繊細な線と柔らかな色合いの美しい絵に魅かれて手にとりました。
「なんだか なにかが たりないなあ」
そんな暮らしをしていたもぐらは、テレビで流れたバイオリンの音に心を揺さぶられ、
バイオリンを購入します。
何年も練習し、美しい音色を奏でるようになった頃、地上では・・・。
標題紙のリスの絵から伏線が始まっています。
リスが落としたどんぐりから、
地下では、根がもぐらの部屋に突き出て、
地上では、芽が出ます。
やがて、もぐらの奏でる美しいバイオリンの音は根を通じて、
大きく育ったどんぐりの木から流れ出すのです。
文章は、地下に住むもぐらだけの物語を追っているのですが
絵は、地下のもぐらの暮らしと同時進行で、
地上の物語も描いていきます。
絵本ならではの表現に感嘆させられました。
音が出ない絵本で、音楽を美しく描いているのも素晴らしい!
もぐらが奏でるバイオリンはどんな音だったのでしょう。
心に届き、怒りや悲しみを溶かしてしまう旋律。
それは祈りのようなものだったのかもしれないなぁと思います。
もし、地上の出来事が、もぐらの思い描く夢の形だったとしても、
自分の想いをのせて、見えない誰かのためにバイオリンを奏でるもぐらからは、満たされた幸せが伝わってきます。
テーマが深く、私は大人向けかな、と感じましたが
子どもたちにも出会って欲しい、おすすめの絵本です。
夜、寝る前に読んだら、美しくて平和な夢が見れる、かも。