
あたしが公園から帰ってくると、ママが玄関先で“さかさぼうき”を片手につかんで突っ立ってる。また「どぶしろ」に何かとられたな。
「どぶしろ」はしろねこ。でも白がうす汚れているから、うちではそう呼んでいる。頭が良くて素早いどぶしろに、きょうは“おかしらつき”のたいを持っていかれちゃったんだって。晩ごはんの時間になっても、ママはパパにぶつくさ。
「あっ」
その夜、あたしは、あこちゃんに返してもらった絵本を公園のベンチに忘れてきちゃったことを思い出した。
「ママ、こうえんまで いっしょに いって」
おぼろ月夜が浮かぶ夜空の下、あたしがママと公園のそばまで行った時、「どんぶらこっこ、すっこっこ」優しくしみるような声で絵本を読む声が聞こえてきて……。
ママと「あたし」の目に映ったのは、月の光を浴びて銀色に輝くどぶしろの姿。二人はその瞬間に顔を見合わせ、うなずき合うのです。あまんきみこさんの描き出す、母子で体験するちょっぴり不思議な物語を、えがしらみちこさんの美しくのびやかな絵で味わうこの絵本。この日の出来事を読みながら、また子どもたちが自分なりのストーリーを空想の中で繰り広げていく……そんな様子が目に浮かんできますよね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

月夜に響く 優しい声は だれ? あまんきみこ と えがしらみちこ が贈る あたたかな愛情の物語
子猫に絵本を読みきかせるドラネコ「どぶしろ」。彼女の汚れた毛は、月の光を浴びて銀色に輝いていた。じんわり心が温まる絵本。

「ぎんいろのねこ」というタイトルに惹かれて読んでみました。あまんきみこさんの優しい文章は穏やかな気持ちで読むことができます。夜の公園、つきあってあげるお母さんもえらいな〜と思いながら、その特別な夜はきっと子どもにとって忘れられないものになったことでしょう。そして二人の見た光景は…。とても素敵な場面で、ページを開いた瞬間に同じ体験をしたかのように胸があたたかくなりました。 (ouchijikanさん 40代・ママ 女の子8歳)
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