いろんな動物のおとうさんが登場してムフフ、アハハと笑わせたり、うちのおとうさんにそっくり!とうなずかせてくれます。おとうさんはどんな気持ちでよんでくれるかな?
人生は、喜劇と悲劇でできている、とよくいわれる。
さしずめ子育てにおいては、父親が喜劇で母親が悲劇の役を担っているともいえる。
父親なんて役名さえつかない端役よ、という厳しい母親からの声が聞こえそうでもあるが。
喜劇といわれようと端役と蔑まれようと、それでも父親は父親なりに子どものことを愛してやまない。
そんな父親を動物たちの姿を借りながら表現したのが、この絵本である。
ゴリラ、ペンギン、しろくま、わに、ぶた、ひつじ、ぞう、そしてライオン。
子どもたちに愛され、なじみの動物たち。
だから、子どもたちも楽しく、お父さんの姿を楽しむことができる。
たとえば、ペンギンお父さん。
子どもペンギンのために大きな雪だるまをこしらえようとがんばっている。やっとこさできたので、さっそく子どもペンギンを呼んでくるが、なんと雪だるまは倒れてしまう。不思議な表情で寝ころんだ雪だるまを見る子どもペンギン。
大丈夫ですよ、ペンギンお父さん。読者はあなたのがんばりをちゃんと見てますよ。
たとえば、ひつじのお父さん。
子どもひつじを驚かそうと壁の向こうで隠れています。「おとうさん、どこいったかな」、子どもひつじの声に喜ぶひつじのお父さん。もうすぐわぁーっと驚く子どもひつじを抱きしめられる。
ところが、お母さんひつじの「おやつよー」の声にさっさと行ってしまう子どもひつじ。
鬼の面をかぶって、ヌーと飛び出しても誰もいない。
大丈夫ですよ、ひつじのお父さん。読者のあなたの切なさがちゃんとわかってますよ。
たとえば、ライオン父さん。
壁にお母さんライオンの顔の落書きで遊んでいる子どもライオンをびしっと叱る。ここは父親の威厳を発揮。
でも、叱られて子どもライオンがいなくなると、壁のお母さんライオンにたてがみを書きくわえて、「おとうさん」と修正するライオン父さん。
大丈夫ですよ。ライオン父さん。読者はあなたのいじらしい気持ちに涙してますよ。
お父さんは喜劇なのかしら。それとも、案外悲劇かも。 (夏の雨さん 50代・パパ )
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