船の雑用係をしていた少年が、生焼けで水夫たちに「おもり」とあだ名されていた揚げパンを、おいしく素敵に改良した物語。実話。
1847年6月22日、という日付までハッキリわかっている「ドーナツの穴の発明」。発明者の名前も、その人生も、ドーナツの穴の発明者をめぐる紛争も、全部、わかっている。
こんなに明確に由来がわかるお菓子は珍しいのでは。
しかも、パン屋さんやお菓子屋さんではなく、船の中の台所で、雑用係の少年が開発した。専門家ではなかったから、斬新な発想が試せたのかもしれない。
それにしても、ドーナツが発明される前は、生焼けの揚げパンを食べ続けていたという。誰かどうにかしようとか、別のメニューにしようとか、思わなかったのだろうか。過酷な海の仕事で、体調不良になったら困るのでは?
ドーナツの話も面白かったが、船のなかの生活の話も面白かった。波で揺れる台所で、毎日揚げ物をする…スリルのある生活だ。