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夏の雨さんの声

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自信を持っておすすめしたい この絵本で、つまんないを解消  投稿日:2024/07/21
つまんない つまんない
つまんない つまんない 作: ヨシタケシンスケ
出版社: 白泉社
ヨシタケシンスケさんは今や一番人気のある絵本作家である。
 注目をあつめたのは、第6回MOE絵本屋さん大賞を受賞した『りんごかもしれない』(2013年)。
 そのあとは、もう出す本出す本がベストセラーになる勢い。
 この『つまんない つまんない』は2017年5月、刊行された絵本。

 ヨシタケさんの絵本の面白さは、「発想絵本」と呼ばれることもあるように
 読者にいろんなことを考えさせてくるところにある。
 この絵本にしてもそうで、
 おもちゃにもテレビにもあきてつまんないと嘆いている男の子とともに
 つまんないをどのようにつまんなくしていくかを考えることになる。

 男の子は考える。「ずっとなにかが同じなのがつまんないのかも」って。
 それで、男の子は少しずつ座る場所を変えたらどうだろう、ズズズ、ズズって。
 でも、やっぱり面白くないな。
 そのうちに、つまんないというのはどういうことか、考えはじめる。
 「自分と関係ないからつまんない?」「自分の思い通りにならないからつまんない?」って。
 さらには、「一番つまんないのは何歳だろうか?」なんて考えたり。

 「つまんない」ということで、こんなに考えたこと、あったっけ?
 この絵本で「つまんない」を考えていくと、
 きっとつまんなくなっている自分に気がつくはず。
 これこそ、ヨシタケさんのマジック?
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自信を持っておすすめしたい 「くれよんのくろくん」のちいさい子バージョン  投稿日:2024/07/14
くれよんたちの きょうはなにをかこうかな?
くれよんたちの きょうはなにをかこうかな? 作・絵: なかや みわ
出版社: Gakken
絵本作家なかやみわさんといえば、
 やはり一番に思いつくのは「そらまめくん」シリーズでしょうか。
 そらまめの特長をいかしながら、実にかわいいキャラクターに仕上げています。
 なかやさんにはその他にもいくつかシリーズものがあって、
 「やさいのがっこう」シリーズとか「どんぐりむら」シリーズとかあります。
 この『くれよんたちのきょうはなにをかこうかな?』も
 「くれよんのくろくん」シリーズの一冊ともいえる絵本です。
 ただし、この作品は「ちいさい子のため」となっていて、
 読者は保育園や幼稚園に通う子どもたちを想定しています。
 もう少し小さい子どもでも楽しめそうです。

 10色のくれよん。
 くれよんたちは絵をかくのが大好き。
 この日もみんな集まって、真っ白な画用紙の前で何をかこうか思案中。
 真っ先に飛び出したのは、きいろくん。
 かいたのは、ふんわりふっくらのたまごやき。
 次かいたのは、ちゃいろくん。ハンバーグをかきました。
 次から次へと、みんなかきはじめます。
 白い画用紙がいつの間にか、たくさんの食べ物でいっぱい。
 そして、最後はくろくんがごましおのおにぎりをかいて、
 大きなお弁当の出来上がり。

 ちいさい子どもたちと、途中とちゅうで
 あれ? なにかな、とか、何ができるのかなと
 会話を楽しみながら読むといい。
 なんといっても、なかやみわさんの絵がかわいいから
 ちいさい子どもたちも夢中になること、まちがいありません。
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自信を持っておすすめしたい わたし、ピーマン好きですよ  投稿日:2024/07/07
うちのピーマン
うちのピーマン 作: 川之上英子・健 柴田 ケイコ
出版社: アリス館
 最近は夏野菜といってもスーパーなどでは一年中見かけますが、
 それでもやはり旬に食べる夏野菜ほどおいしいものはありません。
 しかも、種類も豊富。
 キュウリにナス、トマト、そしてピーマン。
 その形状こそ独特ですが、色鮮やかな緑はキュウリとともに
 夏野菜の代表格。
 そんなピーマンを絵本にしたのが、
 川之上英子さんと健さんの共作による『うちのピーマン』。
 絵を描いているのは、柴田ケイコさん。
 ユニークな絵を見て、すぐにわかるのじゃないかな。
 絵本でベストセラーになったあの『パンどろぼう』を描いた柴田さんです。

 柴田さんの描くピーマンを見ているだけで笑いがこぼれそうですが、
 お話も傑作。
 料理に使おうと冷蔵庫からピーマンを取り出したお母さん。
 ところが、切られるのが嫌なピーマンは徹底抗戦します。
 ピン芸をしたり、なぞかけをしたり、スーパーマンのまねをしたり。
 おしまいには、顔を真っ赤にしてパプリカのふりまでするのですから。

 夏野菜はどれもおいしいですが、
 その一方で苦手という子どももいます。
 ピーマンが苦手という子どもでも、この絵本を読んだあとなら
 食べられてそうかな。
 それとも、「ピーマンがかわいそう」って、もっと食べなくなるのかな。
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自信を持っておすすめしたい あくまでもちょっと長め  投稿日:2024/07/02
星新一ちょっと長めのショートショート(1) 宇宙のあいさつ
星新一ちょっと長めのショートショート(1) 宇宙のあいさつ 作: 星 新一
絵: 和田 誠

出版社: 理論社
『星新一ちょっと長めのショートショート1』(理論社)。
 表題作である「宇宙のあいさつ」をはじめとして、10篇の「ちょっと長めのショートショート」が収められた、児童書。
 装幀・挿絵(それぞれの作品にひとつ挿絵がついています)は、和田誠さん。
 『ショートショートセレクション』シリーズの場合、ひとつのお話に一枚の和田誠さんの挿絵でしたが、このシリーズでは2枚あったりして、こちらも「ちょっと多め」。

 ただこの巻の場合、表題作である「宇宙のあいさつ」「華やかな三つの願い」「夜の流れ」は確かに「ちょっと長め」だが、それ以降の「契約時代」からの7篇は普通の短さといっていい。目次のタイトルの扱いも、活字ポイントが少し小さめとなっている。
 だからといって、楽しめないわけではない。
 もしかしたら、「ちょっと長め」の作品よりも切れがいいかもしれない。
 「名判決」という、落語の「三方一両損」をもじったパロディものなど、なかなか面白い。星さんの作品として、時代ものというのも楽しめる。

 で、「ちょっと長め」の作品では、「華やかな三つの願い」が面白かった。
 失恋して世をはかなんだ若い女性。そこに現れたのは、悪魔。つまり、死んだあとに彼女の魂をもらいたいということ。
 但し。その前に三つの願いをかなえるという。
 彼女の最初の願いはスターになること。これは実現。
 次の願いはお金持ちになること。これも実現。
 さて、彼女の最後の願いは・・・。
 きっと悪魔というのも苦労の絶えない仕事だと思います。
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自信を持っておすすめしたい 本はどうやってできるのかな  投稿日:2024/06/30
このほん
このほん 作: かげやまとおる
出版社: 偕成社
もしこの絵本の読み聞かせをするなら、
 できれば印刷会社の人からしてもらうのがいかもしれない。
 何故なら、かげやまとおるさんが描いた絵本『このほん』は
 一冊の絵本ができるまでの工程でできているのだから。
 作者のかげやまさんは書籍の挿画とかを書いているイラストレーターですが、
 最初に働いたのは印刷会社だということで、
 一冊の本ができる工程についてはやっぱりよく知っているはずで、
 そういう人の説明を聞きながら、この絵本を読むとうんと楽しくなりそう。
 そう、例えば印刷会社に社会科見学なんかに行った時に、
 この絵本を開きながら説明を聞くとか。

 ある日、男の子が本屋さんの平台で表紙が開いている絵本を見つけます。
 何だろう?ってのぞきこんだ途端に、男の子は絵本の世界にはいってしまうという、
 この絵本はファンタジーです。
 男の子がたどりついたのは、
 たくさんの色でいっぱいのカラフルな世界。
 そのうちに大きなマシンが動き出し、
 ここはどんな世界だろうって思うにちがいない。
 大きな紙がたたまれたり、裁断されたり、押し付けられたり、
 ようやく気がつくはず。
 ここは本をつくっている世界だって。

 とってもきれいなそんな世界をのぞいてしまえば、
 本を大切にしないといけないなと思えるようになっているはずです。
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自信を持っておすすめしたい これは絵本? それとも詩集?  投稿日:2024/06/23
ここはおうち
ここはおうち 作: 谷川 俊太郎
絵: junaida

出版社: ブルーシープ
初めて読んだ「詩」は何だっただろう。
 やはり、宮沢賢治の「風ニモマケズ」だったかしらん。
 少なくとも、詩集などではなく、国語の教科書に載っていた「詩」だったにちがいない。
 授業の時に、「詩」の読み方とか教えてもらっただろうか。
 書かれている意味は、みたいなことを教えてもらっただけで、
 「詩」の読み方なんて誰も教えてくれなかったように思う。
 この『ここはおうち』は、詩人の谷川俊太郎さんが文を書いた絵本だが、
 文というよりやはり「詩」といった方がいい。
 「わたしのおうち」から始まって
 (いや、もしかしたらタイトルの「ここはおうち」から「詩」は始まっているかも)
 「わたしだけのおうち」「きょうはおでかけ」「わたしのまち」・・・と
 リズムよく続いていく。
 声を出して読むと、心地いい。
 難しい言葉があるわけではない。
 谷川さんの「詩」はなんと軽やかだろう。

 それにつけられた画家のjunaidaさんの絵を見ていると、
 「詩」の読み方は自由なんだと思い知らされる。
 上にもいくし、右からも見える。
 左から見ないといけなかったり、下にもいく。
 色はカラフル、あふれんばかり。
 谷川さんの「詩」の自由さに負けてはいない。

 もしかしたら、この本は絵本ではなく詩集なのかもしれない。
 あるいは、「詩」の教科書。
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自信を持っておすすめしたい 第55回講談社絵本賞を受賞したクリスマス絵本  投稿日:2024/06/16
クリスマスマーケット ちいさなクロのおはなし
クリスマスマーケット ちいさなクロのおはなし 文・絵: 降矢 なな
出版社: 福音館書店
第55回講談社絵本賞(2024年)を受賞したのが、
 降矢ななさんの『クリスマスマーケット ちいさなクロのおはなし』です。
 タイトルにあるとおり、これはクリスマスに読むのが一番いいですし、
 刊行もそれにあわせた2023年10月ですが、 
 賞の発表が4月でしたからそこはがまんしましょう。

 今回の受賞で初めて知ったのですが、
 作者の降矢ななさんは中欧スロバキアで30年以上暮らしているそうで、
 その地の風景や風習なりを絵本にして
 日本の子どもたちに伝えたいという思いがあったそうです。
 この絵本も、クリスマス前の街の広場で開催されるクリスマスマーケットで
 軒を並べるお店とかそこで働く人たちや買い物に訪れる人たちを
 とてもやさしいタッチの絵で表現しています。
 物語はそんなマーケットに捨てられてい黒い子犬と
 白い犬のぬいぐるみを持った女の子の心のふれあいを描いています。

 この絵本が刊行された10月にはイスラエルによるガザ地区への攻撃があり、
 降矢さんはとても心を痛めたそうです。
 6月3日の朝日新聞にその時の思いをこう述べています。
 「日常の幸せな気持ちを、今感じられるなら感じて、
 それを失わないように私たちは生きていかなくちゃいけない。
 日常を大事にして絵本をつくっていきたい」

 スロバキアであれ日本であれ、
 あるいは今も戦火のつづく世界の国にも
 ごくあたりまえのように幸せな日常があればいい。
 この絵本の裏表紙、女の子と子犬クロのあたたかなふれあいに心なごむ一冊。
 クリスマスにもう一度、読んでみたい。
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自信を持っておすすめしたい 韓国で「ママたちの育児書」として人気のあった絵本  投稿日:2024/06/09
また あえるよ
また あえるよ 作: ユン・ヨリム
絵: アンニョン・タル
訳: わたなべなおこ

出版社: パイ インターナショナル
少子化がとまらない。
 国は一生懸命多くの手当を支給し経済的支援に乗り出しているが、
 少子化は単に経済的な事情だけではないと思う。
 むしろ、子供を育てていくなかで心理的な支援が求められているのではないだろうか。
 少子化は日本だけにとどまらない。
 韓国でも事情は同じだ。
 その韓国で、この絵本『またあえるよ』は「ママたちの育児書」として支持されたという。
 書いたのは、1970年生まれのユン・ヨリムさん。(絵はアンニョン・タルさん)
 描かれているのは、「分離不安」という感情。

 子どもがお母さんの顔が見えないと不安になって泣き出してしまったり、
 逆に親が子どものことが心配で目が離せなくなったり。
 誰もが子育てをしている時に経験する感情だが、
 それでももしかして自分は、あるいは自分の子どもは重症かもしれない。
 つい、そんなことを考えてしまったりする。
 そんな人たちに、この絵本は「だいじょうぶ。また あえるから」と
 やさしく教えてくれる。
 「ママたちの育児書」と称賛される所以だ。

 それは「分離不安」だけでなく、
 育児中に起こるさまざまな不安も少しだけ心をゆるやかにすれば
 癒されることが多いことを示唆しているように思う。
 そういう心の支援が整ってはじめて、少子化という問題は改善の方向に行くのではないだろうか。
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自信を持っておすすめしたい 宇宙は広い、だから物語が生まれる  投稿日:2024/06/04
星新一ショートショートセレクション(15) 宇宙の男たち
星新一ショートショートセレクション(15) 宇宙の男たち 作: 脇 明子 ・ 島 多代
絵: 和田 誠

出版社: 理論社
『星新一ショートショートセレクション15』(理論社)。
 表題作である「宇宙の男たち」をはじめとして、13篇の「ショートショート」が収められた、児童書。
 装幀・挿絵(それぞれの作品にひとつ挿絵がついています)は、和田誠さん。

 宇宙を描いた小説や映画やドラマはたくさんありますが、その中には宇宙空間で遭難する人間の話が出てくるのは、やはり果てのない空間に放り出される恐怖が並大抵ではないからだろう。
 そういう恐怖とどう対峙するか、そのあたりが物語を生みやすくしているのでしょう。
 表題作の「宇宙の男たち」もそういう類の物語です。
 地球に帰還中のロケットに乗船している青年と老人。青年は操縦士で、長い期間宇宙で働いていた老人を連れ帰る役目を担っています。
 ところが、そのロケットに隕石が衝突して、航行不能になります。
 ここから二人のやりとりが始まるのですが、何か面白いオチがあるのではなく、静かな大人のドラマを見ているような展開となります。
 ショートショートとはいえ、外国映画になるような仕上がりです。

 「景品」というショートショートも面白い。
 色々なお店で配布されるサービス券を景品に換えてくれる機械の話ですが、まるで現代の「ポイ活」(色々なお店のポイントを貯めて利用するポイント活動のこと)風景を先取りしたような内容で、こういった先見性もまた星新一さんの魅了のひとつといえます。
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自信を持っておすすめしたい サイの活用方法教えます  投稿日:2024/06/02
めっけもののサイ
めっけもののサイ 作: シェル・シルヴァスタイン
訳: 長田 弘

出版社: BL出版
 絵本『おおきな木』や『ぼくを探しに』など
 シェル・シルヴァスタイン(1930〜1999)の作品は
 子どもだけでなく大人に広く読まれています。
 シンプルな線ですが、シンプルゆえに多くのイマジネーションがわいてくるそんな作風が、
 人気のもとなのではないでしょうか。
 この『めっけもののサイ』も、まるで一筆書きのように
 自由に線が躍動して、サイの魅力をいっぱい表現しています。

 原題は「Who Wants a Cheap Rhinoceros?」。
 「誰か安いサイいる?」ぐらいの意味だろうか。
 それを「めっけもののサイ」という日本語訳をつけた、
 訳者の詩人長田弘の言葉のセンスに脱帽します。
 で、「めっけもの」という言葉、あまり耳にする機会は少ないかもしれませんが、
 「掘り出し物」とか「思いがけない幸運」という意味があって、
 この絵本の場合、後者の意味もあるように思えます。
 だって、あの大きなサイを自分のものにできるのですから、
 これは幸運というしかないでしょう。

 この絵本にはサイの活用方法(?)がたくさん描かれていますが、
 一番気に入ったのが「おばあちゃんのドーナツづくりのお手伝い」。
 あのりっぱなツノにおばあちゃんがこしらえた生地を差し込むだけで
 ドーナツのできあがり。
 ちょうど、輪投げみたいに。

 絵本を読み終わったら、どんなサイの活用方法があるか、
 みんなで考えてみるのも、きっと楽しいだろう。
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