゆこう」
「きみの たいせつなものを さがしにゆこう」
みどりの深い森の中に、その答えはあるのでしょうか。
色や光や匂いや笑い声、いろんなものを見つけます。
そして、本。子どもの時にとても好きだった本。
「その本のなかには きみの だいじなものが ある。ぜったいに なくしてはいけない きみの思い出がー」と、声が教えてくれます。
本の詩をたくさん書いてきた長田さんだからこそ書ける詩の一文のように感じました。
そして、ふたたび森のみどりの中に私たちはいます。
大事なもの、大切なもの、それはずっと探し続けるものでもあります。
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大人にも読んでもらいたい岩波少年文庫
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投稿日:2021/05/01 |
岩波少年文庫が創刊されたのは、1950年12月25日。
ということで、昨年2020年に創刊70年を迎えました。
この本は、70周年を記念して、岩波少年文庫の別冊として刊行されたものです。
創刊時出たのは『宝島』『あしながおじさん』『クリスマスキャロル』『小さな牛追い』『ふたりのロッテ』の5冊。
以来、70年の時を経て465点の作品が刊行されています。
平均すれば、1年あたり7冊に少し足りませんから、けっして多くはありません。
というのも、1960年代には新刊をほとんど出していなかったそうです。
この当時は児童書でも全集や作家の作品集などの出版が盛んで、岩波少年文庫のような小型で地味なシリーズは人気がなかったようです。
この本では、そういった少年文庫のあゆみを年代を区切って解説していて、それは同時に児童文学の歴史のある側面も語っていることになり、資料として残しておくべきものになっています。
その他、少年文庫の代表作を解説した章はブックガイドとしても役立ちますし、「翻訳の妙味」という章では創刊時に「翻訳は原作に忠実に、美しい平易な日本語に」を心がけた少年文庫ならではの読み方だと思います。
まとめ的に綴られた最後の章「昔も今も」の中に心に沁みるいい文章がありました。
「本はすばらしい、本が自分の人生にあってよかった、と思っている大人は、自分が体験したそのすばらしさを子どもに渡す役割がある。」
この本は岩波少年文庫の一冊ですが、ぜひ大人の人にも読んでもらいたい作品でもあります。
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最近空を見上げたこと、ありますか
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投稿日:2021/04/29 |
最近空を見上げたこと、ありますか。
ひと頃「定年後」という言葉がとても気になって、実際自身がその「定年後」になってみると、空をよく見上げていることに気がつきました。
仕事をしている時は、通勤時の満員電車の人の肩とか空を隠すようなビル群とか地下街やビルの中ばかりで、空はそこにあったはずなのに、見上げることは少なかった。
そんな生活から解放されて、あ、今日は空がきれいとか雲が出てきたなとか雨近いなとか、空の下で息をしていることを実感します。
詩人の長田弘さんが空のことについて書いた文は、「あっ 雨」から始まります。
雨が次第に強くなってきて、空の色が、それは世界の色でもあります、青から灰色に変わっていきます。
風も強くなり、雷鳴がとどろきます。
と、そこで長田さんは「運命/みたいに たたきつけ」と、「運命」という固い言葉で綴ります。
やがて、雨がやみ、空は明るさを取り戻していきます。
だんだん日が暮れていき、夜になります。
空は星でいっぱいになります。
まるで私たちの人生そのもののような、空の姿です。
荒井良二さんの絵がとてもよくて、絵本ですから音はないのですが、絵を見ていくとどんどん音楽が流れてくるようです。
きっと音楽好きな人なら、あの曲が聴こえてくるようというでしょうが。
ページを閉じたら、そっと空を見上げて下さい。
どんな空ですか。
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いのちの豊穣を抱えながら
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投稿日:2021/04/25 |
茨木のり子さんに「水の星」という詩があります。(詩集『倚りかからず』収載)
その詩の一節に「いのちの豊穣を抱えながら/どこかさびしげな 水の星」とありますが、まさにその「いのちの豊穣」に呼応するように、この絵本で文章、それはまさに詩といってもいいですが、を綴った長田弘はこう書いています。
「ははのように いのちを つくり/ちのように からだを めぐり/たましいを ぬぐってくれる」と。
それは、水のことです。
茨木のり子さんが「水一滴もこぼさずに廻る」と驚いたこの星は、水にあふれた星なのです。
この絵本でまず驚くのは、荒井良二さんの絵だと思います。
表紙の一面の黄緑色。普通水を絵で描けと言われたら、水色を使うのに、荒井さんはそうではない。
黄緑色であっても、ああこれは水なのだと誰もが実感できる。
長田さんの文にこうあります。
「どんな いろお してないのに/どんな いろにでも なれるもの」。
そういえば、水は決して水色でもない。
透明であるけれども、いろんな色を持っている。
そこにも、豊穣を感じます。
宇宙に浮かぶ地球がこの絵本にも描かれています。
茨木のり子さんが見た「水の星」は、ちょうどこの荒井さんが描いた星のようであったにちがいない。
長田さんが思った水も、またそうであったにちがいない。
色んなことを考えてしまう、そんな絵本です。
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