そこは、むかしむかしの小さな国。とっても小さいので王さまが一人と“トン、チン、カン”の三人の国民しかいません。そんな小さな国に、南の国の王さまから贈り物の箱が届きました。箱の中には、ぞうのジャンボと子どものぞうつかい・バルーが! ジャンボとバルーはいろんな芸をし、王さまも国民も大好きになりました。
ところがある日、東の国と西の国とで戦争が起きました。挟まれた小さな国の頭上を大砲のたまが飛び交い食べ物もなくなりました。ジャンボもすっかりやせて、おやつのバナナももらえません。そこで王さまは、非情な決断をすることになるのです……。
作者のやなせたかしさんは、太平洋戦争に出征した経験があります。その時の経験が代表作「アンパンマン」シリーズをはじめ数々の作品を形作っています。特に本作では、戦争が善良な人たちの生活や考えをいっぺんさせてしまう悲しさを描いています。どんなにやせ細っても人を信頼するぞうのジャンボの姿は、太平洋戦争時のゾウの実話「かわいそうなぞう」を彷彿とさせます。
ですがやなせさんは、この物語を悲しいだけでは終わらせません。ぞうのジャンボは人のために最後まで献身的に働きます。そんなジャンボに訪れる奇跡も描くことで、人々にはどんなときにも希望があることを優しく伝えてくれるのです。
1987年に発刊された本作は、やなせたかしさん没後10年となる今年、「やなせたかしの名作えほん」シリーズとして、YouTubeの読み聞かせ音声QRコードもついた新装版となり、当時の子どもたちの感動を、現代の子どもたちにも伝えてくれます。
(徳永真紀 絵本編集者)
南の国からやって来た、象のジャンボと象使いのバルー。 小さな国で、みんな楽しく暮らしていましたが、 ある日東と西の国の戦争に巻き込まれてしまいます。 国民の命を守るため、王様はジャンボを殺そうとするのですが…。
平和の尊さと命の重さについて問う、時を超えたメッセージ。 ーーー よろこびとかなしみ、絶望とそのとなりにある希望を やさしく描いた名作の数々。 子どもたちへ、そしてかつて子どもだった すべての人びとへ贈る、絵本シリーズです。
小さな国に贈られてきた、象のジャンボと象使いの子供のお話です。
小さな国の両隣の国が戦争を始めました。
戦争が続くにつれ、食糧難に・・・。
王様は、ジャンボを殺して食料にしようとしますが・・・。
実際、戦争中に日本で象が殺されました。
そう考えると、なんだか考えさせられる1冊となりました。 (はしけんさん 20代・ママ 女の子2歳)
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