![出版社からの紹介](/images/shoukai_shuppansha.gif)
ひとりぼっちの子うさぎは、そば畑の隅で赤ちゃんにお乳をあげながら、子守唄を歌っているお母さんに出会います。「お母さんって、いいな」。次の日から子うさぎは、子守唄を聞きに、毎日、畑に出かけていきます。ある日、山のふもとで大きな音がして、土煙が上がりました。人間がダムを作るのだと、鳥たちが騒いでいました。やさしいお母さんと、同じ人間が、山を崩すなんて…。工事の音は日増しに激しくなり、そばの実を刈り取ったお母さんは山を急いで下りて行きます。その時、赤ちゃんの帽子を落としてしまいます…。
ポイント ・1986年ボローニヤ国際児童図書展エルバ賞受賞。 ・人間の慈愛とエゴを情感豊かに描きます。 ・環境破壊を考える本として活用できます。
編集者から
この絵本は、1986年イタリア、ボローニヤ市で開催される国際児童図書展でエルバ賞を受賞しました。子ども批評家が選ぶエルバ賞は、子どもの視点で優れた絵本を選ぶ賞で、世界の子どもたちから選ばれた絵本であるともいえます。『そばのはなさいたひ』を見た子ども批評家たちは、いもとようこさんの美しく淡い色調とあたたかな貼り絵の画風に、思わず感嘆の声を上げたと聞いています。 原色ではっきりした色調の絵本を見慣れていた子どもたちにとって、この淡い色彩は、カルチャーショックだったのでしょう。いもとようこさんは、1985年から3年連続、『ねこのえほん』『そばのはなさいたひ』『うたの絵本』で国際児童図書展エルバ賞、同グラフィック賞を受賞し、絵本作家としても不動の地位を築きます。 この絵本は、子うさぎと人間のお母さんが一度も話すことはありませんが、子うさぎの心情が美しい情景と重なり、読者の心に伝わります。日本的な叙情の世界が広がる作品です。
![ベストレビュー](/images/shoukai_bestreview.gif)
工事によって自然環境が破壊されていくお話を
乳飲み子を抱えたお母さんと、そのお母さんをかげながら慕うウサギとをからめ
いもとさんのやさしいタッチの絵で仕上げられています。
乳飲み子を抱え山へ入り、そばの花を栽培するお母さん。
お母さんが授乳する優しい様子を影からそっと見つめるウサギ。
落としていった赤ちゃんの帽子を取りに戻ってくると信じて、
ウサギは工事の始まった山にとどまっています。やがて・・・。
最後は悲しい結末で、読み聞かせながらこちらが泣いてしまい、
娘は自分でタオルを探してきて、私の涙をぬぐってくれました。
自然破壊、親子の絆、人を思いやる心・・・。
子供が一人で外で遊べないような殺伐とした今の世の中では
忘れ去られた何かを、
いっぱい提示しているような気がしてならない一冊です。 (やこちんさん 30代・ママ 女の子3歳)
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