![出版社からの紹介](/images/shoukai_shuppansha.gif)
その夏、町をしきる柵がいつもより大きく見えた。柵の向こう側にあるものは何もかもが遠く見えた。ふたりの少女をへだてる高い柵。少女たちの友情は、やがて、その柵をこえ……。人種をこえた少女たちの交流を詩情豊かに描く。
![むこうがわのあのこ](/images/4895728188_20101203114119_op1.jpg)
![ベストレビュー](/images/shoukai_bestreview.gif)
2005年度のコールデコット賞オナー賞受賞作品である「かあさんをまつふゆ」のジャックリーン・ウッドソンの新しい邦訳なので読みました。
最近、こうした人種差別が背景にある絵本が多く出版されていますが、読む選択肢が広がるということは、非常に望ましいと思っています。
特に、さくま ゆみこさんが、積極的に邦訳され、埋もれている作品を読むことが出きるのは嬉しい限りです。
原題は、The Other Side、2001年の作品。
『そのなつ、まちをしきる さくが、いつもより おおきく みえた。
わたしたちは、さくの こっちがわに すんでいた。
さくの むこうがわには、しろい ひとたちが すんでいた。
「むこうがわに いっては だめよ。きけんですからね」
ママは、そう いっていた』
という書き出しで始まりますが、この一文で全てが分かります。
そう、人種問題の根底にあるものを描いているものです。
その柵が、実に象徴的な存在。
主人公の黒人の女の子、クローバーは、多くの黒人の女の子と遊んでいるのですが、柵の向こうにいるアニーという白人の女の子は一人ぼっち。
ある日、アニーは柵の向こうから、「縄跳びに入れて」と言ってくるのですが、サンドラという友達が、「だめ」と即座に断ります。
でも、クローバーはアニーのことが気になって仕方ありません。
お互いが、柵を越えてはいけないとママに言われているので、二人は、柵に腰掛けて話をするようになるのです。
そのことに対するママの「あたらしい ともだちが できたのね」という言葉が、何とも素敵です。
本当は柵なんか要らないのに、打破できない大人の世界に対して一石を投じた行為を肯定したママのような大人が増えれば、こんなわだかまりは無くなるはずです。
子ども達の純粋な気持ちに、感銘すること間違いありません。
人種に国境がないということ、そんなことをさり気無く伝えてくれる名作だと思います。
物語もさることながら、E.B.ルイスの描く絵は、光による表情の明暗や、風による洋服の動きまでも描写していて、実に生き生きとしたもの。
一見の価値のある絵だと思います。
読み聞かせというよりは、小学校低学年に、自ら読んで感じて欲しい作品としてオススメします。
ジャクリーン・ウッドソンの作品は、未訳のものが沢山あります。
書店に、ジャクリーン・ウッドソンの作品コーナーが誕生する位に、邦訳が進む日が来るのを期待しています。 (ジュンイチさん 40代・パパ 男の子12歳、男の子6歳)
|