おじさんが持っているのは、黒くて細くてりっぱな傘。出かける時は、いつも傘を持って出かけます。少しくらいの雨はぬれたまま、もう少しふると、あまやどり。おじさんはけっして傘をさしません。なぜって? それは傘がぬれるからです!
ある日、おじさんが公園でやすんでいると、雨がぽつり。小さな男の子がおじさんのりっぱな傘を見て、入れてほしいと言うけれど、おじさんは聞こえぬふり。男の子はお友だちのかさに入れてもらって、歌いながら帰っていきました。
「あめが ふったら ポンポロロン あめが ふったり ピッチャンチャン。」
その歌をきいているうちに、おじさんは……。
雨の日になると思い出す、佐野洋子さんの名作絵本『おじさんのかさ』。大事な傘を大切にしすぎて、いくら雨がふっても決して開こうとしないおじさんの姿は、滑稽であり、愛らしくもあり。けれど、子どもたちが歌っていた歌を口ずさむうちに、大事なことに気がつくのです。大人になったって、まだまだ知らないことや、わかっていないことなんて、たくさんあるのかもしれませんよね。とっても嬉しそうなおじさんの顔を見ながら、子どもたちも嬉しくなってくるのです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
内容紹介 雨の日におじさんが出会った素敵なできごと りっぱなかさがぬれるのがいやで、かさをさそうとしないおじさん。ある雨の日、子どもたちの歌をきいたおじさんは、はじめてかさを広げてみました。すると……。 著者紹介 ■佐野洋子(さのようこ) 北京に生まれる。武蔵野美術大学デザイン科卒。1967〜68年にかけて、ベルリン造形大学においてリトグラフを学ぶ。主な絵本作品に、『だってだってのおばあさん』(フレーベル館)、『わたしのぼうし』(ポプラ社、第8回講談社出版文化賞絵本賞受賞)、『100万回生きたねこ』『わたしクリスマスツリー』(ともに講談社)などがある。『ふつうがえらい』(マガジンハウス)などエッセーも多数。
「わたしのぼうし」と同じくらい好きな作品。ぼうしだったり、かさだったり、誰にでも、心の底から愛着を抱いている大切なものってありますよね。かたちに関係なく、大人でも、子どもでも、「大切」と思う気持ちに変わりはないと思います。
おじさんにとって、黒い傘がまさにそんな存在。でも、大切に思うあまり、雨の日に傘をさせません。傘が濡れてしまうのがいやだからです。その気持ちもまたわかるなぁ、と思いました。
子どもだったら、シールを貼らずにしまっておきたい、という感じかな? 私の場合、素敵な子供服をクローゼットに掛けて眺めているうちに、子どもが大きくなってしまった(!)なんてことも。
でも、使ってこそ、「物」なんですよね。それでこそ特別な愛着もわき、思い出にも残る。
おじさんにそのことを気づかせてくれたのは、雨の日に楽しそうに傘を差す子どもたちでした。
子どもって、雨が大好きですものね。
「あめが ふったら ポンポロロン あめが ふったら ピッチャンチャン」
本当に子どもは純粋に雨の音を楽しんでいるんだろうな、と思います。
学校帰りに濡れてはかわいそう、と車で迎えに行ったら、「せっかくお友だちと楽しくぴちゃぴちゃやってたのに!」と、言われてしまった日のことを思い出しました。
雨の日が楽しくなる絵本です。 (ガーリャさん 40代・ママ 女の子6歳)
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