幻想的な物語の中に恋する若者の苦悩と一途さを描いた作品です。
人が入れないという城に住む魔女は呪文で獣をおびき寄せてはそれを食べています。
人は城に近づくと魔法で動けなくなってしまいます。
城に近づく若い娘は小鳥に変えられて鳥かごに閉じ込められてしまいます。
怖い設定ですね〜。
恋するヨリンデとヨリンゲルは呪文で城に引き付けられたのでしょうか。
恋する二人は深く愛し合っていながら、自分たちの将来に不安を持っています。
若いが故の恋の重さのうつ状態。
いろんな思いが浮かびます。
二人があまり幸せそうではないからです。
そして、ヨリンデはフクロウの呪文で夜鳴きウグイスに変えられて、魔女に連れ去られます。
ヨリンゲルの試練が始まります。
知らない村で羊の番をしながら、城に入る手立てを探りますが、フクロウに合うこともできません。
救いは夢のお告げ。
ヨリンゲルは「真珠のついためずらしい赤い花」を見つけ出し、魔法をやぶって城に入り、ヨリンデを人間に戻すことができました。
不安だった二人の恋も、その壁を打ち破ったのでしょう。
二人はいつまでも幸せに暮らしました。
この物語にはいくつかの矛盾と暗示があります。
私はツァヒエルを魔女の弟子のフクロウとして読んだのですが、フクロウが魔女が姿をかえたものだとしたら、ツァヒエルは何者なのでしょう?
ネコやフクロウに姿を変える魔女は、城に獣や人間を引き寄せておきながら、人間は食べなかったのでしょうか?
ヨリンゲルによって助け出された7000の若い女性に恋人はいなかったのでしょうか?
深読みすれば決して子供向けの童話ではありません。
ヨリンデとヨリンゲルの無事を喜び、良かったよかったで終われば児童書でしょうが、登場人物といい、幻想的な設定のお話だけにいろいろなことが考えられる「童話」です。
グリムの書いた意図はどこにあったのでしょうか。