この物語は、実話です。
鎌田實さんが、医師として関わったベラルーシで放射能被曝によって白血病になった少年の治療に関わった時のエピソードです。
今、このタイミングで再読して、複雑な思いになりました。
チェルノブイリの原子力発電所は、ロシアに攻撃を受けているウクライナにあります。
少年のいたベラルーシは、ロシアの同盟国であり、核兵器がロシアから移動されたとも言います。
この絵本のような、人の心を温かくするようなヒューマニズムはどこに行ったのでしょう。
今の状況では、人の心を結びつけるような思いやりの心の連鎖は望めないような気がします。
放射能は、人々を苦しめるのです。
核爆弾は人を破滅させるのです。
内容に入りましょう。
何事もなければしあわせのままのはずのアンドレイでした。
事故が起こったのは、離れた土地のチェルノブイリ。
風に運ばれた放射能の雨がアンドレイの人生を変えてしまいました。
鎌田先生の尽力をしても、アンドレイ少年は14歳で生涯を終えました。
その生涯の中で、奇跡的に口にできたパイナップルは至宝の味だったのではないでしょうか。
雪の降る町で、ひたすらパイナップルを探し求める看護師のやよいさんの熱意が、人の心を動かしたのです。
今のウクライナのことを思っていた時に、パイナップルが手榴弾の隠語であることが頭をかすめました。
そこまで、人の心が荒んでいかないことを祈りたいと思います。