通りすがりに、道ばたでひなたぼっこをしているネコと目が合う。 ふとこちらを見つめられると、なんだかドキッとしちゃう。 その大きくつぶらな瞳に、私はどんな風に映っているのかな。 残念ながら、ネコの目に「私」の姿はただぼんやりとしか映っていないらしいのです。 なぜって…ネコはひどい近眼、なのですから!
動物の生態を解説した本や図鑑はあまたありますが、動物の「視覚」についてここまで深くクローズアップした本に出会ったのは初めて。 その名も「仕掛絵本図鑑 動物の見ている世界」、フランスからやってきました。 イヌやサル、ウシといった哺乳類から、ハトやヤマシギ、カエルにカメレオン、ハエやチョウ。鳥や爬虫類両生類、昆虫まで、登場する20種類の生き物が見ているのは、みんな同じ風景。 私たち人間が見ている視界をベースにして比べてみると・・・生き物たちの目に映る世界は全く違っているのです!
たとえばウマが見ている世界は?しかけをめくってみましょう。 350度も見渡せる視界はパノラマのように広い!背中に乗る人まで見えてしまうのだそうです。 ワシの威圧的な目つきは睨まれているみたいで苦手だったけれど、実はこれ、人相が悪いわけではないらしい!?一キロ先のものまで見えるスーパー視力の持ち主のワシの目には、それなりの苦労と工夫があったなんて。 動物の目や視覚に合わせて趣向が凝らされたユニークなしかけ。 そのしかけの裏にはそれぞれの動物の目の違いが視野、視力、動体視力、色彩、4つのポイントを軸にわかりやすく説明されています。 情報は科学的、図鑑的、動物たちのイラストも緻密でリアルなのに、文章にそこはかとなく漂うユーモアとハイセンスなデザインは芸術的で絵本らしい。 『地球のかたちを哲学する』で注目をあびたフランスの作家ギヨーム・デュプラさん、未知なる宇宙や地球へのあくなき探究心の旅へと誘ってくれた前作とは一転、今作では生き物の「視覚」という新境地への扉を開いてくれました。 この唯一無二のしかけ絵本を生み出した作家の無限大な才能にも、圧倒されます。
今度動物たちと目が合ったら、会話をすることはできなくても、彼らとの距離が少し縮むような気がする。 「動物たちの見ている世界」をのぞけば、私たちの「動物を見る世界」にも変化が生まれてきそうです。
(竹原雅子 絵本ナビ編集部)
猫はとてもひどい近眼。牛と馬は真正面がよく見えない。鳥は人間よりもずっとよく見えていて、ヘビは動きを敏感に察知する目を持っている。最新の研究成果に基づき、動物や昆虫の目に世界はどのようにうつっているのかを同じ光景を描き分けることで表現した、世界ではじめての視覚絵本。動物の目をめくると、そこに見えている世界が広がる、驚きが一杯の仕掛。親子で楽しめ、科学の面白さを自然に体感できる、画期的な大判絵本です。
見えている世界がこんなに違うとは!新鮮な驚きです。家畜として牛を飼っていて、視覚より聴覚・嗅覚が人間より優れていることは気づいていましたが、ストレスで視界が狭まることを初めて知りました。あらためて、牛とのお付き合いで注意しようと思います。
小6と高1の息子たちに見せたら、高1の方が、熱心に見入っていました。夫の77歳になる母(私にとっては義母)は、義務教育すら満足に受けられなかったため、読み書きが不自由ですが、楽しそうに見入り、一所懸命、文章を読む姿を、私は可愛く思えました(鬼ヨメの目にも涙)。
この本に限りませんが、読み書きに不自由している人に、絵本はとても優しくものを教えてくれる存在であることを確信しました。 (goriyおばさんさん 50代・せんせい 男の子15歳、女の子14歳、男の子12歳)
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