報復の悪循環を断ち切った「勇気」と「信頼」の物語
飢饉で食料が尽き、ライオンのリーダーが、仲間たちを引きつれ、人間の村へ向かう。そこには、家畜を守ろうとする、一人の男がいた。ライオンと男の間に、戦いがはじまるが……。
「ヤクーバと、ライオンの王者キブウェがともに相手の命を守り、信頼を確かめるために『見せかけの格闘』をする場面と、そのなかで生まれたともに深く尊敬しあう心とを表現する言葉に触れたとき、私の心は震えた。<ふたりは、ともに相手をふかくふかく尊敬する心でむすばれていた>という文だ。」――柳田邦男
高学年への読み聞かせにも人気。骨太の内容で、読書感想文にもふさわしい1冊です。
1巻の「勇気」といい、2巻の「信頼」といい、少し難しいような気がするのですが、とても深みのある本だと思いました。
そして、1巻でヤクーバがライオンを介抱することまでしなかった理由が2巻でわかります。
お互いは男と野生の王者としてのプライドを尊重したのです。
だから、ヤクーバが飢えたライオンに牛の肉を届けた時、ライオンは立ち去ることを決意した。
ひもじくても、施しを受けてはいけないのです。
一番関心がある場所を先に書いてしまいましたが、2巻の圧巻はヤクーバとライオンのキブウェの闘いです。
ライオンはライオン一族のために闘わなければならない。
ヤクーバは人間のために闘わなければならない。
でも、お互いを傷つけないように自分を抑えます。
これほど難しいことはないでしょう。
間違って、傷をつけたら信頼は壊れてしまうかもしれない。
闘っているときでも相手を信じること。
子どもに伝えることは難しいかもしれませんが、大人にしてもこれほど相手を認めることはできないでしょう。
2巻の「信頼」は、とても崇高な絵本だと思いました。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子13歳)
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