![出版社からの紹介](/images/shoukai_shuppansha.gif)
最近「ちびくろさんぼ」が復刻されて話題になりました。私たちが子どもの頃、30年も昔に読んだものとはだいぶ絵の感じが違っているように思いますが、やはり懐かしいという気持ちに変わりありません。トラがぐるぐる回ってバターになってしまうところなどは、まさに絵本ならではのおもしろさで、今の子どもたちが読んでも100点満点の楽しさであること間違いなし。そうやって親から子へ、子から孫へ、永く読まれつがれていくことが絵本の一番の魅力ですね。 話変わって落語絵本。 ひところ「じゅげむ」が子どもたちの間で大人気とになり、絵本もずいぶん刊行されました。有名な「じゅげむ」や「時そば」などは古典落語と呼ばれるものです。本シリーズはすべて桂三枝さんの創作落語がもとになっています。つまり新作。三枝さんおっしゃるところの「環境落語」でありまして、自然環境や生活環境、社会環境などに思いを馳せたお噺(はなし)ばかり。それぞれ動物が主人公のお話となっています。 第一弾は、大阪のミナミを流れる道頓堀川にすむカメの親子のお話。道頓堀川といえば、阪神タイガースが優勝するとファンが一斉に飛び込むことで有名な川です。ゴミは捨てるわ、人は飛び込むわ、カーネルサンダース人形は沈めるわで、カメ吉は「こんなきたない川にはすめない」と出ていく決意をし、お父さんガメに別れを告げて旅立ちます。やがてカメ吉の孫の代になり、道頓堀川に帰ってくると、たくさんのサカナたちが泳ぐ、澄んだ美しく青き川に変貌しています。それは何故かというと……これがオチになっていますので、読んでからのお楽しみにしておきましょう。 ところで、親子の会話の中でとても印象的な言葉があるのでご紹介しておきます。 この地球はご先祖さまから受け継いだものやない。 頂いたものでもない。 子や孫やひ孫や、未来の人たちから預かっているものや…… 私たちは、未来の人々から地球を預かっている――目からウロコ、素晴らしい発想だと思います。落語らしく笑えるシーンもいっぱいある本シリーズ。親子で笑いながら、大切なことを子どもたちに感じてほしいと願っています。
![ベストレビュー](/images/shoukai_bestreview.gif)
だじゃれを駆使した面白い文章は、三枝さんならでは。
だが訴えていることは、環境汚染の深刻さについてで、非常にシビア。まさに、絵本を使った環境問題への痛烈なアピールである。大阪を愛し人類を愛する三枝さんの嘆きと訴えが心うつ。そして鋭い批判を、だじゃれとユーモアのオブラート包む優しさは、さすがである。
本当に理解できるのは、三年生ぐらいからかも。 しかし、低学年でも本当に理解はできなくとも、環境汚染が生物にあたえる影響について、考える機会になってよい。言い換えれば、小さい方かたから、お年をめした方まで、年齢に応じた深さで捉え方が出来る本であり、けっして、子供だましの娯楽本ではない。是非、学校の図書室や図書館で揃えていただきたい本である。
ただ、大阪や道頓堀川を知らない子供だと、反応が悪くて、もどかしい。私は関西人だが、子供達は関東で育った。読む前に、道頓堀や阪神タイガースファンの熱狂ぶり、グリコの看板などについて、一通り説明したが、どうもピンとこないらしい。出来れば、テレビなどで道頓堀での熱狂騒ぎを見た後に読むなどの演出が欲しい。また、ボケとつっこみの文化が浸透してないので、思ったところで笑いがとれず、拍子ぬけした。やはり文化の違いは大きい。だがオチも強烈なので十分読み応えはある。
絵もユーモラスでシンプル、シビアなページは深刻に描かれており、表現力があって、文章にピッタリあっている。
文章が長く、関西弁なので、読み聞かせにはかなり技術が必要。 (もにいのさん 30代・ママ 男の子7歳、女の子3歳)
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