なんとも奥深いというか、後味の悪いというか、心に衝撃の走る昔話です。
一匹の猿が山から出てきて、海を眺めている。
それだけの情況劇場ですが、司修さんの即物的な絵がさらにこの昔話を掘り下げているように思います。
海の情景に感動して、ついつぶやいた猿の独り言。
それに返事をした蟹。
猿は自分の世界を壊されたと思ったのでしょうか。
蟹が返事したことを突き止めた猿は、なんと蟹を石でつぶしてしまいます。
司さんの絵のおかげか、残酷さは伝わってこないのですが、猿の感情で潰されてしまった蟹は明らかに被害者です。
蟹をつぶした後に、猿が独り言を繰り返しても、もう返事をする者はいません。
もう一度独り言を始めた猿が感じたのは孤独感。
自分で蟹をつぶしておいて、寂しいからと潰れた蟹をダンゴにした猿はあまりにも身勝手。
それでも、だんごはまた、弱いながらも返事を繰り返します。
話はそこで終わっています。
その後、猿はどうしたのでしょうか。
話の内容にしては唐突に終わる物語。
子どもに読み聞かせするのは冒険のような気がします。
高学年、中学生ならばどう考えるでしょうか。
世間に猿は多いけれど、蟹さんのような人は見かけない。
潰されても猿のために返事をするなんて、アリエナイ包容力。
お話の筋を読み違えているでしょうか?