うさぎさんが作っているのは、小さな椅子。しっぽもつけて完成です。
「さて、どこに置こうかな」
うさぎさんは、野原の木の下に、「どうぞのいす」と書いた立て札と一緒に置いていきます。うさぎさんのひらめいた「いい考え」とは、どんなことだったのでしょうね。やがて、動物たちが通り過ぎるたびに、色々な出来事が起こるのです。
最初に通りかかったろばさんは、「どうぞのいす」を見ると、なんて親切な椅子だろう、せっかくだから……と、自分は木の下にすわりこみ、持っていたかごを椅子の上に置いたまま、お昼寝をしてしまいます。
次に通りかかったのは、くまさん。椅子の上にはかごいっぱいのどんぐり。隣に書いてあるのは「どうぞのいす」。そこでくまさんは「どうぞならば」と食べてしまいます。だけど思うのです。
「からっぽにしてしまっては、あとの人におきのどく」
そこでくまさんがとった行動とは…? さらにきつねさん、りすさんが通りかかり、それぞれが「どうぞ」の言葉に反応し、考えて、行動し、それはやがてユニークな結末へとつながっていきます。
愛らしい動物たちが次々に登場し、ページをめくるたびに、食べ物がテンポ良くとりかえっこされていく様子は、何度読んでも愉快です。面白いのは、本人たち同士が誰も直接会っていないということ。つながっているのは「どうぞのいす」の言葉のみ。子どもたちは、目の前で繰り返されるその様子を見ながら、どんなことを考えるのでしょうね。
柿本幸造さんの描く、どこまでも温かく優しい絵と共に、きっと長く心に残る絵本となることでしょう。年齢を経ても、繰り返し読んであげてくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
うさぎさんが作った椅子をめぐって次々に繰り広げられるとりかえっこ。「どうぞ」にこめられたやさしさが伝わってくるロングセラー絵本。
この絵本は、娘がお腹にいるときに購入しました。
ほのぼのとしたうさぎさんの絵がかわいくて、
生まれる子もきっと気に入ると思いました。
大きなお腹に絵本を見せながら、声を出して読んで、
ときには、くまさんがきたよ、やきたてのパンおいしそうだね。
なんて語りかけたりして。
そして、娘が離乳食を始めた頃、娘のために
父が木でいすを作ってくれました。
父は絵本のことは全く知らないのですが、
偶然にも どうぞのいす と似ていてビックリ。
お友達が遊びに来たとき、娘が「どうぞのいすだよ」と
いすを貸してあげたりして、私も嬉しくなりました。
絵本の中で、どうぞならばえんりょなくといただいて、
次の誰かのために、どうぞと置いていく。
思いやりというものを、絵とお話で表現している
すばらしい絵本だと思います。 (まーるいおーきなホットケーチさん 30代・ママ 女の子3歳)
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