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日・中・韓平和絵本 へいわって どんなこと?

日・中・韓平和絵本 へいわって どんなこと?(童心社)

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夏の雨

パパ・60代・埼玉県

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夏の雨さんの声

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自信を持っておすすめしたい ホームランを打てる人生なんてそうそうあるものではない  投稿日:2014/06/29
ホームランを打ったことのない君に
ホームランを打ったことのない君に 作: 長谷川 集平
出版社: 理論社
 ホームランを打ったことがない。
 たぶんホームランを打ったことのある人の方がうんと少ないのではないだろうか。
 ホームランを打てる人の条件、まず野球をやったことがある人、バッティングにセンスがある人、相手投手の調子がよくない時、あるいは風の強さ。
 だから、ホームランを打った人はとってもうれしいはずなのに、ちょっと照れくさい。笑いがこみあげてくるはずなのに、それを奥歯で噛みしめている。
 でも、そんなことどもも、あくまでも想像。
 だって、ホームランを打ったことがないのだから。
 それは人生でもそうかもしれない。
 ホームランを打てる人生なんてそうそうあるものではない。

 長谷川集平さんの絵本はいつも何かを考えさせる。
 大きなことのはずなのに、けっして声高に語るのでもない。絵も派手ではない。
 静かに、大切なことを話しかけてくれる。
 この絵本はホームランを打ったことのないルイ少年が町でかつて野球がうまかった仙吉にホームランの何事かを教えてもらう話だ。
 仙吉は交通事故にあって野球ができなくなって、今はリハビリ中。
 けれど、ルイにホームランの魅力をやさしく伝える。
 仙吉は野球ができなくなったことを愚痴ることもしない。ただ、野球の素晴らしさを話し、ホームランの美しさを語るだけだ。
 それでいて、静かに、だ。
 仙吉を別れたルイはそのあとでゆっくりとバットを振り続ける仙吉の姿を見る。

 仙吉がどうしてバットを振り続けるのかをルイは知っている。
 ホームランを打つために、だ。
 けれど、そのホームランは野球の世界だけのホームランだけではないことにルイは気づいたかもしれない。
 そんなことを長谷川集平さんは声高にはいわない。
 長谷川さんの文と絵で、読者である私たちがわかるだけだ。
 ホームランを打つことは難しい。
 でも、ホームランを打ったことのない悔しさとか寂しさとかはホームランを打ったことがない者だけがわかることではないだろうか。
 そのことを大事にしているなんていえば、負け惜しみに聞こえるだろうか。
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自信を持っておすすめしたい お父さんは喜劇なのかしら  投稿日:2014/06/15
おとうさんのえほん
おとうさんのえほん 作・絵: 高畠 純
出版社: 絵本館
 人生は、喜劇と悲劇でできている、とよくいわれる。
 さしずめ子育てにおいては、父親が喜劇で母親が悲劇の役を担っているともいえる。
 父親なんて役名さえつかない端役よ、という厳しい母親からの声が聞こえそうでもあるが。
 喜劇といわれようと端役と蔑まれようと、それでも父親は父親なりに子どものことを愛してやまない。
 そんな父親を動物たちの姿を借りながら表現したのが、この絵本である。

 ゴリラ、ペンギン、しろくま、わに、ぶた、ひつじ、ぞう、そしてライオン。
 子どもたちに愛され、なじみの動物たち。
 だから、子どもたちも楽しく、お父さんの姿を楽しむことができる。
 たとえば、ペンギンお父さん。
 子どもペンギンのために大きな雪だるまをこしらえようとがんばっている。やっとこさできたので、さっそく子どもペンギンを呼んでくるが、なんと雪だるまは倒れてしまう。不思議な表情で寝ころんだ雪だるまを見る子どもペンギン。
 大丈夫ですよ、ペンギンお父さん。読者はあなたのがんばりをちゃんと見てますよ。

 たとえば、ひつじのお父さん。
 子どもひつじを驚かそうと壁の向こうで隠れています。「おとうさん、どこいったかな」、子どもひつじの声に喜ぶひつじのお父さん。もうすぐわぁーっと驚く子どもひつじを抱きしめられる。
 ところが、お母さんひつじの「おやつよー」の声にさっさと行ってしまう子どもひつじ。
 鬼の面をかぶって、ヌーと飛び出しても誰もいない。
 大丈夫ですよ、ひつじのお父さん。読者のあなたの切なさがちゃんとわかってますよ。

 たとえば、ライオン父さん。
 壁にお母さんライオンの顔の落書きで遊んでいる子どもライオンをびしっと叱る。ここは父親の威厳を発揮。
 でも、叱られて子どもライオンがいなくなると、壁のお母さんライオンにたてがみを書きくわえて、「おとうさん」と修正するライオン父さん。
 大丈夫ですよ。ライオン父さん。読者はあなたのいじらしい気持ちに涙してますよ。

 お父さんは喜劇なのかしら。それとも、案外悲劇かも。
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自信を持っておすすめしたい 図書館は笑顔の似合う場所  投稿日:2014/06/01
おさるのジョージ としょかんへいく
おさるのジョージ としょかんへいく 原作: M.レイ H.A.レイ
訳: 福本 友美子

出版社: 岩波書店
 「おさるのジョージ」はH.A.レイとマーガレット・レイ夫婦によって生み出された、絵本のキャラクターです。
 あまりの人気に次々と作品が発表されました。
 この絵本も、その中のひとつです。
 「としょかん」が舞台ということで読んでみようと思いました。
 なかよしの「きいろいぼうしのおじさん」と図書館に行った「おさるのジョージ」ですが、外国の、たぶんこれはアメリカでしょうが、図書館事情を知ることができます。
そ の点では、図書館好きにはとても興味深い絵本だといえます。

 まず、「おさるのジョージ」が向かったのは、図書館のお姉さんが本を読んでいる「こどものへや」です。
 最近では日本でも盛んに行われている「読み聞かせ会」です。
 椅子に腰かけて図書館のお姉さんが絵本を読んでいます。子どもたちは床にじかに座っています。もちろん。この中に「こさるのジョージ」もいます。

 次に、図書館の棚の高さです。
 本を探すおとなたちの姿も描かれています。頭が出るくらいですから、そんなに高くはありません。
 背もたれのゆったりした椅子に座っているおじさんも描かれています。日本の図書館ではなかなかこういう贅沢な椅子を見つけることはありません。
 「こさるのジョージ」が乗っていたずらをする「ブックトラック」は、日本の図書館でも見かけます。
 貸出カウンターは円型になっていて、利用がしやすそうです。
 貸出しカードもちゃんとあります。
 もちろん、「こさるのジョージ」も作ってもらいました。

 そんな図書館にいる子どもたちの、なんと溌剌とした笑顔でしょう。
 「おさるのジョージ」が巻き起こす珍騒動のせいではなく、図書館そのものが楽しくてしょうがないのだと思います。
 「おさるのジョージ」のせいで散らばってしまったたくさんの本を書架に戻す子どもたち。
 本を大切に扱わないといけない、という図書館の約束を知っているのでしょう。

 図書館から帰る「おさるのジョージ」を見送る子どもたちの手にもたくさんの本があります。
 本好きの、図書館好きの子どもたちの本が楽しい、いい本だったらいいですね。
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自信を持っておすすめしたい じゅげむ じゅげむ ごこうのすりきれ  投稿日:2014/05/25
いつもちこくのおとこのこ−ジョン・パトリック・ノーマン・マクへネシー
いつもちこくのおとこのこ−ジョン・パトリック・ノーマン・マクへネシー 作: ジョン・バーニンガム
訳: たにかわ しゅんたろう

出版社: あかね書房
 長いタイトルです。長すぎるので引用しません。
 数えると、33文字もあります。
 そのうち、「−」以下は、この絵本の主人公の少年の名前です。名前だけで21文字あります。
 これはイギリスの物語ですが、日本にも長い名前の子どもがいます。
 「じゅげむ じゅげむ ごこうのすりきれ かいじゃりすいぎょの・・・」と、まだまだ続きます。でも、これは落語の「寿限無」というお話。
 この落語でもそうですが、長い名前を呼ぶのにリズムが必要。早口の技術です。
 この絵本で繰り返し出てくる「ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー」という男の名前を読む時も、リズムが必要です。 これは結構難しい早口言葉といえます。
 (もし、お父さんやお母さんとこの絵本を読むのだったら、もっと「早口で!」とせがんでみるのも面白いと思います)

 ここでは短く「ジョン」くんと書きます。
 だって、「ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー」くんなんて書いていたら、それだけで終わってしまいそう。
 「ジョン」くんはまじめな男の子。いつも「おべんきょうしに」歩いています。
 ところが、「ジョン」くんは不幸な男の子でもあって、途中でワニにあったり、ライオンに咬みつかれたりします。だから、いつも遅刻をしてしまうのです。
 先生に遅刻の理由を言っても信じてくれません。
 たしかに、ワニにあったりライオンに咬みつかれたりはめったにしないもの。
 先生は「ジョン」くんに罰として、「もうわにのうそはつきません」と300回書くように言います。
 「ジョン」くんが書いたたくさんの「もうわにのうそはつきません」が、表紙裏に載っています。これを見るだけで、「ジョン」くんがかわいそうになってしまいます。

 この絵本のおわりには、「ジョン」くんの遅刻の理由を信じようとしなかった先生に起こる不幸が描かれていて、「ジョン」くんとともに読者の気持ちもスッキリするようにできています。
 だって、読者は「ジョン」くんの遅刻の理由がワニにあったり、ライオンに咬みつかれたりしたことを知っているのですもの。
 ジョン・バーニンガムの素敵な絵本、もちろん谷川俊太郎さんの訳もいい。
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自信を持っておすすめしたい 商店街は大きなおうち  投稿日:2014/05/18
パンやのろくちゃんげんきだね
パンやのろくちゃんげんきだね 作: 長谷川 義史
出版社: 小学館
 商店街というのはとっても楽しい。
 なんといっても、いろんなお店が並んでいるのですから。
 それって、スーパーといっしょ?
 スーパーにはいろんな商品が並んでいますが、お店は並んでいません。
 魚屋さん、八百屋さん(野菜とか果物を売っているお店のこと)、酒屋さん、クリーニング屋さん、カレー屋さん、それにそれにパン屋さん。
 それぞれが別々の家で、そこにはおじいさんがいたり、おばあさんがいたり、おとうさんもおかあさんもいる。
 もちろん、子どもだっている。
 お店の名前も別々だし、着ている服もちがう。
 それでも、商店街のみんなでいろんなことと助け合っています。
 難しい言葉でいえば、共同体。
 でも、商店街はお店のことだけで共同体ではないんです。

 長谷川義史さんの楽しい絵本「パンやのろくちゃん」はそんな商店街が舞台になっています。
 「かおがパンパン」のパンやのろくちゃんが主人公。
 絵本では珍しいかもしれませんが、絵本雑誌で連載されている作品です。
 この絵本には「じてんしゃにのりたいよのまき」「おとしものをとどけたらのまき」「テレビにでちゃったよのまき」「はいしゃさんにいくのまき」の四本の作品が載っています。

 商店街の共同体のお話でしたね。
 それがよくわかるのは、「じてんしゃにのりたいよのまき」かな。
 自転車に乗れないろくちゃんがお店の定休日でお休みのお父さんと自転車に乗る特訓をしています。
 でも、ろくちゃん、乗れないんですよね。
 そこに酒屋のおじさんが来て、アドバイス。それでも、乗れません。
 次はクリーニング屋のおじさん、さらにはカレー屋のおじさん、まだまだいます、うどんやのおにいさん、花屋のおねえさん、肉屋の大将、まだまだ。
 ろくちゃんはパン屋の子どもですが、商店街みんなの子どもでもあるのです。
 つまり、商店街は大きなおうちみたいなもの。
 困った時には助け合ったり、うれしい時にはみんなで喜んだり。

 こういう場所は今はなかなかありません。
 みんなひとりひとり別々になってしまって、余計なことには口をはさまなくなってしまいました。
 それって、なんだかさびしくないですか。
 ろくちゃんや商店街の人たちをみてると、うらやましくて仕方がありません。
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自信を持っておすすめしたい 漫画家が描くのは変ですか  投稿日:2014/04/27
しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん
しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん 作・絵: 高野 文子
出版社: 福音館書店
 この絵本の作者高野文子さんは漫画家です。
 2003年には『黄色い本』で手塚治虫文化賞を受賞するなど、多作ではないが、漫画ファンにとって欠かせない漫画家の一人といえます。
 そんな高野さんが初めて絵本を描いたのが、この作品です。

 高野さんの漫画は子ども受けをする作品ではないのですが、この絵本は「幼児絵本シリーズ」の一作としてつくられています。
 どういうきっかけだったのかわかりませんが、高野さんと絵本というのはなかなかユニークな組み合わせだと、私などは思ってしまいます。
 しかも、この作品の題材が、敷ぶとんに掛けぶとん、それに枕というのですから、変わっています。
 はてさて、どんな絵本なのかしら。

 敷ふとんや枕といった日常的に使うもの、といっても最近の子どもたちはベッドで寝るのが多いでしょうから、ふとんと敷くということもわかりにくいかもしれませn。
 幼い子どもに読み聞かせる時には、少々アレンジしてあげてもいいでしょう。
 敷きふとんたちの役目をいいリズムの文でつづっています。
 特に気にいったのは、「まくらさん」のお役目。子どもが枕に「おっかないゆめ」を見ないように頼みます。
 「まかせろ まかせろ おれに まかせろ」、枕はもし頭に「おっかないゆめ」がわいてでてきたら、鼻息で吹っ飛ばしてあげると、頼もしいかぎりです。
 これは大人の私でも頼みたい。
 「おっかないゆめ」を見るのは、子どもばかりではないのですから。

 絵の線はいかにも高野さんらしい、ちょっとためらいのある線です。高野さんの漫画が好きな人はこの線がいいのではないかと思います。
 それに色使いもいい。
 初めて絵本を描いてみて、そういうところに心を配ったのではないかしら。
 眠る前にこういう絵本を読んでもらったら、きっといい夢を見るのだろうなぁ。
 そして、この絵本を読んだ子どもたちが大きくなって、高野さんの漫画を読むんだと思ったらら、それもなんだか少しばかりうれしい気分になるものです。
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自信を持っておすすめしたい おねえちゃんだって抱きしめてほしい  投稿日:2014/04/20
ちょっとだけ
ちょっとだけ 作: 瀧村 有子
絵: 鈴木 永子

出版社: 福音館書店
 ふたつちがいの弟がいた。
 残念ながら、弟が生まれた時のことは覚えていない。少しだけ、おにいちゃんになったはずなのに。
 けれど、自分の娘の場合はちがう。
 ふたつ遅れて、妹が生まれてきた時の、上の娘のことはよく覚えている。
 それまであまり甘える子ではなかったが、妹が生まれてから甘えだした。忙しいママに構ってもらえなくなって、指吸いが始まった。この癖はそのあと、なかなか治らなかった。
 そういうことで彼女なりに心のもっていき場をさがしていたのだと思う。

 この絵本は、なっちゃんという女の子のおうちにあかちゃんがやってきたところから始まる。
 ママと手をつなぎたいのだけれど、あかちゃんを抱っこしていてママの手はふさがっている。しかたがないから、なっちゃんはママのスカートを「ちょっとだけ」つかんで、歩く。
 牛乳を飲みたいのに、ママはやっぱりあかちゃんのことで忙しい。なっちゃんは一人で冷蔵庫から牛乳を取り出して、初めて一人でコップにいれる。テーブルの上には、こぼれた牛乳が。
 パジャマも一人で着ないといけないし、髪の毛だって、自分でくくる。
 いつも「ちょっとだけ」うまくいく。
 つまり、その残りはママほどにうまくいかないということだ。

 遊んだあとは、ちいさいなっちゃんはまだ眠くなってしまう。
 そして、とうとう、「ママ、”ちょっとだけ”だっこして・・・」とせがみます。
 この時のママの答えが、いいのです。
 「”ちょっとだけ”じゃなくて、いっぱい だっこしたいんだけど いいですか?」
 なっちゃんの、とびきりの笑顔が光ります。

 文を書いた瀧村有子さんは実際の生活でも三児のおかあさんだそうです。この視点はおかあさんだからこそ生まれたものともいえます。
 絵本はこの作品が初めてだそうですが、やさしくて簡潔な文章は余韻を残します。
 また、鈴木永子さんの絵がとてもいいのです。なかでも、ママに「いっぱいだっこしたいんだけど」と言われたあとの、さっちゃんの笑顔の素晴らしいこと。
 文と絵の、おみごとな調和は「ちょっとだけ」ではありません。
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自信を持っておすすめしたい 本は誰にも読まれなかったら、どんなにさみしいだろう。  投稿日:2014/04/13
さみしかった本
さみしかった本 文: ケイト・バーンハイマー
絵: クリス・シーバン
訳: 福本 友美子

出版社: 岩崎書店
 本は誰にも読まれなかったら、どんなにさみしいだろう。
 だって、本は誰かに読まれるために生まれてきたのだから。
 それは人もおなじ。
 誰からも愛されなかったら、どんなにさみしいだろう。
 だって、人は誰かに愛されるために生まれてきたのだから。

 素敵な絵本に出会いました。
 「森の女の子がかいてある うぐいすいろの本」のことが描いてある、この絵本のことです。
 「森の女の子がかいてある うぐいすいろの本」が図書館にやってきたところから、物語は始まります。この本はたくさんの子どもたちに読まれます。それは本にとっても、子どもたちにとっても、とっても仕合せな時間でした。
 でも、しばらくたつと、子どもたちは新しい本に夢中になって、この本のことを忘れていきます。
 「森の女の子がかいてある うぐいすいろの本」は、さみしくなります。

 それでも、素敵な出会いはあります。
 アリスという小さな女の子が「さみしかった本」を見つけてくれました。
 アリスは少し古ぼけて傷んだ本を大切にしてくれます。何度も何度も読んでくれました。
 しかし、そんな仕合せな時間は長くは続きませんでした。
 「森の女の子がかいてある うぐいすいろの本」は図書館の本ですから、アリスの手元から図書館の倉庫に行っていまいます。
 また「さみしかった本」に逆戻りです。

 この絵本は本の物語です。
 同時に、出会ったち別れたりする人間の物語でもあります。
 人間が出会うのは人間だけではありません。犬や猫にも出会います。大好きになる人形や車ともめぐりあうことがあります。そして、素敵な本にも。
 子どもの頃に出会った本をずっと大切に持っている人は大勢います。愛する人と別れるのがつらいように、愛する本と別れるのもかなしい。
 本は人間の大切な友だちなのです。

 「さみしかった本」は図書館の倉庫からセールとして売りに出されます。
 傷んだ本に買い手はなかなか現れません。しかも、雨まで降ってきて、「さみしかった本」の表紙に描かれている女の子の涙のようになっています。
 「さみしかった本」は、もう誰にも出会わないのでしょうか。

 最後はとっても仕合せになれる本。
 こんな本と出会えるのが、うれしくてたまりません。
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自信を持っておすすめしたい 「・・・!」  投稿日:2014/04/07
だるまさんが
だるまさんが 作: かがくい ひろし
出版社: ブロンズ新社
 「泣く子も笑う絵本」として人気の高いかがくいひろしさんの「だるまさんが」シリーズで、2008年の発売からわずか6年で100万部を突破したといいます、
 一体この絵本にどんな魅力があるのでしょうか。
 そこで、60歳近い私がその解明に乗り出したのです。

 二ページで開きで、ゆらりゆらり揺れるだるまさんが描かれています。
 「だ・る・ま・さ・ん・が」、ひらがなで6文字。
 右に左に揺れるだるまさんが6体。
 次のページを開くと。・・・!
 その次のページも、ひらがな6文字と揺れるだるまさん6体。
 次のページを開くと。・・・!!

 この「・・・!」を書きたいところなのですが、書くとつまらなくなるので書きません。
 では、この「・・・!」がこの絵本の魅力なのかというと、それもありますが、それだけではないと思います。
 それは揺れる6体のだるまさんと次のページの「・・・!」の間に潜んでいるのだと睨みました。
 ページをひっくりかえしても何も出てきません。
 ページをめくるその行為そのものが、面白い空間であり、時間なのではないでしょうか。

 思いがけないものに出会った時の面白さ。
 それを楽しめるのは子どもだけの特権かもしれません。
 おとなは先に何が起こるか、経験で知っています。
 だから、揺れる6体のだるまさんに何が起こるのか、だいたいは想像がつく。
 経験は知恵でしょうが、面白さを半減しているともいえます。
 赤ちゃんと遊んでいると面白いのは、彼らが何をするかわからないからです。
 突然泣き出したり、かと思えば笑い出す。
 あっちに行ったり、こっちにハイハイしたり。

 かがくいひろしさんの「だるまさんが」の魅力は、予測できない(ここでは赤ちゃんにとってですが)面白さといっていいでしょう。
 子どもが素晴らしいのは、予測できないものをもっているからです。
 この絵本そのものがかわいい赤ちゃんなのです。
参考になりました。 1人

自信を持っておすすめしたい ランドセルの思い出  投稿日:2014/03/30
ぼくは一ねんせいだぞ!
ぼくは一ねんせいだぞ! 作: ふくだ いわお
出版社: 童心社
 誰にもランドセルの思い出があるのではないでしょうか。
 私にもあります。
 私のランドセルは母親のおとうさん、私のおじいさんが買ってくれました。遠い田舎から自転車で運んでくれたのですが、途中で転んだと聞きました。
 でも、ランドセルは傷ひとつなかったと思います。
 そんなおじいさんの思い出がつまったランドセルに、いつのまにか給食のパンだとかひどい点のテストとかが押し込まれていきました。
 ごめんね、おじいちゃん。

 この作品の主人公けんちゃんはおばあちゃんから届いた「カラスよりも まくろくろのランドセル」がうれしくて、おもてに飛び出します。
 仲良しのゆうこちゃんに会っても、「ぼくは 一ねんせいだぞ!」と、背中にせおったランドセルを自慢げに見せます。
 けんちゃんにとって、一年生はとってもえらいのです。
 公園に会う人ひとにも、ランドセルを背負ったけんちゃんは、つよがって歩きます。
 ところが、かわいい犬のペロとの遊びに夢中になって、大事なランドセルをなくしてしまいます。
 さあ、大変。
 「かおいっぱいに くちを あけて なきだし」たけんちゃん。
 大事な大事なけんちゃんのランドセル。まだ学校に持っていったこともない、新しいランドセル。
 けんちゃんのランドセルは見つかるのでしょうか。

 ランドセルは学校の教科書とか文房具をいれるだけではありません。
 一年生になった勲章みたいなものだし、それから何年もいつもそばにいる友だちみたいな存在。
 いつのまにか傷がつき、汚れてもいきます。
 ピカピカの光は消えていくでしょう。
 でも、けんちゃんがそうであったように、たくさんの人がピカピカのランドセルを背負った一年生を応援してくれています。
 がんばれよ、まけるなよ、って。

 大人になると、もちろんランドセルを背負いません。
 それでも、新しい生活が始まった時、私たちは見えないピカピカのランドセルを背負っているのではないでしょうか。
 ランドセルをせおったけんちゃんに、たくさんの人が拍手をしたように、新しい生活を始めた人にもたくさんの拍手がおくられているような気がします。
参考になりました。 0人

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