きのこむらのほだぎのさとに住む、ほしじいたけとほしばあたけ。 きのこ暦123年生まれのふたりは、きのこむらのきのこたちに慕われる長老きのこです。 ある日のこと、ほしじいたけが裏山にたきぎひろいをしていると、 むらのこどもたちのひとり、タマゴタケが 崖下に落っこちてしまったというのです。 「こりゃ たいへんじゃ!」 からからに乾いた体を使って、ふうわりと崖を飛び下りるほしじいさま。 無事にタマゴタケの元に到着です。 でも、ほしじいさまの軽さでは、タマゴタケと一緒に崖を上がることはできません。 「いたしかたあるまい。」そうつぶやいたほしじいさまが、 崖のわきに流れる湧水にそろりとつかると……。
実は意外と多い「きのこの絵本」の中でも、 世にも珍しい「ほししいたけ」が主人公の本作。 生のしいたけにはない、特性を十二分に発揮して、 ほのぼのしているのに、どこか脱力してしまう、 何とも不思議な“味のある”ほししいたけ絵本です。
作者の石川基子さんは、第36回講談社絵本新人賞を受賞した、 期待の新人作家さん。 講談社絵本新人賞のHPでは、受賞から絵本出版までの 制作秘話が連載されています。 https://ehon.kodansha.co.jp/award/journal/ishikawa/1.html
(木村春子 絵本ナビライター)
きのこの里に大事件! ほしじいたけとほしばあたけは、体を張ってなかまのきのこを助けるのですが……。驚きいっぱいの楽しいお話。第36回講談社絵本新人賞受賞作。
なんとも発想豊かな絵本だ。
ほししいたけをモデルに絵本ができるなんて思いませんでした。
だって、ほししいたけの、しわしわが絵本の主人公になるなんて思います? いくら栄養がうまみがあっても、あまり思わない。
しかも、このタイトル。ほししいたけに「点々」をくわえて、「ほしじいたけ」。
うまい。
もっといえば、いつものしわしわの「ほしじいたけ」ですが、森の「きんるい」、これは菌類です、の仲間はピンチにおちいれば、自らの身体を水につけて、あらま、力強い「わかものしいたけ」に変身するのですから。
こんな発想は普段台所に立つ人でないとわいてこないのではないでしょうか。
しわしわのほししいたけを水でもどせば、ぷっくら肉厚のしいたけになる。そのことをしっかり見ていないと、わからない。
この絵本は、それだけで十分楽しめます。
さらには、この絵本に登場するきのこの仲間たち。
タマゴダケ、オオワライタケ、ホウキタケ(このホウキタケがせっせと掃除しているのなんて笑ってしまいました)、ヌメリイグチ、それにキヌガサタケ。
いやいや「きんるい」の仲間たちも随分楽しそうです。
どうして「ほしじいたけ」が若者しいたけに変身したかというと、子どもたちがおにごっこをしていたら、タマゴダケが崖から落ちてしまったんです。それを助けようと、「ほしじいたけ」は谷底に降りたのですが、しわしわですから崖をのぼる力がありません。
そこで自ら水にとび込んで若者しいたけに変身したのです。
ところが、高い崖の途中で力がなくなってきました。あやうし、若者しいたけ。
と、そこに「ほしばあたけ」も若者しいたけに変身して、二人を助けます。
いつも仲のいい「ほしじいたけ」と「ほしばあたけ」は、若者しいたけになっても仲がいいのです。
「ほしじいたけ」たちの活躍を見ていると、人間の「ほしじいたけ」も「ほしばあたけ」もまだまだやれるのじゃないかと思います。
案外この絵本は老人たちに受けたりするかも。 (夏の雨さん 60代・パパ )
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