【あらすじ】
ゆうすげ村にある小さな旅館は、年を取ったおかみさんが一人で切り盛りしています。この旅館には実にいろいろなお客様がお泊りになります。中には人間ではないお役様もたびたび訪れまして…
ひとつひとつ大切に描かれた旅館の物語、12話を収録。
【感想】
こんな旅館があったら、是非とも行って、泊まってみたい!
長年、いろんな体験をしているおかみさんは、さすがに人間以外のお客様にも動じることなく、普通に接しています。接客業の鑑。年をとっても元気で、好奇心がいっぱいで、キラキラ輝いているような、そんな素敵な熟女です。こういう風に楽しく年をとりたいものです。
現代のおとぎ話。ちょっと懐かしい、昭和の匂いがする旅館にほっと一息つきながら、上質のファンタジーを楽しめる作品。一つ一つが昔話のようだけど、最後にはしっかり現実に戻してくれる安全な旅行が楽しめる。
私は旅行はしないのですが、この本を読むと、旅行に行ったような気分になってきます。春夏秋冬、一年間の楽しい旅行を、旅館のおばさんと一緒に楽しんだ気持ちになります。日本にはこういう素敵な伝統や、行事があったなあと、ほのぼのします。
中でも一番好きな話は「帽子をとらないお客様」。鬼のお客様のお話。
節分の時期に鬼がどういう気持ちになっているか、いろいろな空想ができて楽しい。そしてちょっともの悲しいお話。鬼をテーマにしているのに、妙にはかない雰囲気があり、不思議な感じがいたします。