荒井良二さんが描いた 白い象に惹かれて、手に取りました。
「懐かしいなあ。教科書に載ってたよね。」と、表紙を覗き込んできた彼。
しかし、私は初めて読む物語だったので、
どんな内容なのか、何も分からないままにページを開きました。
開いた途端に目に飛び込んできたのは、
画面いっぱいに広がる力強い色彩と、
宮沢賢治さんの、あの独特な言葉たち。
「荒井良二さんが描くと、こうなるんだ…。」
と、隣の彼も、すっかり釘付けになっている様子。
「この話ね、最後はなかなか衝撃的なんだよ」
などと言いながら、
絵本から目を離そうとしません。
私も物語が進むにつれ、ふたりで読んでいる事を忘れました。
ページをめくるたびに、宮沢賢治さんと荒井良二さんの世界がぐるぐると混ざりあって
目から脳に、ダイレクトに刺激が伝わっているような気がしました。
特にぞうたちがオツベル邸に向かって“噴火”する場面では、
殺気がページの中からドドドッと溢れ出してきて
絵本であることを忘れそうになったくらいです。
絵本を読んでいて、こんな気持ちを味わったことはありません。
今まで私は、作と絵、両方を同じ作者が手がけている絵本しか読まなかったのですが、
ふたつの世界が合わさる事で
誰も踏み込んだことのない、未知なる世界が開かれるのだとドキドキしました。