背はひくいし、力もよわい。走るのもおそいし、声もちいさい。 100点なんて一回もとったことない・・・。 「わたしって、ええところ ひとつもないなあ」 そんな風につぶやくあいちゃんの気持ち、痛いほどよくわかる。 でも、そんなあいちゃんに「わたしのええところ、教えて!」って聞かれたら、何て答えてあげられるんだろう。
あいちゃんの友だちともちゃんはちゃんと答えます。 「あいちゃんの手は、クラスで一番あったかい」って。 なーんだ、そんなこと?なんて言わないで。 ともちゃんが「クラスで一番あったかい手」を持っているあいちゃんのことを、まるで自分のことみたいに自慢するから、気がつくと周りにはクラスのお友だちがいっぱい。 「ほんとだ!あいちゃんの手あったかい。」 なんて素敵な「ええところ」なんでしょう。あいちゃんも嬉しくなります。 ところが、みんなの手をあっためているうちに、あいちゃんの手は冷たくなってきて・・・ 「どないしよう、わたしのええところが なくなってしもた」。 あいちゃんの「ええところ」は本当になくなってしまったのでしょうか。
小さな子どもたちにとって、大人が思うよりもずっと大切でよりどころとなるのが「自己肯定感」。 この物語を読んでいてわかるのは、自分の「ええところ」を見つけ出すのと同じくらい、人の「ええところ」を見つけ出せることが、どれだけ大事なことかっていうこと。あいちゃんとともちゃんの心の込もったやりとりには、大人の私も多くのことを教えられている気がします。
この温かな自己肯定感を育てる物語を手がけたのは、小学校教諭の経験もされているくすのきしげのりさん。子どもたちは毎日の生活の中で、細かいけれど本当に様々なたくさんの壁にぶつかっています。くすのきさんは、いつでも作品の中でその一つ一つを拾い上げていってくれるのです。関西弁のセリフも、読み手をリラックスした気持ちにさせてくれていますよね。 そして、女の子の繊細で優しくて可愛らしい心の動きを絵で表現しているのが、ふるしょうようこさん。あいちゃんの心にたくさんの花を咲かせてくれている表紙の絵を見ているだけでも、元気をもらえるようです。
あいちゃんとともちゃんの物語。また続きが読みたいな。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
小学1年のあいちゃんは、背が低くて足もおそくて「100てんなんか1かいもとったことがない」。「わたしって、ええところひとつもないなあ」とともちゃんに言うと…。揺れ動く子どもの気持ちに寄り添い、思いやりと自己肯定感を育てる物語。
4年生のクラスの読み聞かせで読みました。
関西弁なので、ネイティブの方が読むと、登場する女の子たちのことばに表れている思いがぐっと聞き手に伝わると思います。
私は、関西弁ができないにもかかわらず「へたでごめんなさい」と言って読んでしまいました。どうしても読みたかったのです。女の子たちの気持ちの揺れや友情の育まれ方、心の成長などがこの一冊にあふれているから。
この本を読むと、自分の存在価値がちゃんとあることを確認できるし、同じ気持ちを友達にも感じてほしいと思うでしょう。相手を思いやる気持ちってこんなふうに生まれるんだなって、親の立場から読んでも学べる部分がいっぱいあります。
また、この絵本は、絵が魅力的です。淡い配色とはっきりした線がレトロ感と今風さを醸し出していて、女の子だったらみんなお気に入りになると思います。
おすすめです。 (けいご!さん 40代・ママ 女の子13歳、男の子9歳)
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