「行事の由来えほん」のシリーズの中では1番好きなお話です。単に行事の由来を学ぶというだけでなく、古来からの風習や文化の素晴らしさ、それを通しての家族の心のつながりが伝わってきます。
大晦日の商店街のにぎわい。朝からおせち料理を作るおばあちゃんとお母さん。神様と仏様にも順々にお餅をお供えし、家族みんなで新年を迎える準備をします。その風景は、懐かしい子どもの頃そのままに思え、亡くなった祖母の顔や、お煮しめの美味しそうなにおいまで漂ってくるようでした。娘は、仏様という言葉を知らなかったため、説明してあげると、「パパのおじいちゃんとおばあちゃんも、お空からお餅を食べてくれる?」と聞きました。
また、みのりのように、「絶対眠らない!」とがんばって起きていた大晦日の特別な夜のわくわくした気持ちも蘇ってきました。娘は、指でぎゅっと両まぶたを開いて眠さと闘っているみのりの顔に、くすくす笑い。鏡の前で真似して、おもしろがっていました。
でも、遠くまで出稼ぎに行っていたお父さんが帰ってくるときのみのりの気持ちは、娘に伝わったかな? うちのパパは、娘が私のお腹にいるときから、ずっと在宅の仕事を続けています。「子どもとのかけがえのない時間を大切にしたい」という考えからです。出稼ぎどころか、1日、2日の出張さえありません。私も娘もそれが当たり前になってしまい、毎日公園に連れて行ってくれることも、毎晩家族そろって食卓を囲めることにも、感謝の気持ちが薄れていましたが、「最終バスにどうかお父さんが乗っていますように」と、お地蔵様にそっと手を合わせるみのりとお母さんの姿に、目頭が熱くなりました。お父さんに会える喜びと、待っている間の不安。素直な子ども心がとてもよく表わされています。
そして、心温まるラストシーン。除夜の鐘を聞いた後、お父さんと二人、暗い外を見つめながら、「あっ、あれがさかいめなんだよ。きのうのよるのてが、きょうのよるのてを、にぎっているんだよ」と言ったみのりの手も、しっかりとお父さんの手を握りしめていました。
今年の大晦日にぜひもう1度娘の手を握りながら読みたい1冊です。