フェリシモ出版の「おはなしのたからばこ」シリーズ26巻は、今江祥智さんとあべ弘士さんの名コンビが贈る『熊ちゃん』。
引っ越しの日、あふれるように積まれた荷物の中に、青いリボンのかけられた箱を見つけた麻里ちゃん。 「あれとって」とお願いするけど、お父さんもお母さんもお兄ちゃんも、「いまいそがしいからあとで」と言ってとりあってくれません。
―なんでもあとで……だわ、ずうっとむかしから……。 と口に出した麻里ちゃんの足もとに、青いリボンの箱がころがってきました。 開けてみると、ふかふかで大きな白い熊ちゃんのぬいぐるみが出てきたのです。 本物の熊のように大きくなった熊ちゃんは、麻里ちゃんを抱えて家から出ていって――。
麻里ちゃんのもとにやってきた「熊ちゃん」は、孤独を抱える麻里ちゃんのあたたかい友人です。 それは、忙しい大人には見えなくなってしまったものでもあります。 お子さんの瞳にはどんなものが映っているのか……子どもをぎゅっと抱きしめて、お互いのぬくもりを感じながら一緒に読んでほしい一冊です。
(洪愛舜 編集者・ライター)
「さいしょに気がついたのは麻里ちゃんだった」――と始まる物語に、えっ?と目をきょろきょろさせてしまいます。 あ、この青いリボンの箱ね、と絵の中から見つけ出したとたん、読者は麻里ちゃんになっています。 「なんでもあとで……だわ、ずうっとむかしから……」という麻里ちゃんの声は小さな子どもたち全ての声かもしれません。 麻里ちゃんの姿から幼い自分を、大人には見えなくなってしまったものが子どもにはちゃんと見えているということを、 思い出すのではないでしょうか。誰のところにも熊ちゃんはいるのかもしれません。 子どもの孤独を描いた最高傑作の絵本です。
取り返しがつかないことのこわさを感じました。
こどもの話を真剣に聞こうとしない、おとな達。
大切なこどもの姿が見えなくなったことにも気づかない…。
現実的な話ではないですが、こどもの“こころ”に置き換えると、どこの家庭でも起こりうることではないかと思いました。
じぶんのことで精一杯。
気がつけば、こどもは大人になっていた。
気がつけば、こどものこころと距離ができてしまっていた。
気がついてからでは遅いのですね。
すこし手を止める余裕を、すこしこどもの顔をみる余裕を…。
そんな風に思いました。 (しゅうくりぃむさん 40代・ママ 女の子9歳)
|