ともだちのために、なにかしてあげたいと思ったことはありますか? このお話の主人公のあなぐまは、とってもともだち想い。けれどもその気持ちがなかなかうまく伝わらないようです。
ある日、草ぼうぼうの家の庭を見て、何か作りたいと考えたあなぐまは、こんなことを思いつきます。
「そうだ、はたけは どうだろう。おいしいものを そだててさ、 どっさりとれたら りょうりして、ともだちをしょうたいするんだよ」
早速、仲良しのこぶたが大好きなじゃがいもを植えようと考え、きっと喜ぶよ!と、もてなす時のことを想像して嬉しくなるあなぐま。そのイメージの楽しそうで可愛いらしいことったら!イメージするどの場面からも、ともだちを喜ばそうと一生懸命なあなぐまの様子が伝わってきます。けれどもあなぐまが作ろうと考えたものは、みんながたっぷり持っているものばかりでした。期待が全部外れて、庭に何を作ったら良いか分からなくなってしまったあなぐまに、はりねずみがこんな言葉をかけてくれます。
「そりゃあ あなぐま、きみのすきなものを なんでも。」 その言葉を聞いて、一晩じっくり作りたいものを考えたあなぐま。さて、いったい何を作ったのでしょう?
あなぐまの優しさと繊細な気持ちの揺れがじんわり伝わるお話を書かれたのは、はせがわさとみさん。色使いがきれいであたたかなタッチで描かれた絵もはせがわさんによるものです。途中出てくるあなぐまが歌う歌をはじめとして、声に出して読みたくなるリズミカルな文章もこのお話の大きな魅力です。
「きみ、なにがすき?」と、ともだちの好きなものを考える優しさもとっても大切だけれど、同時に自分の好きなものを考えるのも大事なこと、ということをやさしく伝えてくれるこちらのお話は、いつもともだちの気持ちばかり考えて、ちょっぴり自分に自信がない子が読んだら、その子の背中をちょっと押してくれるかもしれません。
さて、最後のページのあなぐまの様子はとっても幸せそう。いったいどんなことを考えているのか楽しく想像してみて下さいね。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
森の奥にすむあなぐまが、庭でともだちの好きなものをつくって喜ばせたいと考えます。じゃがいも、にんじん、りんご、木いちごと、つぎつぎに思いつきますが、そのたびに、ともだちはみんな持っていました。なにを作ればいいかわからなくなったあなぐまは、かんしゃくを起こしてしまいます。でも、はりねずみは「きみの好きなものをなんでも」、と優しい言葉をかけてくれます…。誰かにわかってもらえることがうれしくなるお話。
子どもからのリクエストで、夜寝る前に読みました。
こんなに誰かのために、何かをしたい、プレゼントをしたい、と思えるなんて、なんて純真なんでしょう。
子どもは、始終お話の世界に耳をすませていました。
ほんわかしたイラストも、カラーが多く素敵でした。
あなぐまくんの歌う歌も、リズミカルで良いです。
自分の想いと世界が繋がってくれて、良かったね、あなぐまくん。
(だっこらっこさん 40代・せんせい 女の子9歳)
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