こんちゃんは虫が大好き。なかでも一番好きなのはカブトムシ! そんなカブトムシと、もし一緒に遊べることができたら…?
冬のある日、こんちゃんは森で出会うのです。大きな大きな幼虫に。家に持ってかえって大事に育てると、夏も真っ盛りになった頃、地面の上に出てきたのは、自分とほぼ同じ大きさになったカブトムシ。こんちゃんは「カブトくん」と名付けます。
カブトくんは、食いしん坊。大きなスイカをシャミシャミ食べます。 朝は日曜日のお父さんみたいになかなか起きてきません。 力持ちだけど体は軽くて、羽を上手に使って縄跳びができて、お風呂は上手く入れません。
…と、ここまで読んでいるうちに、虫の苦手なママも思うはず。 「カブトくんと一緒に遊ぶ子どもたちの楽しそうなこと!」 それがどれだけ嬉しいことなのか、伝わってくるのです。(カブトくん、ちょっと大きすぎるけどね)
だけど、カブトくん。夜の街に飛び出してみて思います。 「とっても明るいけど、美味しいものはなさそうだなあ」 ちょっと元気がなくなってきて…。
そうですよね。カブトくんの本当にいるべきところはここではないのかもしれません。こんちゃんだって、わかっています。だって、本当にカブトくんのことが好きだから! こんちゃんの決心は簡単ではないけれど、それはとっても大事な経験です。
『カブトくん』は昆虫が大好きな作者タダサトシさんが初めて手がけられた絵本だそう。子どもの頃のワクワクした思いをベースに作られていると聞いて納得です。その興奮と喜びが素直に表現されている絵とストーリーに、子どもたちはもちろん、周りの大人だって巻き込まれていってしまうのです。食わず嫌いと言わず、ぜひ親子一緒にその喜びを味わってみてくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
昆虫の大好きなこんちゃんは、森で見つけた特大のカブトムシの幼虫を、大事に庭で飼っていました。するとある晩、巨大なカブトムシが、地面から顔を出したのです…。
“カブトくん”とはストレートな題名で、すぐに虫好きの息子の目に留まりました。作風も子供の使うクレヨンや水彩のような絵の具で親近感が湧きます。
家では今年初めてカブトムシを飼ったんですが、秋に差し掛かる頃すべて死んでしまいました。でも数匹の幼虫を残してくれていたのがわかった時は息子もとても喜びました。その幼虫ももう直径4cmくらいに成長しています。
しかしこの絵本に登場するカブトムシの幼虫はそんな比ではありません。成虫に育ったカブトムシがいよいよ土から出てきて「やったー!」と歓声を上げた“こんちゃん”と等身大で、顔にいたっては“すいか”と変わらない大きさでびっくりです。
“すいか”にかぶりつく場面で「カブトムシはすいかを食べると下痢するよね?」と言うと「それはメスだけでしょ!」と虫博士気取りの息子にダメ出しされてしまいました。
でっかいカブトムシと一緒に公園で遊んだり、お風呂に入ったりするのはきっと、作者の幼い時の夢なんだろうと楽しさがストレートに伝わってきて、息子も喜んで見ていました。湯舟にひっくり返って浮かんでしまったカブトムシを見て「そうなるわな」と笑いながら納得してしまいました。
でもやっぱりカブトムシを森に帰そうという部分になると少し寂しさもありますが、また遊ぼうと約束できましたから、家のカブトムシとも来年また会えると約束できたようで、楽しく読むことができました。
作者の初めての絵本ということですが、今後も虫好きを魅了する作品に期待しています。 (伴門陶汰さん 30代・パパ 男の子5歳)
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