たいすけ一家がすんでいる村は、山の上にあるので水がでません。そこで、とうちゃんは山の中腹に横あなをほって水をひくことにしました。
原田泰治さんの絵本と知って手にとりました。原田さんの体験をもとに書かれたという絵本。原田さんが日本各地を歩いて、土の匂いのするやさしい絵を描き続けてきた原点を感じました。
戦争直後に町から村に引っ越してきた一家。体験したことのない農作業を開墾から始めます。
畑を作り、陸稲を作り、成功したり、失敗したり、大自然を前に挑み続けるお父さん。原田さんの優しい絵に対して骨太の内容です。
題名ともなっている「とうちゃんのトンネル」。お父さんは、農作物に欠かせない水を得るために山にトンネルを掘り始めます。掘り進んで大きな石にぶつかって考え込むお父さん。それを思いやるたいすけの木琴の音色。木琴もお父さんに作ってもらったものでした。
お父さんは大きな石をよけて再び掘り始めます。お父さんは人生をあきらめるなと語ります。
掘り始めて2年目、とうとう水が出ました。水が出ても、田圃づくりも一から始めます。
気の長い、根気のいる、壮大なドラマ。
あきらめるな、あきらめるなと繰り返しているようです。
このドラマの中で、小児麻痺で足の不自由だったたいすけが歩けるようになったエピソードも語られます。原田さんの原点があるのでしょう。
あとがきに、カンテラ、木琴と絵本に出てくる品の写真があります。原田さんの思い出の品。宝物です。
お父さんへの思いを強く感じます。そっと自分のことを考えていました。
人生、家族、自分、etc. 子どもたちにとって、とても貴重なことを教えてくれる本です。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子13歳)
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