![みどころ](/images/shoukai_midokoro.gif)
「ねえ、うみのむこうに、ゾウっていう いきものが いるんだって。 もしかしたら あんたのなかまじゃないかしら。」 この島に一頭しかいないゾウガメのこうらの上で、小さなヒワはうれしそうに話す。 ゾウガメは固くて石のようなむねがどきんとなり、こおどりしたい気持ちになった。 「あたしが たしかめてくる。 あんたは だいじな ともだちだから」 ヒワはゾウガメのために、まだ見たことのない「ゾウ」を探しに飛び立っていった。
ともだちだとヒワは言う。だけどそんなわけはないじゃないか、心の深いくらがりでゾウガメは呼びかける。 実際ゾウガメには「こえ」というものがない。ヒワの語りかける言葉に返事をすることができない。その上、ゾウガメはそうやってともだちになった小鳥たちが、みんないなくなっていくことを知っているのだ。 ヒワだって、いつかいなくなる。だったら、ともだちになどならないほうがいい・・・。 やがてヒワが姿を見せなくなり、最初は何とも思っていなかったゾウガメは、いてもたってもいられなくなり、地響きをたてながら島じゅうを探しまわった。そして、崖にあがり、海の向こうのはるか彼方に目をこらすのだった。
ともだちとは。かけがいのない存在とは。 ずっと一緒にいられること? なんでも話し合えるってこと? 長く生きるゾウガメにとって、ヒワの存在はあまりにもはかなく不確かなもの。だけど物語の中で、二人の強い思いはお互いの心に届くのです。 その瞬間、読者の心にはどんな気持ちが生まれてくるのでしょう。誰のことを思い浮かべるのでしょう。
ミロコマチコさんの描く、多くは語らないゾウガメの、でもその意思の強さを感じる表情。山のようにそびえたつゾウガメに対して小さく可憐に飛び回るヒワ。それらの絵の力がさらに心に迫り、読み終わった後も忘れられない1冊になりそうです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
![ヒワとゾウガメ](/images/4333026482_20140526113142_op1.jpg)
![出版社からの紹介](/images/shoukai_shuppansha.gif)
長く生きるものの宿命として、今までたくさんの友達を見送ってきたゾウガメは、そんな思いをするなら、もう友達などいらないと思っていた。だから、毎日、自分の甲羅に乗って、おしゃべりしにくるヒワのことがうっとうしくてならない。でも、ある日、自分と同じくらい長生きの「ゾウ」という生き物の存在を知り、ゾウガメは胸がおどった。そんなゾウガメのために、ゾウをさがしてくると言って、海のかなたに飛びたったヒワだったが、幾日も戻らなくて……。自分の身近にいる、かけがえのない大切な存在に、改めて気づかせてくれる作品です。
![ベストレビュー](/images/shoukai_bestreview.gif)
よかったです。
言葉を交わすことが出来なくても、友情は確かに存在するのだと、感じました。
ミコロマチコさんの大胆なタッチの絵が印象的で素敵でした。
ちいさな黄色い鳥「ヒワ」と、のっそり大きい「ゾウガメ」との、見た目的な軽さや重さだけでなく、寿命の長さなどもしっかり伝わってきました。
特に、
ゾウガメは こうらに ちいさな いしを のせてみた。
こうらが あまりに かるくて、たよりなかったのだ。
でも、つめたく うごかない こいしでは だめだった。
のところと、
対照的になっている
ヒワの かろやかな おもみを うけとめたかった。
くすぐったい あしを かんじたかった。
のシーンが特に好きです。
“くすぐったい あし”って、素敵な表現ですよね。
高学年から中学生くらいのお子さんたちに読んでみたいです。 (てんぐざるさん 50代・ママ 女の子24歳、女の子19歳)
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