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右から読んでみて
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投稿日:2024/10/06 |
この『みしのたくかにと』は、2022年1月に亡くなった児童文学者の松岡享子さんが、
1972年に刊行された作品で、発表当時は「みしのたくかにとをたべた王子さま」でした。
その作品がタイトルを変え、新たに刊行されたのが1998年ですから、
長く読み継がれている童話といえます。
このお話を知ったきっかけは、
<スーパー書店員>である森田めぐみさんの『書店員は見た!』という本で、
その中で、森田さんが子育てに悩む人への一冊として
この本をすすめていたことから。
なんといっても、このタイトル、『みしのたくかにと』が気になります。
どういう意味? って、誰もが思うのではないかしら。
ヒントは、昔の読む方。
昔は横書きの文章って、右から左に読んでました。間違って、そんな風に読んだのが王子さま。
今の読み方にすると、ね、「とにかくたのしみ」ってなるでしょう。
ある国の王子さまがとっても窮屈な生活を強いられていて、
たまたま村に出向いた時に「とにかくたのしみ」と書かれた立て札を見つけます。
でも、王子さまはそれを反対から読んでしまったのです。
「みしのたくかにと」って何だろう。
この立て札を立てたのは、村のふとっちょのおばさん。
何かわからないタネを見つけて、育てていたのです。だから、「とにかくたのしみ」。
このおばさんのおかげで王子様は元気になるお話。
子供には無理強いはしない、自由にさせるのが一番、
それでどんな大人になるか、「みしのたくかにと」。
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寄り道してもいいんだよ
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投稿日:2024/10/03 |
2024年の課題図書「中学校の部」に選ばれた一冊。
『アフリカで、バッグの会社はじめました』という長いタイトルに
「“寄り道多め“仲本千津の進んできた道」と、これまた長い副題がつきます。
書いたのは、雑誌の記事などを書くライターの江口絵理さん。
女性二人の名前があってややこしいが、
社会起業家である仲本千津さんが歩んできた道を江口絵理さんが丁寧な取材で
まとめたドキュメンタリー作品。
しかも、本には「“進路決定”ドキュメンタリー」なる言葉も並んでいたりします。
そんな本が中学生を対象にした課題図書に選ばれるということは、
現代の中学生はもうその頃から自分の将来の進路を考えはじめるのでしょうか。
でも、この本の主人公ともいえる仲本千津さんは、
最初からアフリカでバッグを作ろうと決めていたわけではありません。
どころか、そこにいたるまでは何度でもなりたいものを変えています。
最初は医学部、それは諦め、次は国連で働こうと、でも、まだぼんやり。
大学卒業して就職したのは銀行、それでも海外の憧れが強く、
アフリカ支援NGOに籍を移します。
そこで出会ったのが、アフリカのウガンダの国。
そして、会社経営なんかしたこともないのに、ウガンダでバッグを作って売り出すことに。
これが日本で大ヒットになったというわけ。
なので、この本は決して”進路決定“を求めるものでもなくて、
むしろ迷っていいんだよと肩をたたいてくれる作品になっています。
ただ、仲本千津さんの素晴らしいところは、常に前を向いていたこと。
そんな勇気をくれる、一冊です。
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世の中そんなにうまくいくはずはない
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投稿日:2024/10/01 |
『星新一ちょっと長めのショートショート4』(理論社)。
表題作である「とんとん拍子」をはじめとして、9篇の「ちょっと長めのショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品に挿絵がついています)は、和田誠さん。
『ショートショートセレクション』シリーズの場合、ひとつのお話に一枚の和田誠さんの挿絵でしたが、このシリーズでは2枚あったりして、こちらも「ちょっと多め」。
表題作の「とんとん拍子」が面白い。
ある日青年は神社で<大凶>のみくじを引いてしまう。そこから。次々とおこる良くないこと。ついには、死期がせまる病にもかかってしまう。
実は青年はみくじを引く前に腕時計を拾っていて、その腕時計は何事もうまくいくという画期的な発明品だった。ところが、間違って配線が逆になった腕時計を青年が拾ったので悪事が続いたというわけ。あらためて配線を正しくしてもらうと、病も癒えるし、何事もうまく行くことばかり。まさに「とんとん拍子」。
この「とんとん拍子」を辞書で調べると、「物事がはやく思うようにはかどるさま」とあるから、いい言葉ではある。それを逆手にした物語の出だしは、さすがに星新一らしい。
もっとも、この青年、最後はそう「とんとん」とはいきませんが。
その他、強烈な媚薬を製造したせいでいろんなものに恋されてしまう男を描いた「ほれられた男」や西部を舞台にした男ふたりの奇妙なやりとりがおかしい「西部に生きる男」など、楽しい読書の時間を過ごせるはず。
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大人にこそ読んでもらいたい絵本
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投稿日:2024/09/29 |
この『戦争は、』は、本のジャンルでいえば絵本にはいるのでしょうが、
絵本と言い切ってしまうには躊躇いがあります。
子供たちがその主な読者層である絵本ではないと思うからです。
もっといえば、この世界を動かす大人たちにもぜひ読んでもらいたい、
そんな作品です。
文を書いたのは、ポルトガルを代表する文学者であるジョゼ・ジョルジョ・レトリア。
絵は、彼の息子の画家アンドレ・レトリアが描いています。
ここには物語があるわけではありません。
「戦争は、」で始まる言葉の断片で綴られています。
はじまりはこうです。
「戦争は、日常をずたずたにする。」
この言葉の前に数ページ、絵だけで進んでいきます。
押さえた、やや暗めの色調の、どんどん怪しいものが大きくなっていく、
そんな数ページにドキドキしてきます。
でも、戦争はそういうことに気付かないまま起こってしまいます。
そういう不穏さが最初の数ページに凝縮されています。
「戦争は、憎しみ、野心、恨みを糧にする」
戦争は、そんな言葉すら飲み込んでしまうように思います。
「戦争は、」のあとに、どんな言葉を書くのか
まるで試されているような絵本です。
私なら、こう書きます。
「戦争は、人の心を殺してしまう」。
もし、あなたなら「戦争は、」のあとにどんな言葉を続けるでしょう。
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三尺マメ(ササゲ)登場!
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投稿日:2024/09/22 |
家庭菜園ではマメ科の野菜はとても重宝します。
なんといっても、品種が多いので、いろんな味覚を楽しめます。
ソラマメ、エンドウマメ、スナップエンドウ、ラッカセイ、
シカクマメ、インゲンマメ、そうそうエダマメも忘れてはいけません。
それぞれが育ち方も花の容姿も違うので、それもまた楽しみ。
そんなふうにたくさんの品種を育ててきて、
今までに育てたことがないマメ科ということで、今年挑戦したのがササゲ。
これもまた珍しく、莢がなんと30センチ以上にものびます。
ところが、「そらまめくん」シリーズで人気のなかやみわさんに
そのササゲが出てくる絵本があるのです。
タイトルは『そらまめくんとながいながいまめ』。
絵本に出てくる「ながいながいまめ」は、「さんじゃくまめ」と書かれています。
この絵本は2009年に出ていますから、この絵本を読んでいれば
「ながいながいまめ」にもあまり驚かなくて済んだかも。
いや、この絵本を読んでいたら、
さっそく「さんじゃくまめ」を育ててみるかと思いついたかもしれません。
絵本ではそらまめくんのベッドとさんじゃくまめくんのながいベッドの
どちらの方がすぐれているかの競い合いが描かれています。
なかやみわさんの「そらまめくん」シリーズの素晴らしいところは、
それぞれのマメたちの特長がうまく描かれている点。
ササゲは赤飯に使われたりするくらいですから、
赤っぽく描かれています。
実際ササゲを栽培して赤い豆を見たものとして、なかやさんの絵に納得です。
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玄冬ファンタジー物語
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投稿日:2024/09/17 |
毎年敬老の日が近づくと、読書推進運動協議会というところから、敬老の日に合わせた「読書のすすめ」というリーフレットが発行されます。
そこで紹介されている本の中の一冊に、角野栄子さんの『月さんとザザさん』という本がありました。
角野栄子さんといえば、『魔女の宅急便』などで知られる児童文学者で、児童書のノーベル賞ともいわれる国際アンデルセン賞も受賞していています。
だからでしょうか、この本はジャンルでいえば児童文学に区分されるのでしょうが、それを敬老の日の対象になるであろう読者に推薦しているのだから、選んだ人に拍手を送りたくなります。
児童文学だからといって、大人が読んではいけないという決まりはないし、ましてや少し大きめの活字は年老いた読者にはうれしい。
「ザザさんはおばあさんです。」という一文から、この物語は始まります。
ザザさんは朝から晩まで文句ばかりいうひねくり者で、ついには住んでいる「スミコさん」という名前の家まで家出してしまうくらい。家に名前があったり、家が家出したり、そんなことあるわけないと思ったら、楽しい物語に入っていけません。
そんなザザさんに空の月が話しかけてくれます。
月さんの話を聞くことで、次第にザザさんの心はほぐれていきます。
幼い頃の「父さんのいす」と出会ったり、そこで聞いた子守歌を思い出したりします。
一時期「玄冬小説」という言葉が流行ったことがありました。歳をとるのも悪くない、と思えるような小説をいったようですが、さしずめ角野さんのこの物語は「玄冬ファンタジー物語」といえそうです。
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とても愛くるしいがいこつ?
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投稿日:2024/09/15 |
詩人谷川俊太郎さんの活動は、もちろん詩作がメインではあるが、
絵本の出版も数多い。
案外絵本作家として谷川さんを知ることも多いのかもしれない。
絵本『がいこつ』も、谷川さんの詩から生まれた作品である。
初出は1999年に出た詩集『みんなやわらかい』。
この絵本が作られたのは2005年。(2024年6月に教育画劇から再刊)
絵本は文だけでなく、絵もとても大切な要素。
絵本『がいこつ』の場合、絵を描いたいるのは和田誠さん。
和田さんは谷川さんと多くの絵本を手掛けていて、この作品でもユニークながいこつの絵など、
文と巧みに競演している。
それでふと思うのだけれど、もしかしたら和田さんの絵でなかったら、
谷川さんの詩のもつ世界も随分ちがったものに見えるのだろうということ。
例えば、安西水丸さんの絵なら、どうだろう。
荒井良二さんなら、長谷川義史さんなら、酒井駒子さんなら、どうだろう。
多分、詩はどんな絵であろうと拒まないはずだ。
だから、絵本を読んだあとは、詩として読むといい。
岩波文庫から出ている『自選谷川俊太郎詩集』にも詩『がいこつ』は載っている。
詩を読んでどんな「がいこつ」を、あなたなら描くだろうか。
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大人も楽しめる星新一
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投稿日:2024/09/01 |
『星新一ちょっと長めのショートショート3(理論社)。
表題作である「悪魔のささやき」をはじめとして、9篇の「ちょっと長めのショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品に挿絵がついています)は、和田誠さん。
『ショートショートセレクション』シリーズの場合、ひとつのお話に一枚の和田誠さんの挿絵でしたが、このシリーズでは2枚あったりして、こちらも「ちょっと多め」。
一番面白かったのは「あと五十日」。
五十歳を過ぎたばかりの男のそばに突然やってきた、やせた陰気な男。
陰気な男がこうささやく。「あと五十日でございますよ」
それから毎日、陰気な男がささやく日数は減っていく。
男はそれまで何事もなく順調だった。仕事も、家庭も、自身の体力も。
この陰気な男は死神か? そして、毎日減っていく日数は?
これがもし自分に起こればどうするだろう。
子供たちならこのショートショートも楽しく読めるのだろうが、シニア世代ともなればつい自分のことのように考えてしまう。
恐ろしきかな、星新一。
もうひとつ、巻頭の「すなおな性格」も、シニア世代にとっては深刻な物語。
自分で何事も決められない男は、人生の岐路のたびに占い師の予言を素直に聞いて生きていく。失敗もすれば成功もする。占い師の予言のままに人生を歩んできた男は、これでいいのかと立ち止まり、そして向かった先は…やはり占い師。
星新一のショートショートは子供だけでなく、大人はより楽しめます。
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これはもともと上方落語の噺
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投稿日:2024/08/25 |
落語絵本といえば、絵本作家川端誠さんが数多く作品を出していて、
何冊か楽しく読ませてもらいました。
この『千両みかん』も「絵本で落語!」とあるように、
落語の噺を絵本にしたものです。
文を書いたのが、もとしたいづみさん。絵本と童話の作家です。
絵は長谷川義史さん。
「千両みかん」という噺が、もともと上方落語であったところから、
関西出身の長谷川さんが描くことになったのでしょうか。
表紙の青白い顔をした若旦那がうれしそうにみかんを食べている姿など、
ここでも長谷川さんの関西風の笑いにあふれています。
ところで、この若旦那がどうして青白い顔をしているかですが、
若旦那、みかんが食べたいばかりに寝込んでしまっているのです。
この大店の番頭が若旦那の病気がみかん欲しさだと聞きつけて、
ならばさっそくみかんを買ってきますと安請け合いをしたばかりに騒動が起きます。
昔はいつでもみかんが食べられるわけではなく、
夏にみかんはどこにもありません。
もし、みかんを探せなければ、安請け合いした番頭は罪に問われると脅され、
番頭は町じゅうを探し回ります。
そして、やっと見つけたみかん。
その店の旦那は訳を聞いて、ならばタダで結構というところ、
番頭はここでも安請け合いをして、値段をつけてほしいと頼むのです。
そこで、ついた値段が、みかん一個千両!
さてさて、この噺のオチはどうなるか。
この番頭のなんともいえないバカ面は、
そういえば関西のお笑い芸人に似ていなくもありません。
長谷川さん、どなたの顔を思い浮かべて描いたのでしょう。
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あの名作漫画が絵本になりました
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投稿日:2024/08/18 |
この絵本の出版広告を見つけた時、正直驚きました。
漫画の神様・手塚治虫さんの代表作ともいえる『火の鳥』が絵本になったというのですから。
しかも、文と絵をかいたのは、鳥の巣研究家でもある絵本作家の鈴木まもるさんというのですから、
きっと鳥の表情とか上手くできているのでしょうね。
でも、手塚治虫さんの『火の鳥』の愛読者であれば、こう思うのではないでしょうか。
あの作品は過去から未来へとわたる大叙情詩でもあって、
そういったロマンがどう描かれているのかと。
鈴木まもるさんは1952年生まれで、中学生の時に手塚さんの『火の鳥』に出会ったといいます。
絵本『火の鳥』は、鈴木さんが手塚さんの漫画から受けた精神のような世界が描かれています。
つまり、手塚さんの『火の鳥』の物語からうんと離れています。
それでいて、手塚さんがあの作品で描きたかった核のようなもの、
それはきっと生命の大切さであり、人間があるべき姿を描いています。
手塚治虫さんの漫画『火の鳥』は、半世紀以上の時を経て、
絵本作家の鈴木まもるさんがこしらえた絵本『火の鳥』へとつながるのです。
そのこと自体が、手塚治虫さんが『火の鳥』に込めた思いといえます。
この絵本を読んだ子どもたちが、また新しい火の鳥を見つけることを願います。
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