ミス・ヘスターの飼っている犬、フリッツはいとこのマーンスに6回も噛み付いてしまう様な犬です。 ある日、留守番を頼まれた近所の少年アラン。午前中はソファーに噛み付かない様にしっかり見張りながら、一時間程うとうと。その後午後の散歩に出掛けたアランとフリッツ。 そこに現れた看板。 「ぜったいになにがあっても犬を庭園の中に入れてはいけません。引退した魔術師アブドゥル・ガサツィ」。 慌てて引き返そうとしたアランをよそに、フリッツは当然中に入っていってしまいます。恐る恐る中に踏み込んだアランの見たものは・・・?本当にありそうな、なさそうな、不思議なお話です。
オールズバーグと言えば去年のクリスマスにトム・ハンクス主演の映画化で話題になった「急行北極号」の作者。美しく懐かしい様な深い色合いの絵とストーリーが印象的です。日本では村上春樹が彼の絵本の全翻訳を手がけているのも話題。このお話は彫刻家から絵画に転向して手がけた初の絵本だそうです。リアルなんだけど魔法にかかったような・・・そんなオールズバーグの魅力満載です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
ぜったいに、何があっても、犬を庭園に入れてはいけません―引退した魔術師ガサツィ。ふしぎな庭で少年が体験した奇妙なできごと。
上手いな〜!
表紙絵のトリミングされた庭木郡とタイトルの“魔術師”&“庭園”。
ただ者の庭じゃない雰囲気が漂っています。
絵はお馴染みのモノクロ。
えもいわれぬ世界の入り口を感じさせてくれます。
この作品は、絵のみならずお話の構成が良い。
イライラさせられる躾のなっていないブルテリア犬フリッツ。
読んでいて、この犬のお守りに最初から手こずらされそうな主人公アラン・ミッツ少年が心配でした。
これが伏線となって、いよいよ昼寝後の散歩でアランが目にする“引退した魔術師アブドゥル・ガサツィ”の敷地入り口の立て札。
ここから、どれだけ広い敷地に住んでいるのだろうと呆れます。
と同時に、これだけの敷地の住人であると言うことは、相当の名だたる魔術師であったと、憶測を深めさせられます。
見事にオールズバーグさんの術中にはまっていたのです。
アランの制止を聞かずガサツィ氏の敷地に、入り込んでしまう分別の無いフリッツと責任感から焦るアランの対照的な様子。
そして、ガサツィ邸正面の描かれたページの威圧感。
迎い入れるガサツィ氏の存在感。
子どものアランにおもねることもない計り知れぬ不気味さ。
ひたひたと恐怖感が忍び寄ってきます。
後半のアランの心情を思うと気の毒でなりません。
そして、ラストでまたやられました。
私は、魔術師の力を信じます。
皆さんは如何でしょうか?
このオールズバーグさんの作品も虚を衝かれるエンディングに、最終ページをなかなか閉じられませんでした。 (アダム&デヴさん 50代・ママ 男の子12歳)
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