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かおるちゃんを救え!
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投稿日:2015/02/15 |
JR東日本の企画「ウルトラマンスタンプラリー」(平成27年1月13日〜2月27日)が好評らしい。
JR東日本の首都圏の主要な駅に設置された歴代ウルトラシリーズの全64種類のスタンプを集めるという企画で、スタンプ10個でウルトラめんこがもらえるという。
スタンプを押すパンフレットには怪獣たちの特長も載っていて、これを持つだけで往年の怪獣博士の気分になれる。
おそらく子ども向けの企画なんだろうが、大人たちが夢中になっているそうだ。
なにしろ、「ウルトラQ」がTV放映されたのが1966年、昭和41年だから、この番組をリアルで見ていた世代ももう60歳を越えているはずだ。
昭和30年生まれの私の、小学生の同級生で怪獣のことが滅法詳しかった男子がいたが、もしかしたらこの企画に歓喜しているのではないだろうか。
この絵本はタイトルでわかるように、怪獣を描いた作品だ。
作者の長谷川集平さんは昭和30年生まれだから、「ウルトラQ」世代といっていい。
ある夜、少年は空で「びゅわん びゅわん」の音に目を覚ます。
それはきっと怪獣にちがいない、と隣で寝ている父親に訊ねる。
怪獣の名前は「トリゴラス」。大きな鳥の怪獣だ。
ラドンのように大きな羽根で空を飛び、地上に降り立てばゴジラのように大暴れ。
少年の頭の中では、街はもう「めちゃくちゃ」で「ぐちゃぐちゃ」になっている。
しかも、こともあろうにかおるちゃん(少年は密かに彼女のことを想っているようだ)のマンションからキングコングのように彼女を連れ去ってしまう。
父親は「あほか」と、そんな少年を一蹴する。
「あの音は、ただの風の音じゃ」。
少年のなんともいえない横顔が切ない。
評論家の草森伸一は「少年の永遠の姿を捉えた絵本」と評したそうだが、怪獣に夢中になったかつての少年たちは、怪獣に連れ去られてそれぞれのかおるちゃんを助けようとしていたのだろうか。
そして、あれから半世紀近く経って、まだかおるちゃんを救出できなくて、JRの緑色や赤い電車に乗ってスタンプを集めているとすれば、「あほか」ですまされない少年の純情である。
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いい手をもて
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投稿日:2015/02/09 |
この春、60歳の定年を迎えます。
かつて「男の顔は履歴書」と言ったのは大宅壮一さんだったでしょうか、時に鏡の中の自分の顔をつれづれにのぞきこみながら、果たして私の顔はどんな履歴書にできあがっているのかと思ったりします。
なんとものほほんとした顔からはどんな履歴も浮かんでこないのですが、それでもなんとかこの顔で定年の時を迎えるのだなと嘆息したりしています。
絵本作家いせひでこさんの代表作ともいえるこの作品の中に手の表情だけを描いたページがあります。
主人公の女の子ソフィーがこわれた植物図鑑を直すために一人のおじさんを訪ねます。
おじさんは本の製本職人です。「ルリユール」というのはその職業の名称です。
小さなソフィーはそんな難しい名前は知りません。自分の大好きな本が元通りになるのだったら、それでいいのです。
おじさんはソフィーの願いに聞いてくれます。
本を修復しながら、ソフィーとおじさんの会話がぽつんぽつんとはさまります。
ソフィーが見つけた一枚の男の絵、それはおじさんのお父さんの絵でした。
その夜、おじさんは一人になって、自分と同じようにルリユールであった父のことを思い出します。
ソフィーとの会話がおじさんに父のことを思い出させてくれたのです。
その場面に、手のページがあります。
「あの木のようにおおきくなれ」と父がといつも言っていたことを思い出します。
そして、「父の手も木のこぶのようだった」と。
このページに描かれている手は働いてきた男の手です。
ルリエールという仕事に誇りを持ち、細心の注意をはらいながら優しく丁寧に本を製本していく手。
父がかつてこういったことをおじさんは思い出しました。
「名をのこさなくていい。いい手をもて」。
「いい手」とは命を生み、育み、また新しい命につなげていく、大きな木のようなものかもしれません。
いせひでこさんはこのたった1ページの手のページにどれだけの熱情を注いだことでしょう。
手のページを開きながら、じっと私の手を見て、ルリユールおじさんのようにつぶやいてみます。
「わたしも魔法の手をもてただろうか。」
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喧嘩するほど仲がいい
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投稿日:2015/01/25 |
小学生の頃に大変仲の悪い女の子がいました。
何かあれば言い合いをしていて、それがどんな内容であったかは全く記憶にないのですが、担任の先生に言われた一言だけはよく覚えています。
「男と女は喧嘩するほど仲がいいものだ」。
そのあとその女の子と仲良くなった記憶もないのですが、なんだかその言葉があたっていないともいえなかったような気恥しい思いだけが残っています。
仲がいいというには、ついちょっかいを出してしまいがちのような気がします。
長谷川集平さんのこの絵本は、そんな小学生の姿を描いています。
学校の帰り道、ぼくを待っていたれおくんは「シェー」のポーズ、これは昭和30年代に生まれた子どもならみんなしたと思いますが赤塚不二夫さんの漫画「おそ松くん」に登場するイヤミの決めポーズです、をしたり、顔面七変化をしたりで、ぼくを笑わせます。
でも、ほかの友だちに聞いても、れおくんにへんなところはありません。
どうして、ぼくにだけ、れいくんはへんな顔をするのでしょう。
ある日、ぼくのお母さんがしている太極拳の見た帰り、勇気をだしてぼくはれおくんに訊いてみました。
「なんでぼくにだけへんなかおするの?」
れおくんは答えます。
「ともだちにしかみせられないかおがあるんだよ」って。
この場面を描く長谷川さんの絵が素敵です。
この時二人は見晴台の上に立っているのですが、風が吹いていて、二人の髪はなびいています。
まっすぐ遠くを見つめるれおくんの目は大きく開かれ、澄んでいます。
れおくんを見つめるぼくの顔も真剣です。
風、それはこれから二人が向かうであろう人生という風かもしれません、を絵本が見事に伝えてくれます。
「ともだちにしかみせられないかお」。
それは愛する人にしか見せられない顔のことです。
いつもまじめに上品ぶっているのは疲れます。
本当の私、本当の私の顔を見せた時、人はどれだけ安らげることか。
長谷川さんのパステル基調のこの絵本に、そんなことを教えられました。
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絵本作家の風土
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投稿日:2015/01/18 |
宮西達也さんといえば、『おとうさんはウルトラマン』や『おれはティラノサウルスだ』といった作品で人気の高い絵本作家です。
絵本作家には文章のうまい人、絵の上手な人、きれいな絵を描く人、力のこもった絵の人などさまざまなタイプがありますが、宮西さんの場合は少しコミカルな絵といえるでしょう。
だじゃれ上手な長谷川義史さんのような人もいますが、宮西さんの場合、そのコミカルさは少しちがいます。
長谷川義史さんが大阪の出身で宮西さんは静岡の出身。
絵本作家にも風土ってあるような気がします。
この作品に登場するかえるくんたちの姿も、どこか飄々としています。
まず最初に登場するのが、つちがえるくんとあまがえるくん。二匹はよく似ていますが、肌の色がちがいます。つちがえるくんが茶色であまがえるくんが緑。
しごく簡単。そういうあっさりとしたところが宮西さんの絵にはあります。
二匹の間にはきれいな一本の紐のようなもの。
「なんだろう、これ・・・?」と、二匹は紐のようなものの端っこを持って、引っ張り合いを始めます。
そこに少し身体の大きいあかがえるくんが登場。
もちろん、色はうすく赤っぽい。
あまがえるくんの方についたものですから、つちがえるくんはずるずると引っ張られていきます。
ここにこの絵本のタイトル、「はなすもんかー!」がでてきます。
その声に現れたのがとのさまがえるくん。
身体がひとまわり大きく描かれています。
つちがえるくんに味方したので、形勢逆転。
あとは、ひきがえるくん、うしがえるくんと、次々に出てきて、ひっぱりっこが続きます。
六匹のかえるくんたちは、形や色こそちがえ、ほとんど同じように見えてしまいます。
きっと長谷川義史さんならうんとちがった表情をこしらえたでしょうが、宮西さんはそんなことはしません。
スマートなんですね、きっと。
でも、東京人ほど澄ましてはいない。
そういう中間点のところにいる感じです。
かえるくんたちが一生懸命にひっぱっていたものって、何だったのでしょう。
それは、絵本を読んで、確かめて下さい。
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何かを見つけるって素晴らしい
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投稿日:2015/01/12 |
アメリカの絵本作家ダニエル・カークによる「としょかんねずみ」の第2作めです。
一作めを読んでいない人のために、ざっとおさらいをしておきます。
主人公のサムは図書館に住むねずみです。図書館に住んでいるくらいですから。本を読むのが大好き。
とうとう自分でも本を書くようになります。
サムの書いた本は子どもたちにも大人気になりますが、誰も著者のサムがどんな人なのか知りません。
そんなお話。
2作めのこの絵本では、サムの正体がいよいよばれてしまうのです。
サムがねずみだとばれたら、図書館は大騒ぎになってしまいます。サムだってきっと追い出されます。
絵本や物語、漫画の世界ではねずみは愛される動物ですが、実際の世界ではみんなに嫌われます。
さあ、どうなるのでしょう。
でも、その前に、一人の男の子を紹介しましょう。
トムです。
トムはおとなしい男の子です。
友だちと一緒に絵本をつくるという集まりに参加したのですが、仲間が見つけられません。
そんな子どもなら、皆さんの近くにもきっといると思います。
仲間はずれにしているってことないですか。
もしかしたら、この絵本のトムのように本当はすごい素質を持っているかもしれないのですから、一緒に遊んであげるときっといいことがありますよ。
トムは、なにしろ、子どもたちに人気のあるサムという作家の正体はねずみだということに気がついたのですから。
面白いことに、この時のトムの表情が最初と随分ちがうのです。
目なんか輝いています。
図書館の机の上についたねずみの足跡に気づいたトムといったら、すっかり元気のいい男の子の表情です。
何か素晴らしいことを見つけるというのは、おとなしい子どもであっても、表情すら変えてしまう力を持っているのかもしれません。
そして、ついにトムはサムの正体をつきとめます。
「としょかんねずみ」を見つけてしまうのです。
さあ、「としょかんねずみ」のサムはどうしたでしょう。
サムの正体を知ったトムはどんな行動をとったでしょう。
この絵本のタイトルが「ひみつのともだち」となっています。
本当の友だちってどんな関係なのか、この絵本でわかるかもしれません。
こんな絵本があることを秘密にすることはありませんよ。
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虹をつなげて
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投稿日:2015/01/04 |
誰もが虹の思い出をもっているのではないでしょうか。
別れの場面で見た虹、初めてのデートで見た虹、お母さんと一緒に見た虹、大好きな人と見た虹。
私にも、あります。
もう7年も前のことになります。
短い間だったがお世話になった地方の勤務地を去るその日、アパートの鍵を閉めて表に出た私の前に大きな虹がかかっていました。
あの虹は希望だったのでしょうか。
それとも、大きなさようならだったのでしょうか。
あれから歳月は過ぎましたが、あの時の虹の意味をまだわからずにいます。
この絵本は「かがくのとも絵本」の一冊となっていて、虹ができる原理なようなものをわかりやすく描いたものです。
「にじって、おひさまを せにして じぶんの かげの がわに みえるんだ」とあります。
そんなこと、考えたことはなかった。
いつも虹は突然目の前に現れてくれていたから。
何かを教えるために。
そうだとばかり思っていました。
実はそんな虹のことを知りたくて、この絵本を手にしたのではありません。
この絵本の絵を担当しているのが、いせひでこさんだったから。
この作品が最初に描かれたのが1992年ですから、いせさんの初期の頃の作品といえます。
いせさんがその後得意とする木々の緑も、まだこの作品ではできあがっていません。
おかあさんの表情も、ボクの動きもぎこちない。
虹でいえば、たった今、生まれたばかりの、色の区別さえはっきりしないような作品です。
たぶん、このあと、いせさんはとってもたくさんのデッサンをしてきたのだと思います。
うんといっぱいの絵の具を溶かしてきたのだと思います。
そして、『ルリユールおじさん』や『チェロの木』の生み出してきたような気がします。
誰もが小さくて、今にも消えそうな虹なのです。
やがて、しっかりとした大きな虹になっていく。
そんな虹が誰かを勇気づけ、前に向かわせてくれる。
虹を見つけた時、うれしい気持ちになりませんか。
何かをその虹に託したくなりませんか。
子どもたちに、そんな虹のことも話してあげれたら、どんなにいいでしょう。
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年の暮れ、何かとお忙しいでしょうが
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投稿日:2014/12/28 |
絵本の良さはたくさんありますが、その一つは季節ごとに楽しめる作品がたくさんあることです。
春には春の、夏には夏の絵本があります。
紅葉の頃の秋の絵本もありますし、冬には雪の絵本もあります。
クリスマスを描いた絵本はたくさんあります。
正月の絵本もそうです。
絵本で季節を味わう。
しかも、その季節の昔からある習慣なども、絵本で体験できるのです。
歳末の時期にぴったりの絵本がこれです。
なにしろ始まりは、12月28日なのですから。
きりちゃんはおばあちゃんと一緒に歳末で大賑わいの商店街に出かけます。
おせちの材料を買うためにです。
魚屋さん、乾物屋さん、八百屋さん。「屋」がつくお店って、人と人とが触れ合う場所でもあります。
だから、おばあちゃんの話も弾みます。
こういう場所も段々少なくなっていますが、物を買うのはそういうことを楽しむことでもありました。
次の日、29日は家族みんなで大掃除。
おばあちゃんは障子の張り替え。
昔は年の暮れには障子を張り替えたものです。
窓ふきは大抵子どもの係でした。
夜はおせち料理のつづき。
そして、30日。
おせちづくりも佳境にはいってきました。
そして、31日おおみそか。
おばあちゃんのおせちが完成します。
「いちのじゅうには。いわいざかな。にのじゅうには、やきものとすのもの。さんのじゅうには、おにしめ。」です。
最近はおせちもたくさんのお店で売っていますから、それを買ってすます家も多いと思います。
でも、昔はみんな自分の家で作ったものです。
そういえば、残念ながらこの絵本では餅つきまでは描かれていません。
年の瀬には餅つきは欠かせないものでした。町じゅうにぺったんぺったん餅をつく音がしたものです。
こういう絵本を読むと、そういえば大晦日の夜、まだ片付かない部屋の掃除を一人母がしていたことを思い出します。
紅白歌合戦が始まってもまだ正月の準備に忙しく働く母。
そんな風景とともに年が暮れていったものです。
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色彩の魔術師が描くクリスマス
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投稿日:2014/12/23 |
雛飾りは3月3日の雛祭りが終われば、早くしまった方がいいといいます。
遅くなると、娘の婚期が遅くなると。
今でもそんなことをいうのかしらん。
ヨーロッパではクリスマスツリーは12月25日から12日めにしまうのが古くからの習慣だとか。
この絵本で初めて知りました。
東方の三博士が生まれたばかりのキリストに贈り物を贈ったのが12日めだといわれているからだそうです。
でも、12月25日から12日も経つと、お正月になっています。
もしかして、お年玉だったのでは。
それは冗談で、聖書には、乳香、没薬、黄金を贈り物として捧げたとあるそうです。
この絵本は昔の子供たちがその12日のことを歌った歌が題材になっています。
ブライアン・ワイルドスミスさんが詩と絵を書き、俳優の石坂浩二さんが翻訳をしています。
ブライアン・ワイルドスミスさんは日本でも人気のある、英国の絵本作家です。
静岡県伊東市に美術館もあるくらいです。
彼は色彩の魔術師と呼ばれるくらいで、この絵本でもそれはよくわかります。
赤、青、緑、黄、多彩な色がクリスマスが終わってからの12日を彩ってくれます。
こういう絵本を読むと、物語がどうとかいうことでなく、純粋に絵を楽しむことができます。
絵に興味のある子どもでしたら、自然とクレヨンを手にするような気がします。
ブライアンの色使いを見ていると、色彩は自由なんだと思います。
自由だけれど、やはりどこかにルールがある。
規定と自由。
そういうことすら、この絵本の絵は教えてくれます。
それと、詩。
最初には「いちわの うずらは なしの木に」とあります。
それが二日目には、「にわの きじばと なかよしさん/いちわの うずらは なしの木に」と繰り返されます。
三日目は「さんわの にわとり フランス国旗/にわの きじばと なかよしさん/いちわの うずらは なしの木に」と積み上がっていきます。
それが、12日まで続きます。
ですから、最後はとっても長い詩になっています。
それがちっとも長く感じない。
片づけることはさみしくもあります。
でも、こうして片づけながら、実は次の年のクリスマスのことを楽しみにしている。
そんな絵本なのです。
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ひとりぽっちのクリスマスでも
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投稿日:2014/12/22 |
クリスマスを誰と過ごします?
家族。友人、恋人、人それぞれですが、やはり一番大好きな人と過ごしたいものです。
そんな思いがつまった絵本が、この作品です。
アメリカの絵本作家ホリー・ホビーの人気シリーズ「トゥートとパドル」のクリスマスバージョン。
主人公の「トゥートとパドル」は、性格はまったく違うのに大の仲良しという、子ぶたの名前です。
スコットランドに住むひいおばあさんの妹のおばあさんの100歳の誕生日に出ていたトゥートはクリスマスまでにパドルの住む村に戻るつもり。
おばあさんの家を出る時に、「しあわせのくるみの実」をひとつもらいます。
ところが、大吹雪にあってしまって、なかなかアメリカに戻れません。
一方、クリスマスに戻るというトゥートからの手紙を受け取ったパドルは、大忙し。
皆さんにも経験あるでしょ。
クリスマスにはツリーを飾ったり、おいしい料理をこしらえたりしないといけないのですから。
でも、でも。
ウッドコック・ポケットの家まではまだまだうんとあるのに、トゥートは大雪に阻まれてしまいます。
とうとうトゥートは大きな木の根元にうずくまってしまいます。まわりはまっ白な雪ばかり。
大丈夫かな? トゥートは。
その時、トゥートはおばあさんからもらった「しあわせのくるみの実」のことを思い出します。
すると、どうでししょう。
暗い雪の中に明かりが見えます。すずの音も聞こえます。
大きなソリがトゥートに近づいてきるではありませんか。
雪明りで明るいウッドコック・ポケットの家の前で、パドルはトゥートのためにせっせと雪かきをしています。
遅いけれど、クリスマスには戻るって約束したのですもの。
そこに、ソリに乗せられてトゥートが帰ってきます。
これで、大の仲良しの二匹の子ぶたはいっしょにクリスマスを迎えることができます。
でも、トゥートを乗せてくれたソリの主は誰だったのでしょう。
もちろん、あの人。
クリスマスに子どもたちに読んであげれば、きっとその人の名前を叫ぶにちがいありません。
もし、ひとりぽっちのクリスマスでも、きっと心が温まる、そんな絵本です。
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クリスマスには、しずかに、しずかに。
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投稿日:2014/12/21 |
クリスマスといえば、街のイルミネーション、男女の語らい、街の雑踏。そして、ジングル・ベル。
なんだかにぎやかなイメージがあります。
でも、本当はしずかな日なんです。
この絵本を読めば、ふっと息をとめたくなります。静かに歩きたくなります。ページを開くのも、そっと。
そんな絵本なんです。
しずかな分、心にしんしんとはいってくるといってもいい。
しずかな文を書いたのはデボラ・アンダーウッドさん。アメリカの人です。
素敵な、しずかな絵を描いたのはカナダに住むレナータ・リウスカさん。
ぬいぐるみのような動物たちの絵は見ているだけで温かになります。
この絵本のレナートさんの功績は大きいと思います。
訳しているのは、江國香織さん。いわずとしれた直木賞作家で、文章の巧さには定評があります。
一ページにほぼ一行の文章の、しずかさといったら。
それでいて、心にうまくはいってくるのですから、不思議です。
ここに書かれているしずかさを少し紹介しておくと、例えば「てぶくろをして とをたたく しずかさ」とあります。
外は一面雪でまっしろ。雪でおおわれたおうちの扉を叩くウサギの子どもたち。手に暖かそうな手袋。
どんどん、ではありません。こんこん、でもありません。ぽんぽん、に近いかも。
あまり大きな音を出すと、雪だってびっくりします。
あるいは、クリスマスツリーの「あかりのともる しゅんかんの いきをつめた しずかさ」。
大きなツリーのまわりには仲のいい仲間たちが集まっています。いよいよツリーの点灯です。それまで騒いでいた子どもたちも、その瞬間には息をつめてツリーのてっぺんの星を見つめます。
こういう経験、あるでしょう。
「そりの すずのねに みみをすます しずかさ」。
雪が降る続ける外を見ながら、サンタさんが来ないかと待っています。サンタさんはトナカイにひかれてそりできます。
ちりんちりんと、しずかな鈴の音をさせて。
今みたいににぎやかな夜では、サンタさんのそりの鈴の音なんか聞こえないでしょうね。
だから、せめて、クリスマスには、しずかに、しずかに。
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