ある町に、落ち着いた建物の並ぶ美しい通りがありました。その中に長いこと空き家になっている家が一軒あり、クロケットさんというおじいさんが引っ越してきました。クロケットさんはとても粗末な身なりをしていたので、お金持ちばかりが住むこの通りの人たちは、「変わった人ですね」と言って顔をしかめました。 あるクリスマス、クロケットさんは植木屋で枯れかけた小さなモミの木を手に入れ、春を待ってからその木を通りに植えました。ちっぽけなモミの木に話しかけ世話をするクロケットさんを見て、大人たちは子どもにクロケットさんに近づかないように言いました。
心優しいクロケットさんと枯れかかった小さなモミの木の美しい物語。見かけばかり気にするお金持ちとは対照的なクロケットさんが、本当に大切なものは何かを示してくれます。近所の大人たちがクロケットさんとのお付き合いを避けようとする中、小鳥や子どもたちはクロケットさんが大好き。次第におじいさんの周りに集まり、最終幕、自然との調和がすばらしい夢のようなクリスマス・ツリーを目にするのです。それがどんなに美しいものであるかは、どうぞ作品で味わってください。 偶然なのか、主人公のクロケットさんは、一見サンタクロースのおじいさん風でもあります。 対象は、小学校中学年以上 ――(ブラウンあすか)
クロケットさんという優しいおじいさんが主人公です。クロケットさんはある日、花屋の隅に捨てられていたみすぼらしいモミの木の苗木を見つけます。花屋 の店員は、ただであげる、と言いますが、クロケットさんは、そのモミの木にふさわしいお金を払います、と言うのです。モミの木にそれだけの価値を見出した のですね。
みすぼらしいモミの木は、クロケットさんの世話で元気をとり戻し、すくすくと成長し、見上げるような大木になりました。
あるクリスマスのこと。モミの木に、たくさんの色とりどりの小鳥たちが何十羽も来て、歌をうたいました。美しい美しいクリスマスツリーが出現したのです。
クロケットさんは「わしに、ほんとうのクリスマスがきてくれた」と言って喜び、小鳥のうた声にいつまでも耳をすましていました ― というお話です。
本の帯には「木と人間の美しい物語」と書いてあります。
【磯崎ママ】 派手で着飾ることに熱心な大人たちの無関心をよそに、クロケットさんは枯れたもみの木を家の前の通りに埋め、毎日毎日、淡々と愛情たっぷりに育てます。やがて、青々としてきたもみの木とともに近所の子供達も変化に気づき、自然とクロケットさんと交流も始まります。そして何年も経ったクリスマスの日、もみの木にとって最高に幸せな日を迎えるのです。 毎日のクロケットさんの生活、育っていくもみの木の過程を読んでいるだけでとても気持ちが落ち着いてきます。そして最後のきれいな色の鳥が集まってくる場面で心から幸せな気分になってしまいます。ゾロトウの書くお話を読むとなぜか私は心が落ち着くのです。気持ちいいのです。クリスマスにしては慎ましやかでちょっと地味なお話ですが心の内側から幸せになれるクリスマスもいいのではないでしょうか。子供におすすめというよりは、子供達が読むとどんな感想をもつのか興味はあります。でも、お母さんに読んで欲しい一冊かも。
「とっても素敵な話だったね」と、小5の娘が感動していました。
クリスマスが近いので、時期的にもピッタリの気分が味わえます。
特に大きな盛り上がりがある物語ではないのですが、読み終えたとき、心の中がじ〜んと、温かくなってきます。
ただ、もったいなないなと感じたのが、本のサイズです。
20×15センチしかなくて、本を閉じた状態だと、大人の手のひらくらいしかありません。
ルーズ・ロビンスの絵が、冬なのに繊細で暖かな色合いで表現してくれているので、もう少し大きなサイズの本でもよかったのかなと、思いました。
文字がやや多めですがそれほどページ数はなく、絵本というより、絵の多い童話といってもいいかもしれません。
ちょっぴり心が傷ついているときなどに読むと、クロケットさんの優しさに癒されそうです。
特に植物が好きなお子さんにはお薦めです。 (てんぐざるさん 40代・ママ 女の子15歳、女の子10歳)
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