鎌倉から藤沢まで。
湘南の海岸と鎌倉の史跡、民家の間を走る江ノ電は様々なドラマを作ってくれる路線です。
そんな江ノ電だからとも君はあこがれたのでしょうか。
新幹線でもなく、夜行列車でもなく、リゾート列車でもなく…、江ノ電。
悲しい話だけに、ここに登場する江ノ電がとても意味深く感じられます。
心臓の悪い母親から生まれたとも君
お母さんはとも君の成長を見続けることなく、とも君が9歳の時に亡くなります。
そして、とも君も同じ病気で苦しむことになります。
腎臓も悪かったので手術もできなかったとも君。
とも君のことを考えて、お父さんはとも君を施設に預けることにしました。
家族って何だろう?
一緒に生活できない苦しみ、妻がいない寂しさ、私はこのお父さんのことも考えてしまいました。
施設の生活から入院生活へ。
とも君が生きている間に、とも君の夢を叶えようとボランティア、病院、理解をしてくれた江ノ電の会社の間で、とも君を江ノ電の一日運転手にするプロジェクトが作られます。
待望の江ノ電を運転して、間もなくとも君は息を引き取ります。
感動のノンフィクション絵本です。
とも君は、自分の生まれてきたことの意味をお父さんに問いかけます。
実にとても重い問いかけです。
この世の中に否定できる命などあるはずがありません。
だけど、悲しみ苦しみを共有することが幸せだということでもありません。
答のない事実がここにあります。
答ではないけれど、すべてを抱擁してくれるのが「愛」でしょうか。
思わず感傷的になってしまいましたが、16歳で命を終えた新田朋宏君のためにも、今を生きている子どもたちに夢と命と愛を省みて欲しいと思います。
ついでながら、江ノ電を愛して欲しいとも思います。