ニューヨーク市マンハッタンのウエストサイド地区に、かつて「高架鉄道」と呼ばれた鉄道がありました。
この高架鉄道は1930年代に建設され、1980年に貨物路線が廃線となった後、取り壊される予定でした。
その高架路線の跡地は、2009年6月9日、公園として生まれ変わり、マイケル・ブルームバーグ市長などが出席して開園式典が行われたのです。
ハイライン・パーク(High Line Park)と名付けられたこの公園からは、ハドソン川(Hudson River)が見渡せ、ニューヨーク産業史の面影もかいま見ることができるのです。
そのハイライン・パークをモデルにしたのが、この絵本です。
物語は、
「むかしむかし、あるところに、庭のない街がありました。
庭どころか、1本の木も、小さな草むらさえもみあたりません」
という書き出しで始まります。
絵も、暗く、コンクリートジャングルというに相応しいもので、もちろん、緑はありません。
そこに登場するのが、主人公のリーアム。
古い鉄道の下を歩いていたら、線路へ上がる階段を見つけ、駆け上がるとそこには、線路と枯れる寸前の草木があったのです。
リーアムは、その草木の面倒をみるようになるのです。
すると、草木は、自らの意志を持つかのように拡大して、鉄道路線を全部埋め尽くすのです。
一冬越し春になると、草木は、もっといろいろな所に生えるようになります。
すると不思議なことに、リーアムのように面倒を見る人達が現れ、緑の街にと変身を遂げるのです。
最初と最後のページは、同じ街なのに、全く別物。
自然の力の凄さを感じずにはいられなくなることでしょう。
実際のハイライン・パークの写真を見ると、確かに高架路線が、緑溢れた長く続く公園になっています。
そんな実話に基づく話だからこそ、創作にはない魅力に溢れていて、読む者をぐいぐいと引き込んでしまうのでしょう。
自然の営みを考えるにはうってつけの内容で、咋今の環境問題に関心を持つ糸口になるような側面もある絵本だと思います。
絵自体もとても綺麗なので、見るだけでも楽しむことのできる完成度の非常に高い絵本としてオススメします。