子どもの頃に見たオオムラサキに強い影響を受けた作者。長い年月の間に観察し、撮影した写真を通して、昆虫の生活と、雑木林や人間の生活の変化などを教えてくれる学習絵本。
2005年刊行。成虫(蝶)の姿が特に印象的だが、幼虫時代の姿も「勇壮」だと思った。赤ちゃん時代を終えると、頭に角が生え、脱皮をするごとに体も角も大きくなっていく。さなぎになる前には戦艦のような堂々たる体躯。大物になるだけあって、子ども時代から、特別な雰囲気があるように見えた。
雑木林の樹液に集まる虫の中でも、かなり大きな方だが、それでもスズメバチには遠慮する。とはいえ、生活が懸かっているので樹液を吸わないわけにもいかず、虫たちは怖い存在がいなくなったのを確認して、一斉にまた樹液にむらがるという。
著者が、虫たちをしっかり観察して、それぞれを尊重し、敬意をもって接してきたことが感じられる文章だ。
戦後、人間の生活がどんどん変わることで、雑木林が手入れされなくなり、そこに住む生き物たちに大きな影響を与えたという。人間も自然の一部で、お互いに影響しあっていることがわかった。
オオムラサキが作者に影響を与え、この本が読者に影響を与え、読者が自然に対して何らかの行動をする。
結局、人間は自然と関わらずにはいられないのだとわかった。
読み応えがあるので、大人にもおススメです。