![みどころ](/images/shoukai_midokoro.gif)
大きな赤い壁がありました。どこまでもずうっとつづいていました。 壁の中には動物たちが住んでいますが、壁がどこまでつづいているのか、誰がいつどうやって作ったのか、誰も知りません。気にする者さえいないようでした。 でも、知りたがりの小さいねずみだけはこう思いました。 「ふしぎだな、きになるな。この かべの むこうに なにが あるんだろう?」
ねこやきつねやくまは、「かべはあたしたちを守ってくれるのよ。外にはこわいものがいっぱいあるから」とか、「むずかしいことを考えるのはやめろよ。そうすりゃハッピーになれる」とか、いろいろなことを言います。 くたびれたらいおんは「かべのむこうになんて、なにもない。闇だ。はてしない闇だ」とまで言います。 でもある日、飛んできた空色の鳥といっしょに、壁をとびこえたねずみは……。
この本の作者、ブリッタ・テッケントラップは、ドイツ生まれの絵本作家で、『いのちの木』をはじめ、哲学的で美しい絵本を描いています。 圧倒的な存在感がある赤い壁と、壁を越えたあとのカラフルな世界は、ぜひ見くらべてほしい場面です。 「ほんとうのものを みる ゆうきが あれば かべは きえる。ぜんぶ きえたあとには きっと すばらしいせかいが あるはずだよ」という言葉が胸にひびきます。
もしかしたら「かべ」があることにさえ気づかずに暮らしているかもしれない私たち。 「かべのむこう」を知りたいと願う、ねずみの勇気と、希望を感じる結末が、心に小さな火を点します。 大人でも子どもでも、手元に置いておいて、ときどき読み返したい絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
![出版社からの紹介](/images/shoukai_shuppansha.gif)
おおきなあかいかべがありました。 いつからなのか どうしてなのか だれもしりません。 「ずっと あったのさ」 「わたしたちをまもってくれてるのよ」 「むずかしいことかんがえるのは、やめろよ」などと みんなはいうのですが、ねずみは かべのむこうのせかいが知りたくて……。
『手と手をつないで』の作者ブリッタ・テッケントラップの 明るい絵とともに 心にひびくお話です。
![ベストレビュー](/images/shoukai_bestreview.gif)
ずっと昔からある、高い壁。
この中にいれば安全だということも知っているし、深く考えなければハッピーなままでいられることも知っている。
でも、外の世界を見たい。知りたい。
何がこの小さなねずみを突き動かすのだろう。
付和雷同していては、大切なものを見失う。
自分の気持ちにウソをついて生きていくことになる。
知りたい気持ちを諦めずにいたねずみは、真実を見つけることができたのだ。
対照的な年老いたらいおんは、なぜ最後まで壁を越えなかったのだろう。
推測なのだけど、もしかしたら、若いころに壁を越えようと散々チャレンジして、諦めてしまった過去があるのかもしれない。
大人が読むと、今の世の中を象徴しているかのようで心が痛い。
見ないふりしてないか、諦めてしまってないか。
私たちの世界に立ちふさがる壁も、越えることができるのかな。
表紙カバーの下に、答えがあるような気がします。
ブリッタ・テッケントラップの美しい絵が、希望を与えてくれます。 (ぐるさん 40代・その他の方 )
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