だんごが出てきて、地蔵様が出てきて、鬼の昔話で…。
そんな語りで始まるこのお話は、語り部が目の前の子どもたちに語りかけるような、味わいと温もりとユーモアがあります。
民話ですから、似たような話はいくつも読みましたが、この文章にはストーリー以上の深みを感じます。
方言も良いですね。
おじいさんを表現する言葉の使い分けも細かい配慮を感じますし、ニワトリの鳴き声も「コケコッコー」ではないけれど、声に出して読んでみると確かにニワトリの鳴き声です。
なんだか、いろいろな発見がありました。
対比される隣のじいさんの描き方も良いですね。
鬼の子どもが可愛らしいですね。
隣の爺さんには厳しい現実が待っているのが定型ですが、このお話では、その後のおじいさんがどうなったか、想像させるだけで終わってしまいました。
心憎いばかりの構成で、とても余韻があります。
ただ、伊勢英子さんの絵には違和感を覚えました。
伊勢さんが描く絵は、感情たっぷり、芸術性たっぷりの印象があります。
とても洗練されていて、私の好きな絵本作家の一人なのですが、この本に関しては持ち味が出ていない。
中途半端というか、話に負けてしまっているというか、伊勢英子ファンにはちょっと物足りない絵本になっていると思います。