有名なストーリーだけれど印象が違うのは水彩の柔らかいタッチによるところが大きいと思います。表紙は、マザーグースのHush-a-Bye babyという曲やルーベンスの「眠る二人の子供」という絵を彷彿させます。子どもを持つことで変化するのは価値観ではなく視野の広さだと聞いたことがあります。赤ちゃんの時期を過ぎ、子どもが成長していくのと同時に、親は子の成長に応じて育児の内容も家事も働き方も生活リズムすら変えて確実に老いへと向かっているのに、眠る子供の無垢な顔を見ると、不思議と、赤ちゃんを守りたいという本能的な気持ちが静かに湧きあがることがあります。そういうとき、若さへの懐古であれば恥ずかしいし、ヘリコプターペアレントの前兆なのであれば危ないと思っていましたが、この絵本をよみ、無理に否定しなくてもよい気持ちなのだろうと思えるようになりました。おそらく、今まで知らなかった気持ちを知るということなのだろうと思います。これが、視野が広がるということなのかはわかりませんが・・・。