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怖くなる音がある
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投稿日:2017/07/23 |
夏になると全国のあちこちで「おばけ屋敷」がオープンする。
どうしてあんな怖いものをわざわざお金を払ってまで見に行くのか、臆病な私には理解できない風物詩だ。
いや「おばけ屋敷」だけではない。
怪談話にホラー映画、身も凍るような仕掛けにこの世は満ちている。
そして、「怪談えほん」だ。
絵本くらい、明るく夢のあるものがいいのに、どうして「怪談」なのだよと思いつつ、暑い夏くらいはせめて絵本でも身も凍りたくなるものかな。
この絵本も怖い。
ここでは聴覚は怖さを生み出している。
ちょうつがいの「きいきい」いう音である。
恐怖というのは五感に訴えてくるから始末が悪い。
この絵本の主人公の少年はちょうつがいの「きいきい」いう音から見たこともないおばけを見つけてしまう。
聴覚から視覚へと恐怖が移っていく。
その点では物語よりは絵本の方が恐怖感を生み出しやすいかもしれない。
「おばけ屋敷」などはこのあと触感などの移るケースが多いが、絵本だとそこまではいかない。
むしろ視覚が煽る。
この絵本でも恐怖の源泉は「きいきい」鳴るところにあるが、よく見ると、描かれている家も部屋も街もみんな怪しさに満ちている。
どころか、まわりの人がすでに異界のものたちだ。
となれば、この絵本の絵を描いた軽部武宏さんの技量を評価すべきだろう。
暗い部屋で、ぺたぺたと赤い絵の具を塗っている。
そう思えば、それだけで怖くなる。
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スー女が描いた相撲絵本
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投稿日:2017/07/16 |
最近「スー女」なるものが街に繁殖していると聞く。
「スー女」、つまり相撲好きの女性のこと。
それほどに相撲人気はいま高い。
この絵本、タイトルや表紙絵を見れば、大相撲のお話だとわかるが、描いたやまもとななこさんは大の相撲好きで、まさに「スー女」が描いた絵本。
そして、この絵本がやまもとさんの初土俵、ちがった、デビュー作だという。
優勝を決める大一番に土俵に上るのは小兵の明の海。
迎え撃つは横綱武留道山(ぶるどうざん)。
ここからはど迫力の絵がつづく。
ほとんど白と黒の世界で描かれて、それでも次第に力のはいってきた明の海の体が赤くなって・・・。
勝敗のゆくえは絵本をごらん頂くとして、決まり手は「うっちゃり」。
この技、やまもとさんの好きな技だとか。
表紙裏には大相撲の「決まり手」八十二手がイラストで紹介されています。
きっと「スー女」の皆さんには自分の好きな決まり手があるんでしょうね。実際目にすることのない珍しい決まり手もあります。
それと、やってはいけない「禁じ手八手」というのもあって、例えば「まげをつかまない」とか「キックしない」とかあります。
中には「まえぶくろをつかまない」という禁じ手もあるのですが、この意味がよくわからない。
「スー女」の人に、今度聞いてみたいと思います。
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おいしい夏野菜、めしあがれ
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投稿日:2017/07/09 |
家庭菜園を始めるなら、やはり夏野菜がいい。
なんといっても、その数が多い。トマト、ナス、キュウリ、カボチャ、ピーマン、トウモロコシ、エダマメ、まだまだあります。
これらの野菜の実の実にカラフルなこと。赤でしょ、青でしょ、緑でしょ、黄色でしょ、まだまだあります。
それに夏野菜の花も美しいし、夏野菜は上に上にと成長するものが多いので、畑がにぎやかに見えます。
この絵本はそんな夏野菜を楽しく紹介しています。
ただどうしてなのか、ナスがなくて、かわりにアスパラガスがはいっています。
スイカとかも欲しいところですが、それはまた別の機会を待っていましょう。
この絵本では可愛い動物たちが、夏の畑にやってきます。
最初は、トマト。畑にやってきたのはカエルの一家。
何気なく、トマトの品種なんかも描かれているし、その横のページでは成長過程も説明されています。
トウモロコシのページには「ひげはながいめしべで けんしといいます」なんて、本格的な説明まで付いていて、少しびっくりしました。
夏野菜の魅力で大切なことを忘れていました。
それは、おいしいこと。
色んな食べ方ができるのも、特長です。
だから、この絵本のおしまいには「はたけのごちそうレシピ」もついています。
「えだまめパンケーキ」なんかおいしそうですね。
夏野菜は色よし、形よし、味よしの、三方よしなんです。
この絵本も、とってもおいしい。
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この絵本も写生眼
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投稿日:2017/07/02 |
甲斐信枝という絵本作家のことを知らなかった。
知らないから、知人からNHKで「足元の小宇宙 絵本作家と見つける生命のドラマ」というドキュメンタリーが放映される時も興味を持たなかった。
実はこの番組、2016年にパートTが、2017年にその続編が作られる程の人気のようだ。
「”雑草“が教えてくれたすてきな世界」というコピーがあらわすように、甲斐さんが描いた『雑草のくらし』はロングセラーだし、番組では草をかきわけ、地面に寝そべって、草たちと同じ目線になっている甲斐さんの姿がとらえられていたそうだ。
甲斐さんは1930年生まれ。
まだまだこの国にもたくさんの雑草も小さな昆虫もいた時代に生まれた。
おそらく甲斐さんの周りでもそういう世界がどんどん小さくなっていっただろうが、甲斐さんはそんな世界を残そうとされたのだと思う。
雑草と、虫たちと、同じ目線になった時見えてくるのは、命の尊厳である。
美しいだけではない。そこには生き残るための競争もある。殺し合いもある、安らぎもある。そういうすべてを命は含んでいるのだと、甲斐さんの絵本を教えている。
ある日のきゃべつばたけの一日を描いたこの絵本でもそうだ。
食べる私たちからすると、きゃべつに卵を産み付ける蝶々などは忌み嫌うものしかない。しかし、蝶々からすれば、そうやって子孫を残すことが命の循環である。
その卵を襲う虫やカエルたち。
なんともない一日に、なんとも豊かな命の咆哮に満ちている。
甲斐信枝という絵本作家は、いのちをみつめる人だ。
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思わず、じぇじぇじぇ
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投稿日:2017/06/25 |
詩人谷川俊太郎さんが様々なアーティストと組んで作る「あかちゃんから絵本」の13作め。
今回のお相手はクリエイティブディレクターの佐藤可士和さん。
佐藤可士和さんといえば、キリンビールやユニクロのブランディングとか六本木の国立新美術館のロゴとかで有名で、『佐藤可士和の超整理術』とかの著作もたくさんあります。
絵本といっても一人で絵も文も描かれる人もいれば、絵だけ、あるいは文だけという人もいます。
特にそういう分業の場合、画家と作家は綿密な打ち合わせをするのでしょうか。
それは楽曲を作る時もそうです。
作曲家と作詞家。どちらのイマジネーションの方が先なのでしょうか。
例えば阿久悠という昭和を代表するすごい作詞家がいましたが、阿久さんの場合は作詞が先だったのでしょうか、それとも曲があって、それに詩をはめていったのでしょうか。
この絵本でいえば、谷川さんの詩が先にあったのではないかと思います。(違うかな)
「すい/きーん/すぱん」「ンンンンカ/ムムムムタ…」みたいな、変な言葉が並んで、これに絵をつけられるかな、できるならやってみな、みたいな、何となく意地悪をしているみたいですが、谷川さんはこんな文にどんな絵がつくのか、自身楽しみにしていたのではないでしょうか。
そういう弾むような感覚が、赤ちゃんにも届くのかもしれません。
ところで、このタイトル、どんな意味なのでしょう。
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私、作る人。僕も、作る人。
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投稿日:2017/06/18 |
「私、作る人。僕、食べる人」という食品メーカーのCMが男女差別になると放送中止になったことがありました。1975年頃のことです。
さすがにそういうことを今だに言う人はいないのではないでしょうか。
むしろ、「僕」という人称語で呼ばれる男性で料理をしないという人の方が減ってきたような気がします。
煙草を吸わない、子育ての積極的に参加、そして料理がうまい。
そのあたりが今のカッコいい男性像ではないかしら。
実はこの絵本の奧付を読むと、初版が1976年とあります。
まさに冒頭のCMが問題になっていた頃です。
そのなかにあって、お父さんの料理する姿をユーモラスに描いた作品を描いたのですから、作者のさとう・わきこさんの先見の明には感心します。
なにしろ、この絵本でも最初は料理を作ろうとするおとうさんを嫌がって、お鍋やフライパン、それにじゃがいもやたまねぎの食材も逃げ出してしまうくらいです。
それらをつかまえるために、おとうさんの「とくいの とあみ」というのがいいですね。
今の子どもたちは「投網(とあみ)」そのものを知らないかもしれませんが。
出来上がったカレーライスを食べようとすると、お母さんも子どもたちも「まずそうと逃げ出そうとするのですから、失礼なものです。
お父さんは今度も投網でつかまえます。
食べて、みんなはあまりのおいしさにびっくりです。
このお父さんは今のカッコいいお父さんの先駆けのような人です。
今頃、どんなカッコいいおじいちゃんになっているでしょう。
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見直したぜ、ナメクジくん
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投稿日:2017/06/11 |
いよいよ梅雨の季節になって、そうなるとかたつむりが頭に浮かびます。
雨の中、紫陽花の葉にかたつむりがのろのろと歩んでいる。絵になります。
それがもしナメクジだったら、どうですか?
キャー、だ、だれか塩持ってきて! なんてことになるに決まっています。
ナメクジに貝殻を被せただけで、ともしかしたら思っていませんか、かたつむりのこと。
つまり、かたつむりはヤドカリのようにカラを取り換えることはないのです。
あのカラの中には心臓とか肺とかとっても大切なものがはいっているのです。
この絵本は「科学絵本」というジャンルに分類されているだけあって、そういうことも丁寧に書かれています。
それでいて、絵はとてもかわいいのですが。
この絵本はナメクジの話です。
実はナメクジというのはかたつむりの進化したものだというのです。
つまり、あの大きなカラを捨ててしまえばもっと自由になるに違いない、そう考えたかたつむりの一群がいたのです。
もっと自由を! というわけで、そこから何世代も進化し続けて、カラをもたないかたつむり、ナメクジになったというわけです。
なんだかすごいでしょ、ナメクジ。
まるで「青年は荒野をめざす」みたいに、かっこいい。
進化した果てにここまで嫌われるとは思っていなかったかもしれませんが、これからもさらなる進化をめざして、のろのろと歩きつづけていくのですね。
この絵本はそんなナメクジくんへのエール本なのです。
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豊かに生きる
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投稿日:2017/06/04 |
外国の絵本を読む基準というか動機は訳者に左右されることが多い。
日本の著名な作家や詩人が翻訳をするケースがたくさんあるので、訳者名で読むことになる。
この絵本もそうだ。
元「暮しの手帖」の編集長で人気エッセイストでもある松浦弥太郎さんが翻訳をされたということで手にした。
これが思いのほか、よかった。
書いたのはポルトガル生まれのカタリーナ・ソブレルさん。
1985年生まれというからまだ若い。
若いけれど、人生の終盤期を迎えた「おじいちゃん」を見る目は確かだ。もしかしたら、この絵本の「ぼく」は著者自身なのだろうか。
このおじいちゃんは時計職人だが、今は時計も見ないし、時間も気にしない。新聞さえ読まなくなった。
おじいちゃんには予定もない。やりたいことや好きなことをしているだけ。
誰もがそんな生活を夢みているはずだが、誰もが「おじいちゃん」になりきれない。
おそらく「おじいちゃん」というのは年齢のことではない。
ここで書かれている「おじいちゃん」は豊かに生きているという意味だろう。
本読みのプロでもある松浦弥太郎さんならこの絵本の良さに気がついただろうし、ここに描かれている「おじいちゃん」の生活こそ松浦弥太郎的ともいえる。
この作品は2014年にボローニャ国際児童図書展で国際イラストレーション賞を受賞してくらいなので、絵にもまたいい。
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やさい学、学べます
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投稿日:2017/05/28 |
なかやみわさんの「やさいのがっこう」シリーズの、これが2冊めの本です。
今回の主人公はピーマンくん。
その前に「やさいのがっこう」について説明しておきます。
この学校ではたくさんのやさいたちが「おいしいやさい」になるために勉強しています。
先生は「なすびせんせい」。
なんでも知っています。
そして、この学校の卒業は「つやよし!」「いろよし!」「かたちよし!」の三つの「よし!」がそろった時。「合格シール」が貼られま す。
ピーマンくんの隣の席のはくさいくんは「合格シール」を貼ってもらって卒業したのに、ピーマンくんはいつも居眠りばかり。
しかも黄色いピーマンや赤いピーマンになる、変な夢ばかり見ています。
ピーマンくんは自分の身体がどうして緑色をしているのかわかりません。
そんな時勉強家のキャベツくんが「それでいいんだ」と教えてくれます。
ピーマンくんが夢に見ていたのは、色鮮やかなパプリカたちだったのです。
ピーマンとパプリカはよく似ていますが、別の野菜です。
ただ全く違うかといえば、親戚のようなもの。
トウガラシとかも親戚といえます。
実はこんなお話が付録についている「食育しんぶん」に書かれているのです。
絵本を読む前にこの「しんぶん」を読んでいると、子どもたちに質問されても心配ご無用。
至れり尽くせりの「やさいのがっこう」なのです。
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まるでフランス映画のような絵本
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投稿日:2017/05/21 |
女優の室井滋さんと絵本作家の長谷川義史さんがタッグを組んだ絵本も、もう何冊になるのでしょう。
ところが、今回はどうも長谷川さんらしからない絵のタッチ。まあパンチはあるのだけれど、どうもおしゃれ。
よくみると、絵は「長谷川義史&むろいしげる」とある。
どのあたりが長谷川さんで、どの辺がむろいさんなのかわからないが、きっとお二人わいわいがやがや、描いたにちがいない。
だって、今回の話、結構シーンとなるんだけれど、まるでフランス映画を観ているようなんだもの。
タイトルにある「毛玉ちゃん」というのは、すっかり年をとった体じゅう毛玉いっぱいのおじいちゃんネコ。
最近飼ってもらっている家の人からほめられないので、隣のミーコと家出をすることになった。
ミーコというのもおばあちゃんネコで、ミーコは子ネコを9匹も生んでおっぱいもだらーんとなってブラジャーをはめさせられていたりする。
その二匹のネコが迷い込んだのが、年をとったおばあさんのところ。(毛玉ちゃんたちとおばあさんがベッドで抱き合っている絵は本当に素敵です。この絵を見ているだけで、生きててよかったみたいな、いのちの尊さを感じます)
やさしくしてくれるおばあさんのために、二匹のネコは暖かいかぼちゃのスープを飲ませてあげようとします。
そして・・・。
最後のページを閉じた瞬間、また最初から読みたくなる、これはそんな絵本。
このコンビの絵もまた見たいと思います。
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