◆絵本「綱渡りの男」と同じ、大道芸人フィリップ・プティを追ったドキュメンタリー映画、 「Man on Wire」が、2009年度アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞しました! 実話を基にした感動の話題作を、絵本でもお楽しみください。
今はなき、ニューヨーク世界貿易センターのツイン・タワー。 完成当時には世界一の高さをほこるビルでした。
地上400メートル――。 エッフェル塔よりも、東京タワーよりも高い場所。 そこより上には、雲と星よりほかにはなにもない、空のまんなかです。
かつて、そびえるツインタワーのあいだ、地上400メートルの空を歩いた男がいました。 男の名は、フィリップ・プティ。 彼が歩いたのは、太さたった2センチのワイヤーの上!
しかも命綱はなし。 バランスをとるための棒だけを持って地上400メートルの空に踏み出した彼は、ただ渡るだけにとどまらず、ワイヤーの上を行ったり来たり、あげくに踊り出すしまつ!
これは大道芸人であるフィリップが、完成間近のツインタワーに忍び込み、ふたつの塔のあいだに張ったワイヤーで綱渡りをしたという、実際にあった事件を元に描いた作品です。
フィリップが綱渡りを開始するシーン。 おりこまれたページを広げると、大きな画面いっぱいに、地上400メートルの景色が眼下に広がります。 はるか下からそびえるツインタワーと、間にのびる細いワイヤー。 風に吹かれ髪をなびかせる、ワイヤーの上のフィリップ。 このページを眺めていると、現実にこんなことを成し遂げた人間がいたなんて、とても信じられなくなってきます。
「ここには、ぼくひとり。なんて幸せで、自由なんだろう」
ほんの一歩ふみはずしただけで死が待つわずか2センチの幅の“道“の上で、フィリップが感じた「自由」とはなんなのか? 彼はどうしてこんな危険なことをしたのか? このことによって彼はなにを得たのか? フィクションでない、実在の人物が現実におこなったできごとだからこそ、彼がどんな気持ちでいたのか、いつまでも思いを馳せてしまいます。
無謀な夢にとりつかれた男の、手に汗握る偉大な挑戦の物語。
(堀井拓馬 小説家)
ニューヨークでストリート・パフォーマンスをしているフランス人の綱渡り師フィリップ・プティはマンハッタンに建設中の世界貿易センターのツインタワーを見つめていた。あそこで綱渡りをしたい! 今はない世界貿易センターの2棟のビルの間に綱を張り、地上400mの高さで綱渡りをした男の実話。2004年コールデコット賞受賞。
5年生の読み聞かせに使いました。
ただ話を読んだだけだと作り話に思われてしまいそうです。
読み終わった後実話だと話すととても驚いていました。
作者のフィリップへの敬意も添えられているのでそれも読みました。
そしてもう一つこのビルがなくなってしまった理由がわかるかどうか聞いていました。
「なんか見たことあるよね…」と考えた後
「あ、飛行機が突っ込んだやつ…?」と気づいてくれた子がいました。
あの事件があったのは2001年。そのあと生まれた小学生のほうが多いんですよね。何かのTVであの事件の様子を見たことがあるでしょうが、この綱渡りどころか、二つのビルの存在すら知らない子供たちが多い。時の流れを感じます。
今はないあのビルで綱渡りをしたフィリップ。彼は空と一体になった。
その様子は私も知らないけれど、彼の爽快感が伝わる素敵な話だなと思います。
読み聞かせのメンバーにこの本を紹介すると「テーマが重いのでは?」「聞いた後に気持ちが重くなるのでは?」と読み聞かせに否定的な意見が出ました。
正直、そういう感想が出たことににびっくりしました。
こんなに爽快感を感じる話なのに。
確かにあの事件がテーマだとしたら重いです。朝の読み聞かせにはどうかと思います。
でもこの本はそこがテーマなのでしょうか。私は違うと思います。
悲惨な事件を思い出すための話ではなく、あのビルであった素敵な思い出をフィリップとともに思い出し、みんなの心の中にビルの姿を残し、伝える話だと思うのです。
実際、子供たちに読み聞かせをしても楽しそうに聞いてくれました。
話のあとに事件のついては触れてもそこをクローズアップする必要はありません。だから重いテーマにはならないと考えます。
だから自信を持って、これからも読み聞かせに使っていきたいと思います。
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読み聞かせに使った学年:5年生
子供の反応:★★★★★
所要時間:8分程度 (きよぴこさん 30代・ママ 男の子11歳、男の子9歳)
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