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夏の雨

パパ・70代以上・埼玉県

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夏の雨さんの声

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自信を持っておすすめしたい 泣いたのは赤おにだけじゃない             投稿日:2021/01/31
ないた赤おに
ないた赤おに 作: 浜田 廣介
絵: いもと ようこ

出版社: 金の星社
日本を代表する児童文学といっていいこの作品を初めて読んだのはいつだろうか。
 調べると、この作品を書いた浜田廣介は坪田譲二や小川未明とともに「児童文学界の三種の神器」と呼ばれていたそうだが、さすがに「三種の神器」という言い方は現在では古すぎる。それでも、浜田のこの作品はちっとも古びていないように思う。

 浜田廣介は明治26年(1893年)山形県高畠町に生まれた。現在ここには浜田の功績を讃えた記念館がある。
 亡くなったのは昭和48年(1973年)80歳のことである。
 この作品が「おにのそうだん」として初出されたのが1933年というから浜田が40歳の時。
 作家としてはまだ初期の頃だろうか。

 この作品には二人の鬼が登場する。
 村人たちと友だちになりたい「赤おに」となんとかそれを助けたい「青おに」。
 この作品が読むものをの心を打つのは、なんといっても「青おに」の自己犠牲の優しい心だろう。
 自分が人間に乱暴を働く、それを「赤おに」がとっちめることで村人たちの信頼を得る。
 そして、自分はそのまま身を隠す。
 だから、最後の「青おに」が立てた立て札に書かれた文に感動する。泣くのは「赤おに」だけでなく、読者もだ。
 そして、それは子供だけでなく大人だって同じだ。

 この絵本は浜田の文章に絵本作家のいもとようこさんの柔らかな絵がついている。
 そこではみんなほっこりした表情をしていて、それもまたこの作品にあっている。
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自信を持っておすすめしたい 吉田尚令さん、なんて素敵な絵を描かれたことでしょう  投稿日:2021/01/24
ふゆのはなさいた
ふゆのはなさいた 文: 安東 みきえ
絵: 吉田 尚令

出版社: アリス館
 「冬枯(ふゆがれ)」は、俳句の冬の季語。「冬が深まり木や草が枯れはて、野山が枯一色となって蕭条たる光景」と『歳時記』にあります。
 「鳥うせて烟のごとく木の枯るる」(富澤赤黄男)のように、植物だけでなく動物たちの姿も消えるさまを詠んだ句もあれば、そんな中にも命の営みを詠んだ「枯れきつて育む命ありにけり」(西宮舞)といった句もあります。
 安東みきえさんのこの絵本は、まさにこの二つの句が合わさったような作品です。
 冬枯れだからこそ、見事に咲く花(どんな花でしょうか)を堪能できる、そんな絵本です。

 登場するのは、初めての冬を迎えたこねずみです。
 池のそばで泣いています。と、池から顔を出したのは一匹の金魚。
 「なくのはきらい」と、こねずみに声をかけます。
 こねずみは金魚に泣いている訳を話します。
 せっかく友だちになったつばめやヤマネが冬になっていなくなって「ひとりぼっち」になったと泣いていたのです。
 そして、「花も咲いていないから」とまた泣くのです。
 金魚は自分が友だちになると約束します。
 金魚もまた最近この池に捨てられて、仲間たちとなかなかなじめなかったのです。
 次の朝、雪が降りました。
 白い花のような雪を見て、こねずみは大喜び。さっそく友だちになった池の金魚に会いにいきますが、池は一面凍っていて、金魚 に会えません。
 池の中からこねずみのことを見ていた金魚も焦ります。
 その時です。池の中でひとりぼっちだと思っていた金魚の仲間たちが集まってきます。

 吉田尚令さんの見事な絵に、きっとあなたも心打たれるでしょう。
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自信を持っておすすめしたい 愛するものをさがして何度でも             投稿日:2021/01/17
100万回生きたねこ
100万回生きたねこ 作・絵: 佐野 洋子
出版社: 講談社
 「ゆるやかに崩壊していった家庭を営みながら」と後年エッセイで綴った佐野洋子さんは、自身の代名詞ともなったこの絵本をわずか15分で書き上げたという。
 そうして出来上がった絵本は1977年に刊行、その3年後の80年に最初の夫と離婚することになる。
 そして、この絵本はロングセラーとなり、刊行から半世紀近く経った今も読み継がれている。

 佐野さんはどうしてこの作品を書いたのでしょうか。
 100万回も生き死にを繰り返したねこが最後には「けっして」生き返らなくなる。それは、愛する妻を失ったからです。
 佐野さんにとって、壊れていく家庭はまだ生き返ることのあるものだった、ここでは死ねないという思いだったのかもしれません。

 この絵本が多くの人に愛されているのは、多くの人にとって、今はまだ100万回の生き死にの途中だからです。
 まだ本当に愛するものに出会っていない、そんな思いと、もしかしたら亡くなった人もこのねこと同じように生き死にを繰り返して自分のところにやってくるのではないかという、そんな思い。
 だからこそ、この本は何度読んでもいろんな表情をして読者を受け入れてくれるような気がします。

 そして、佐野洋子という絵本作家もまたこの絵本を通じて生き続けるのです。
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自信を持っておすすめしたい タヌキも読書感想文書くのだろうか             投稿日:2021/01/10
タヌキのきょうしつ
タヌキのきょうしつ 作: 山下 明生
絵: 長谷川 義史

出版社: あかね書房
2020年の夏休みの課題図書になった本です。
 対象が小学校低学年となっていて、絵を描いているのは長谷川義史さんですが、絵本というより童話の部類になります。
 しかも、最初はタヌキのお父さんがタヌキにも勉強が必要だと、夜の教室でひそかに勉強するというようなファンタスティックな内容ですが、この作品の舞台が広島ということもあって、かなり重厚な作品になっていきます。
 タヌキたちが学校で勉強している、そんなのどかな時代からそのうち日本は戦争の準備を始めていきます。
 タヌキの子どもたちも夜の校庭で行進の練習をしたりします。
 そして、戦争。ついには広島に原爆が落とされます。
 このページから続く数ページの、長谷川さんの絵はなんともいえない悲しみでいっぱいです。
 この絵を見るだけで、十分この本を手にする価値はあります。

 広島の悲劇と戦後の復興は小学校の低学年ではまだ難しいかもしれません。
 それを作者の山下明生さんは広島市民球場のそばのユニークなおでんやさんとそこに現れるタヌキの子どもたちとのエピソードで、わかりやすく、「平和」ということの尊さを表現しています。
 「平和」とは、タヌキの子どもたちも楽しく勉強ができたり遊んだりできることなのかもしれません。
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自信を持っておすすめしたい 「ひとり」と「ひとり」の間   投稿日:2021/01/03
ひとりひとり
ひとりひとり 詩: 谷川 俊太郎
絵: いわさき ちひろ

出版社: 講談社
2020年11月に刊行されたこの絵本(あるいは詩集)の巻末で、詩を書いた谷川俊太郎さんが、一人っ子だったので「ひとりでいるのはあまり苦に」ならなかったと書いています。
 そして、「人との間に距離をとらなければいけない時代になっても、あまり痛痒を感じません」と続きます。
 コロナ禍の時代に出された絵本(あるいは詩集)ならではの文章ともいえます。

 これは一冊の絵本(あるいは詩集)ですが、載っているのは一篇の詩です。
 2006年に刊行された詩集『すき』に収められている詩なので、直接的には今回のコロナ禍とは関係していません。
 ただコロナの時代に読むと、詩がくっきりと立ち上がってくる、そんな感じがします。
 人は誰もがひとりで生まれ、最後にはひとりで死んでいきます。
 そんな「ひとり」と「ひとり」にはさまって、たくさんの関係が生まれていることに、この詩は気づかさせてくれます。

 詩に添えられたいわさきちひろさんの絵はまるでこの詩のために描かれたような印象をうけますが、実際にはまるで違った作品の組み合わせでできています。
 「ひとりひとり」はちがっても、こうして並べていくと、関係性があるように見えてくるのも不思議です。

 絵もまた「ひとり」ではないのかもしれません。
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自信を持っておすすめしたい いい言葉は、決して古びない。     投稿日:2020/12/27
風のことば 空のことば 〜語りかける辞典〜
風のことば 空のことば 〜語りかける辞典〜 著: 長田 弘 いせひでこ
出版社: 講談社
言葉は不思議だ。
 何かを伝えたい時に使うのも、言葉。何かを教えてくれるのも、言葉。何かを足したり引いたりするのも、また言葉。
 2015年に亡くなった詩人の長田弘さんは、言葉について「辞書にある意味が全部じゃない。自分で自分用に自分だけの辞書もつくってみよう」とおっしゃった。
 そんな長田弘さんが「語りかける辞典」がこの本だ。
 かつて長田さんの『最初の質問』『幼い子は微笑む』を共に作った画家で絵本作家でもあるいせひでこさんが、長田さんの「ことば」にたくさんの絵を添えている。

 この本の元になったのは、読売新聞に2004年12月から2015年5月、つまりは長田さんが亡くなる直前まで書いていた、「こどもの詩」の選評に書かれていた文章から抜粋されて出来上がっている。
 例えば、「声」という言葉に、長田さんはこう書いている。
 「いつからか、みんな声が低くなった。言葉が聞こえにくくなった。なんか社会全体が声変わりしたみたいに。」
 どんな詩に、いつ書かれた選評からのものかわからないが、2020年のコロナ禍でもこの言葉は通用する。
 いい言葉は、決して古びない。

 もう一つ、決して古びないし、なくしてはいけない言葉。
 「平和」という言葉に、長田さんは書いた「ことば」。
 「「平和」って、「いい一日」のことなんだ。」
 なんだか、空の上から長田さんが今でも呼びかけていそうだ。
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自信を持っておすすめしたい もう待つのはおしまいにして  投稿日:2020/12/26
ほんやのいぬくん
ほんやのいぬくん 作・絵: ルイーズ・イェーツ
訳: ほんじょうまなみ

出版社: 岩崎書店
本好きのいぬくんはある日本屋を始めることにします。開店の日にはお風呂にはいったり鼻をかんだりして身綺麗にして、お客さんの来店にそなえます。でも、誰もきません。たくさんの本を用意したのに−。
 英国の絵本作家ルイーズ・イェーツさんの絵本『ほんやのいぬくん』は、ここからがいいのです。誰もお客さんのこない本屋さんでしょんぼりするいぬくんですが、「たちなおりははやいのです! もう まつのはおしましにしよう」と大好きな本を読みはじめます。読んでいるとさみしいのを忘れてしまいます。
 本の世界は無尽にひろがって、さびしいいぬくんを慰めもし、元気づけもします。
 子供の絵本ですが、本による、とても素晴らしい「再生」のお話です。
 もし、あなたの心がくじけそうだったら、ぜひ手にとって読んでみてください。
 いぬくんのように、もうまつのはおしまいにしてみてください。
 この本はきっとあなたを「再生」させてくれるでしょう。
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自信を持っておすすめしたい ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン  投稿日:2020/12/26
ヨンイのビニールがさ
ヨンイのビニールがさ 作: ユン・ドンジェ
絵: キム・ジェホン
訳: ピョン・キジャ

出版社: 岩崎書店
この本は、物語を書いた人や絵を描いた人の名前でわかるように、韓国の絵本です。
 まだ暮らしぶりがそれほど豊かではなかった、もちろん今はたいそう豊かになりましたが、1980年の初めに書かれました。
 だから、ビニールがさといっても、どことなくごわごわしていますし、柄の部分も木でできています。おしゃれだとか便利だということでなく、むしろ布製の傘が買えない貧しい人たちが使っていました。
 あるいは、道も舗装がされていません。ですから、雨が降ると、水たまりができ、やがて泥んこになってしまいます。そんな時代のお話です。
 それは韓国という別の国だからではありません。私たちのこの国でも、何十年前はそうでした。そのことを忘れてはいけません。

 主人公の名前はヨンイ。小学生の女の子。見た感じでいえば、二、三年生ぐらいの、かわいい女の子です。
 月曜の朝だというのにあいにくの雨。ヨンイは緑のビニールがさをさして学校にむかいます。そして、途中で雨にぬれている物乞いのおじいさんをみかけます。
 物乞いというのも知らない人がいるかもしれません。人に慈悲を乞うとでもいえばいいのでしょうか。でも、この絵本でも描かれているように、子どもたちにもこづかれたり、からかわれたりしてしまいます。昔なら「勉強しないと、ああいう人になりますよ」と言われてしまいます。
 そんなおじいさんをヨンイはどのようにみていたのか、ビニールがさをさした後ろ姿の彼女しか絵本の中では描かれていません。
 でも、ヨンイの気持ちはよくわかります。どんどん降る雨が、そしてしだいにぬかるんでいく土の色が、ヨンイの、悲しい気持ちをよく表現しています。

 ヨンイはそっと学校を抜け出し、「だれかに みられていないか あたりを よーく みまわしてから」おじいさんに彼女のビニールのかさをさしかけてあげます。そして、濡れながら学校に走ってもどるのです。
 どうして、ヨンイは「だれかに みられていないか」様子をうかがったのでしょう。さりげない文章ですが、ヨンイのやさしさと小さな勇気が伝わってきます。

 学校が終わる頃には雨もあがりました。もうおじいさんはいませんでした。ヨンイのビニールがさがたたまれて、壁にたてかけてありました。
 かさは何にもいいませんが、おじいさんの心がやさしいヨンイに話しかけているようです。「ありがとう」って。
 きっとほかの子どもたちには、そのビニールがさの意味がわからなかったと思います。わかったのはヨンイひとり。それでいいのです。
 雨のやんだ道をかさをひろげて帰る、ヨンイの後ろ姿の、なんと晴れやかなことでしょう。

 豊かになることで忘れてきたことがこの絵本にはあります。
 それがわかるのは私たちおとなでしょうし、それをきちんと伝えていくのも、私たちおとななのです。
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自信を持っておすすめしたい 平和は人を優しくする  投稿日:2020/12/26
バスラの図書館員
バスラの図書館員 文・絵: ジャネット・ウィンター
訳: 長田 弘

出版社: 晶文社
2003年春イラク侵攻がバスラに達した時に図書館の蔵書を守ろうとした図書館員とその友人たちの勇気ある実話を絵本にしたこの本のなかに、印象的な絵が二枚あります。
 それは、このお話の主人公でもあるアリア・ムハンマド・バクルさんという図書館員の女性の顔を描いた絵です。
 アリアさんは、「本は、黄金の山よりもずっと」価値のあるものと考えている人です。戦争の火でそんな本が滅んでしまうことは、彼女には絶対許せないことなのです。
 だから、アリアさんは当局にも掛け合いますし、それが無理だとわかると、友人たちの協力を得て、図書館のたくさんの本を自分たちの手で避難させます。やがて、戦火は図書館にもおよびます。でも、アリアさんたちのがんばりで図書館の本のほとんどは助かりました。
 そのあとに描かれた、二枚のアリアさん。

 ひとつには「アリアさんはのぞみをすてません。」という文章がつけられています。
 しかし、彼女の背景は暗い戦争の風景が描かれています。燃えあがる町、戦車や戦闘機の爆撃。アリアさんは悲しい顔をしています。
 もう一枚のアリアさんにも、「アリアさんは戦争が終わるというのぞみをすてません。」という、先のものとよく似た文章がついています。でも、アリアさんの表情は、先のものとはまったくちがいます。
 目を閉じ、柔らかな表情をしています。なぜなら、アリアさんのまわりには、美しい青い空と静かな湖が描かれています。
 アリアさんが望む、それが平和の世界なのでしょう。そこには悲しみも嘆きもありません。
 人は、平和の世界を夢みるとき、優しくなれる。
 二枚のアリアさんの絵はそういうことを教えてくれます。

 そんなアリアさんを育てたのは、たくさんの本だったにちがいありません。
 最後のページの、たくさんの本に囲まれて立つ、強い意志をもった図書館員アリアさんをみて、そう思わざるをえませんでした。
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自信を持っておすすめしたい WE LOVE 金太郎  投稿日:2020/12/26
金太郎
金太郎 絵: 米内 穂豊
出版社: 講談社
本宮ひろ志さんの『サラリーマン金太郎』ではなくて、ほら、五月人形とかで「金」の文字のはいった腹掛けをした、ぷくぷくした元気そうな男の子がいるでしょう、彼のこと。童謡にもあります。「まさかりかついだ 金太郎 クマにまたがり お馬のけいこ」、その金太郎。
 でも、『金太郎』ってどんな物語だったのか思い出せない。クマと相撲をして投げ飛ばしている金太郎の絵はすぐに頭に浮かんだのだが。
 そこで、手にしたのが、新・講談社の絵本シリーズの一冊、『金太郎』。
 なにしろこのシリーズは昭和初期に出版された絵本を新編集にて復刊したというもので、この『金太郎』の巻は米内穂豊(よないすいほう)という歴史画を描いていた人の手によるもの。これが現代の絵本にはない風格があって、金太郎がとても強そうなのです。しかも滋味豊富なミルクキャラメルを舐めているような、甘い舌触りがなんともいえない。
 思わず、金太郎に声援をおくりたくなります。
 さて、その金太郎ですが、すもうでクマに勝っただけではなく、強さと優しさを武士に認められて京にのぼる途中で鬼退治までしてしまうのです。やっぱり金太郎は強かったのです。
 最後はおさむらいになって故郷の山に帰ってくるのですが、りっぱな着物を着ていてもまさかりだけは担いでいる、おちゃめな金太郎でもありました。
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