クリスマスがやってきて、北の国のどうぶつの子どもたちもそれぞれおくりものをもらいました。 サンタ=クロースのおじいさんは北の国にすんでいるので、ここの子たちから順番におくりものをくばっていくのです。 なかでも白うさぎの子“ましろ”は、いちばん先にもらいました。でも、おおきなお菓子をぺろっと食べ、もっと他のものがほしくなった“ましろ”は、しろい体に炭をぬりつけてべつのうさぎの子のふりをすることにします。 明け方、北の国にかえってくるサンタ=クロースのおじいさんを待ちかまえて、ましろが、さいごにもらったおくりものとは・・・。
おくりものを手にいれたあと、ましろは炭をおとそうとして、払ってもこすっても黒色がとれないことに、急にこわくなります。 「どうしよう。ぼく、ほんとに“ましろ”じゃなくて、べつのうさぎになっちゃったのかしら。」 ましろは泣きながら「(このおくりものを)かみさまにおかえししておこう。土のなかへうずめて。」と思いつきます。 その、かみさまにおかえししたおくりものは、一年でぐんぐん大きくなり、りっぱなもみの木のわか木になり・・・ ある日もみの木のはやしのなかで、一本だけきらきら光かがやく、うつくしい木になります! ふしぎなことに、そのもみの木には世界中の子どもたちにプレゼントできるほどのおもちゃがなります。 そして、クリスマスが近づくと、木になったおもちゃやベルの音が鳴りひびくのです。
ましろのうそと、後悔。いつしかりっぱなもみの木を見守り、サンタ=クロースのおじいさんにわけを話して、もみの木からプレゼントをとるお手伝いをするよろこびを、絵本を手にする子どもたちは、じぶんのことのようにドキドキわくわくしながら味わうことでしょう。 佐々木たづさんのクラシックな言葉がうつくしい。そして画家・三好碩也さんが描き出す、ユーモラスなましろと、聖夜にぴったりのしんしんとしずかでおごそかな空気が印象深いクリスマスの絵本。 初版1970年、時をこえて読み継がれるロングセラー絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
サンタクロースからもらったおかしを食べてしまった子うさぎのましろは、またほしくなってもらいにいくのですが・・・。
○あらすじ クリスマスの日、白うさぎの子「ましろ」も、サンタクロースのおじいさんから贈り物をもらいました。 けれど、もっと何かほしくなったましろは、黒うさぎになりすまして、もう一度おじいさんに会いにいきました。 おじいさんは、ましろに、小さな「たね」をひとつくれました。 しかし帰り道、ましろは、おじいさんに嘘をついたことをくやみ、たねを神様に返そうと、雪をほって、森の土の下に大切にうめました。 やがて春がきて、たねをうめたところから一本の木がのびだしました・・・。
○編集部より 1970年の刊行以来、毎年クリスマスが来るたびに読み継がれてきた絵本です。 子うさぎ・ましろとサンタクロースのおじいさんのやりとりのなかに、こどもと大人の、あたたかな関係がみえてきます。
サンタさんからもう1つプレゼントをもらいたくて、体に炭をこすりつけ、別のうさぎになりすまして、うそをつく子うさぎのましろ。
子どもは、時に、バレバレのうそや言い訳をすることがあるものです。自分自身の幼い頃にも覚えがあります。ましろのように、動機や理由は、本当に子どもらしい純粋なものなのだけれど、大人は、その気持ちを汲み取ってあげようとする前に、「うそはいけない」と、正義を盾にして、頭ごなしに叱りつけてしまうことが多々あるのではないかと思います。
うそと知りながら、黙ってそれを受け入れ、ましろに種を手渡すサンタさん。子どもの「芽」を摘まない、というのはこういうことなのかと、目の覚める思いでした。その芽がやがて立派な若木に成長し、こんなにも人を喜ばせることのできる大木へと育っていく。まさに子どもの将来を物語っているように感じました。
最初は、「欲張りはだめだよ」と言っていた娘も、
「このたね かみさまに おかえししておこう。土のなかへ うずめて」
ましろのこのセリフに、にっこり。そして、たくさんの金銀のベルや、おもちゃ、お菓子をつけた美しいもみの木を見て、「ぼくの木じゃなくて、かみさまの木だよ」というましろの言葉に、私も深い感銘を受けました。子どもも授かったものだと思うと、つい粗雑な心が出てしまうものですが、大事な預かりものをしていると思えば、もっと大切にしなければ、という心にもなれます。「かみさまの木だよ」というましろの真っ白な心を忘れないでいたいな、と思います。 (ガーリャさん 40代・ママ 女の子6歳)
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