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七代先の子どもたちへ
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投稿日:2017/03/12 |
自分の先祖を順番に並べたら、たかだか5人ぐらい前で江戸時代あたりの先祖になるのだろうか。
私の前が父母で、その前には祖父祖母、その前が曾祖父母。このあたりになるとすでにどんな人だかわからない。
人類の歴史などと大仰にいっても、その程度なのだ。
本書の作者で、画家いさわきちひろの子どもである松本猛さんがこの絵本の終わりに、「七代先のことを考えて判断しなさい」というアメリカ先住民の言葉を紹介しているが、七代先とは言葉でいえば簡単だが、実は途方もないくらいの年数ということだ。
ヒロシマやナガサキの原爆からでもせいぜい三世代前といえる。
たったそれだけの年数なのに、この国は原子力発電を容認し、拡大していったわけである。そして、東日本大震災による東京電力福島原発での事故。
それは、「まさか」であったのか、「やっぱり」であったのか。
高度成長期のこの国は豊かさを国民にもたらしたが、その一方で「七代先のことを考える」ことはしなかったのだ。
松本猛とその娘である松本春野の共作となったこの絵本は、原発事故によって福島から広島に避難してきた一人の少女と同級生となったサッカー好きの少年の物語だ。
ひとり仲間にはいらない「ふくしまからきた子」、まや。
彼女のことが気になるだいじゅ少年は家で彼女の事情をきいてみる。
放射能、原爆、避難。ヒロシマとフクシマ。
その夜、少年は母の背にしがみついて泣くまやの姿を見る。
子どもたちに罪はない。
「七代先のことを考え」なかった大人たちの責任だそのことをきちんと伝えていくことが、今の私たちの大きな課題といっていい。
物語であれ、ノンフィクションであれ、本書のような絵本であれ、子どもたちに、「七代先」の子孫たちに、伝えていくことがどんな大事なことか。
そういえば、この絵本で絵を担当した松本春野はいわさきちひろから二代めにあたる。祖母ちひろの柔らかなやさしさを受け継いでいるようなタッチの絵が、いい。
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追悼・ディック・ブルーナさん − これからも愛され続けるだろ
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投稿日:2017/02/26 |
世の中には有名なウサギがたんといます。
『不思議な国のアリス』に出てくる白うさぎやビアトリクス・ポターの児童書に登場するピーターラビットなどは中でも有名。
彼らに負けないくらい有名なのが、もしかしたらディック・ブルーナのこの絵本に出てくる
「ちいさいうさこちゃん」かもしれません。
このうさぎの絵がついたお弁当箱やお道具入れを持っていた子どもたちもたくさんいたのではないでしょうか。
この絵本を描いたディック・ブルーナさんが2017年2月17日に亡くなられました。
89歳でした。
ブルーナさんはオランダのデザイナーで絵本作家です。
もちろんオランダだけでなく世界中の子どもたちに愛された絵本作家ですが、日本でもブルーナさんが描いたうさこちゃんやミッフイーは知らない人がいないのではないでしょうか。
ブルーナさんの絵の素晴らしさはなんといってもぱっと目をひく色です。
これは「ブルーナカラー」と呼ばれているそうで、赤や黄色、緑、青といった色が鮮やかに使われています。
それと造形の線。うさこちゃんを見ればわかるように、とてもシンプルだけど、強い線といえると思います。
この色と線が、赤ちゃんからも愛される魅力ではないでしょうか。
この絵本の奧付を読むと、1964年6月発行とあります。そして、2010年に改版されています。
つまりこの絵本が日本で刊行されてから半世紀以上経ちます。
それでも今も読み継がれているのですから、すごいというしかありません。
そして、ブルーナさんにこう言いたい。
ありがとう、ブルーナさん。
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わたしたち人間と同じなのです
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投稿日:2017/02/19 |
まずなんといっても表紙のライオンの絵に引きつけられる。
描いたのはスティーブン・ウォルトンという人。独学で絵を学んだというからすごい。
色がついているわけではない素描ながら、なんとも引きつけられる。
ライオンだけではない。
この絵本にはほかに、ゴリラ、キリン、トラ、ゾウ、エチオピアオオカミ、ペンギン、ウミガメ、コンゴウインコ、シマウマが描かれている。
それらの動物たちに、数字がついている。
「ライオン1頭」「ウミガメ8匹」といったように。
この数字がこの絵本ではとても大切だ。
この絵本で描かれた動物たちは今絶滅の危機をむかえつつあるというのだ。
例えば、ライオンと並んで人気のあるトラだが、今「絶滅する危険性が非常に高い」動物で、この25年の間でその数は半分に減ってしまったという。
では、何頭かというと、およそ4000頭というのですから驚きだ。
ゴリラもウミガメもそうだ。
子どもたちにそういったことを話すことは難しいかもしれないが、その事実から逃げていてはいけない。
この絵本を広げれば、子どもたちはきっと目を輝かせるだろう。だって、動物たちが実に生き生きと描かれているのだから。
その時に話して欲しい。
これらの動物たちを大切にしないと、本当に絵本だけに生きる動物になってしまうことを。
巻頭に野生動物保護活動に励んでいるヴァージニア・マッケンナが言葉を寄せている。
その中の一節。
「動物も辛さや悲しみを感じます。自分の子どもを守り、勇気をだしたりおそれたりもします。わたしたち人間と同じなのです」
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ねずみはつらいよ?
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投稿日:2017/02/12 |
表紙のゆきだるまに横にちょこんと立っている「ねずみくん」を見て、あのチョッキのねずみくんだと気がつく人は多いと思います。
それくらい「ねずみくん」は絵本の世界では有名人(ねずみ?)なのです。
最初の『ねずみくんのチョッキ』が出たのは1974年。それ以来、シリーズ化され、41冊も出ています。最近でも毎年一冊は新しい作品が出ているのですから、絵本界の「男はつらいよ」(ねずみはつらいよ?)です。
この作品は2001年に出版された、「ねずみくんの絵本15」となっています。
雪の降る季節にぴったりな作品です。
「ゆきがっせんを しよう」、「ねずみくん」は画面右側に向かって、小さな雪玉を投げています。
すると、大小4つの雪玉が投げ返されてきます。
投げたのは、ぞうさん、くまさん、ライオンさん、うさぎさん。
確かに、動物たちの大きさで雪玉の大きさもちがってきます。
雪が降ると、雪がっせんのほかにも雪だるまを作ったり、スキーをしたり、楽しい遊びがたくさんあります。
「ねずみくん」は大好きな「ねみちゃん」とソリ遊びをしようと山のてっぺんにやってきます。
ぞうさんたちはスキーで遊んでいます。
「ねずみくん」はスキーは苦手。ところが、うさぎさんに誘われて、山のてっぺんからすべることになってしまいます。
すべる? 「ねずみくん」の場合は転がるですね。
さあ、どうなるのでしょう。
「ねずみくん」シリーズはキャラクターの魅力でもあります。
そのあたりも映画「男はつらいよ」に似ています。
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日本人は相撲が大好き
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投稿日:2017/02/05 |
稀勢の里が第72代横綱になって、日本中が湧き立っています。
なんといっても、19年ぶりの日本出身の横綱の誕生ですから、皆さんヒートアップするのもわからないでもない。
若い人などは横綱に日本人がいたことも知らないかもしれない。
まさに稀勢の里さまさま、「満員御礼」です。
こうしてみると、色々な中傷や叱責はあるものの、日本人というのは相撲が好きなんだと思います。
何しろ国技である。
だったら、強いヒーローが出てきても不思議はないと作者の中川ひろたかさんは考えたかどうか知らないが、この絵本の主人公は強いヒーロー「スモウマン」なのだ。
どこかで助けを呼ぶ声あれば、稽古中であってもむかいます。
土俵まわしをマントにようにして(これっていいのかな)、空だって飛んでしまいます。
現われた途端に塩をまく、なんてちょっと卑怯っぽくもありますが、つっぱり、うちがけ、最後は上手投げ、と技が多彩なのはさすがです。
お腹のすいている女の子を相撲部屋まで連れて帰って、ちゃんこまでごちそうするのですから、さすがは日本のヒーロー。
なんといっても、長谷川義史さんの絵がすばらしい。
背景に描かれた小道具にも注目です。
この絵本、2002年に出版されてそのあとも着実に重刷されています。
やっぱり日本人は小さい時から相撲が好きになるように刷り込みされるのかな。
でも、さすがに国技館で「スモウマーン」なんていう声援は聞いたことがありません。
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石井桃子からの贈り物
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投稿日:2017/01/22 |
児童文学者石井桃子さんは桃子と名付けられてだけあって、3月10日が誕生日です。
1907年の生まれですから、生きておられたら110歳。しかし、石井さんは没後まだ10年にもなっていません。
101歳まで生きられた女性です。
しかも、いつまでもお元気でいらした。
その成果のひとつが、この作品の改訳です。
石井さんが最初にこの作品を訳されたのは1954年のことです。
この時には『百まいのきもの』という題名でした。
戦後まもない時期、まだドレスよりはきものの方が呼び方としてなじみがあったのでしょう。
この時期の石井さんは「未来をになう若い人たちに、心の糧となるようなゆたかな文化を、ぜひとも伝えたい」と、さまざまな作品を求めていたといいます。
そんな時に手にしたのが、この作品でした。
この作品は現代風にいえば「いじめ」の問題を描いています。
貧しい移民の娘ワンダに「ドレスを何枚持っているのか」とからかうクラスの同級生たち。そんな彼女たちに「百枚持っている」と答えるワンダ。
そんなはずはないと、同級生のからかいは毎日続きます。
ワンダの親はついにひっこしを決断します。
転校していくワンダにからかったのはまちがいだったと悩む少女も出てきます。
いじめにあっている人に何もしてあげられなくて悩む子どもたちもたくさんいます。
こういう作品が1954年には読むことができたのも、石井桃子さんのような先人たちがたくさんいたからでしょう。
でも、残念ながら、いじめはなくなりませんでした。どころか、もっと悪質になっていきました。
石井さんはどんな気持ちで改訳の作業をされていたのでしょう。
最後にこう記されています。
「もうじき百歳の私から、若いみなさんに手渡すことができることを心からうれしく思っています」。
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あたらしい きみの はじまりの日
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投稿日:2017/01/21 |
毎年ノーベル賞の季節になると今年こそ村上春樹が文学賞を受賞するのではないかと、ざわざわする。
ところが2017年の文学賞にはそのざわざわ感を帳消しにするほどの衝撃があった。
この年、文学賞を受賞したのはアメリカのシンガー、ボブ・ディランだったのだから。
ディランの受賞は予想外であったが、案外ハルキニスト達にとっては喝采だったのではないだろうか。
この絵本は、ボブ・ディランが1974年に発表したアルバム「プラネット・ウェイヴズ」に収録されている「フォーエバーヤング」をもとに描かれたもの。
この曲について、ディランは「息子のことを思いながら」作ったそうだ。
「なるべく感傷的にならないように」努力したという。
けれど、この絵本は少し「感傷的」かもしれない。
たとえば、「きみの手が ずっと/はたらきつづけますように」「きみの足が とおくまで/走っていけますように」「流されることなく/流れを つくりますように」といった具合に。
(絵本の最後には英語の歌詞も載っているので比較してみるのもいい)
この絵本にはもっととっても大事なことが描かれていて、それはアメリカという国の大きな歴史であったり精神の源流だったりする。
絵を描いたポール・ロジャースが自身の絵の解説を少ししているのだが、それを読むとアメリカのことがほんの少しわかった感じがする。
トランプ大統領が就任したアメリカ。またちがった「はじまりの日」を迎えたのかもしれない。
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なあなあ、はよ、読んでや。
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投稿日:2017/01/15 |
言葉とは、なんとも面白い。
ジョン・クラッセンの人気シリーズ第3弾となったこの作品の原題は「WE FOUND A HAT」。それが長谷川義史さんが訳すと、「みつけてん」。
気分が躍り出すようなわくわく感が生まれる。
それは本文の訳でもそうで、それはこのシリーズの特長にもなっているのだが、関西弁のなんともいえないもっそり感が、主人公の二匹のカメには似合っている。
「かっこええで」とか「ねよか」なんて具合に。
お話は二匹のカメが帽子を見つけるところから始まる。
ところが、帽子はひとつ。
カメは繰り返すが、二匹。
「どっちか かぶったら、どっちか かぶられへんなぁ。そんなん あかんなぁ」となる。
そこで二匹はこの帽子を「みつけんかった」ことにして、帽子から遠ざかる。
でも。
気になる。
夕日を見てても、考えるのは帽子のこと。
寝ても、帽子が頭から離れない。
一匹のカメは相手のカメが寝たことを確かめて、そろりと。
でも。
もう一匹のカメは自分が見ている夢を実況中継。
どんな夢?
それはこの絵本を読んでみて下さい。
この絵本は関西弁が大好きな人に読んでもらうと気分がでるやろな。
そしたら、めちゃうれしんちゃうか。
なあなあ、はよ、読んでや。
読者まで関西弁にしてしまう、この絵本は強力でっせ。
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何が植わっているのか、どんな形なのか
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投稿日:2017/01/08 |
幼児向けの「しかけ絵本」です。
どんな「しかけ」になっているかというと、「やさいさん やさいさん だあれ」と書かれていて、見ると葉っぱだけが出ていて、さあて土の中にはどんな野菜が植わっているのだろう。
「しかけ」をめくると、「すっぽーん にんじんさん」が飛び出る、という具合になっています。
野菜にはいろいろな品種があって、土の中で育つ根菜類とか葉や茎を食べる葉菜類、あるいは果実を食べる果菜類があります。
例えばホウレンソウやコマツナは葉菜類、イチゴやキュウリは果菜類です。
でも、葉菜類や果菜類では「しかけ」になりにくいかもしれません。
もっとも、花を描いてどんな野菜になるのかっていうなら面白い「しかけ」にできるような気がします。
この絵本にはニンジンのほかにダイコンとかジャガイモとかカブとか出てきますが、葉の形の違い以外にも少しだけ顔を出す品種もあります。
ダイコンでいえば青首ダイコンは割りと首を地上に出しますし、カブもそうです。
だから、ひっこぬくまでわからないということは実際にはありません。
でも、これらの野菜が面白いのは、ひっこぬくまできちんと育っているのかわからない点です。
抜いてみて、きれいな形をしたダイコンをみたらホッとしますし、二股どころか三股、四股なんてびっくりです。
「しかけ絵本」より実際の畑はもっと「しかけ」に満ちています。
だから、面白いのですが。
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クリスマスの奇跡
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投稿日:2016/12/25 |
「サンタクロースがいるのか、いないのかー。」
とっても素朴な、しかしどう答えていいか困ってしまう質問です。
うれしいことに、そしてちょっぴり寂しくはありましたが、私の娘たちからはこの質問をうけたことがありませんでした。
娘たちもなんとなく気になっているのだけれど、言葉にしてしまうのが怖かったのかもしれません。
この本を読み終わってしまえば、この質問にはこの本の話をすればいいと思います。
それほどびっくりするような、クリスマスの奇跡が描かれています。
それは最後のとっておきとして、サンタクロースがいるのかいないのか悩んでしまった少女メリーは大好きなおばあちゃんのところに行って、聞いてしまうのです。
この時のおばあちゃんの答えが素敵です。
「毎年、サンタクロースのお手伝いをしているの」
「サンタクロースは、自分の姿を、けっして見せないものなのよ」
さすがおばあちゃん、うまいことを言う。
世界にはたくさんのサンタクロースのお手伝いがいるのです。
私もかつてはそうでした、いえいえ、まだまだお手伝いをしています。
どうしてかって?
だって、こんな素敵な本をみんなに教えてあげられるのですから。
実はこの本の奇跡のことはここでは触れていません。
ですから、この本を読むときは、奇跡を信じてきちんと読んで下さい。
きっと、驚きます。
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