どこかで同じような絵本を読んだと思ったら『きえた権大納言』と同じではないですか。
でも、雰囲気が随分違うのです。
ほりかわりまこさんの濃厚な絵に対して、赤羽末吉さんの絵は昔の風画のような装いです。
ほりかわさんが主人公を権大納言と、上流階級をテーマにして面白おかしいのに対して、舟崎克彦さんのストーリーは普通の男を主人公にして、「面白い」というよりも「滑稽な」お話です。
鬼とすれ違った男は、鬼の唾をひっかけられて、透明な存在になってしまいました。
嘆いていた男は、人から見えないことを逆手にとって、ものを盗み始めます。
そんな男が、同じ仲間の牛飼いに病に伏した女を苦しめる手伝いを頼まれて、自分の良心に目覚めました。
転んでもただでは起きない男のずるさ。
鬼よりすごいかもしれません。