小さなヤモは戦争にいったにいさんのかわりに市場へさくらんぼを売りにでかけます。戦争の中でも明るく力強く生きる人々を描く。 1996年度産経児童出版文化賞フジテレビ賞
1995年の作品。
作者の小林豊さんが、訪れたアフガニスタンの村を元にしており、小4の教科書(東京書籍)に掲載されているようです。
アフガニスタンと言えば、1979年末のソ連軍侵攻以来、タリバン、アメリカの侵攻を受けて国土の破壊が進行し、米軍が今も「対テロ戦争」を続けています。
現在も大量の難民(周辺国合計で約260万人)が発生している他、テロ、麻薬の問題など、懸念事項が未解決のまま残っているのですが、最初は、そんな国であっても人々は前向きに生きているというメッセージなのかと思って読みました。
物語は、
「すもも、さくら、なし、ピスタチオ。
はる。
パグマンの村は、はなで いっぱいに なります」
との書き出しで始まります。
夏になり、兄さんが戦争にいってるので、替わりに弟のヤモが、ロバのボンパーとお父さんと町に果物を売りに出かけます。
アフガンの喉かな光景があり、町も町人も実に大らかであって、異国風情を思う存分満喫できます。
ヤモが一人でさくらんぼを売るのですが、これなんか、同じ年代の子が商売をしてるのですから、感銘を受けることでしょう。
戦争で足を無くした人が出てきたり、町の食堂では、隣の人と戦争の話をしたりと、戦争の影は盛り込まれてはいるのですが、絵としては描かれておらず、あまり気にも留めませんでした。
果物を売った対価で、子羊を買い村に戻るのですが、夕日に照らされた帰り道も、実に美しい光景だと思います。
物語は、これで終わりと思いきやさにあらず。
最後のページに絵はなく、一文で終わるのですが、衝撃的な終わり方です。
大どんでん返しとは、正にこのこと。
あまりに強烈過ぎて、言葉を失ってしまう、そんな表現がピッタリ。
読んで感じて頂くしかないのですが、この作品は、その一文を伝えたいがために、それまでの文章が存在しているとさえ言える作品なのです。
続編として「ぼくの村にサーカスがやってきた」「せかいいち うつくしい村にかえる」がありますので、あわせて読むことをオススメします。
対象年齢は、小学校中学年以上が適切だと思います。 (ジュンイチさん 40代・パパ 男の子12歳、男の子6歳)
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