新作落語の大家、桂三枝師匠の話を元に、素朴でユーモラスな絵で人間に必要な哲学と真実をお届けする作品。古典落語では表現できない現代の空気、笑いで包まないと届けられない深刻な問題が、うまいこと心に突き刺さって考えさせられる作品だ。
話は、汚染された道頓堀川に住む亀の親子の会話で始まる。息子はきれいな川に移住しようと旅立とうとするが、父は汚染されても故郷である川に執着する。しょうもないギャグや、地球の歴史や環境についても語り、人類に対するメッセージも語る。長い話合いの後、息子ははやり旅立つが…
大人と関西人向け(特に大阪)の話である。道頓堀川についてのエピソードを知らないとわからないネタもあるので、はやりネイティブ大阪人が一番楽しめるからうらやましい。これから関西人になりたくてもなれない自分は不幸だとつくづく思った。
三枝師匠は落語のCDを最近好んで聞くようになって、師匠の人間愛と爆笑ギャグの数々を思いながら読んで、2倍楽しめた。初めて桂三枝という人の作品に触れる人は、最初の創作落語を聞いてから雰囲気をつかむと、より楽しめるかもしれない。
大人が読んでも十分読み応えがあり、考えさせられ、印象に残る素敵な作品だ。環境破壊が手遅れにならないうちに、一人でも多くの人が読んだらいいと思う。