大恐竜ショーという見世物につられて、ゾロリ一家はせこい手段をつかい会場にもぐりこむ。子どもの恐竜しか出てこないショーに満足できないゾロリは、自らすごい仕掛けを作って恐竜を捕まえに行くことに…
母と死に別れたゾロリは、大変なお母さん想い。マザコンとも言うが、母親に褒められるためには異常な執念で物事にとりくむ。自分がそういう気持ちなので、他人の母や親子関係も大事にするらしい。恐竜の親子が引き裂かれてしまった状況を見て、つい、自分が悪役だということも忘れて、全力で助けてしまう。
仲間や身内に対しては結束が固いのが悪役の特徴なのだろうか。仁侠映画や海外のマフィアなども、ファミリーの結束は固い。自分の身内は大事にするが、他人はどうなってもかまわないという偏った愛情表現だが、最近は身内にも他人にも無関心な雰囲気が感じられる社会になっている気がするので、こういう「情に厚い」話は、新鮮に感じられた。
浪曲や昔の時代劇を思い出すような、クサイ話で、安心して読み進められる。ゾロリよりも悪いキャラクターが連続して出てきているので、ゾロリが相対的に良い人になってしまっていて愉快だ。