ぼくのうちのいちじくの木の下には、赤い郵便箱がかかっています。
そして、毎日、手紙が来ているかどうか調べるのが、ぼくの仕事。
ところが、その郵便箱の中に、なんと、かえるが1匹、引っ越してきたのです。
そして、ぼくが手紙を調べに行くと、そのかえるが、勝手にはがきを読んでいるわけ。
「よそのうちの手紙を黙って読むなんて。」と言うぼくに対して、「ここはぼくのうちだ。うちに来た手紙はぼくの手紙だ。」と言い張るかえる。
「だって宛名が違うだろ?」というぼくに対して、「じゃあ、どうすれば、ぼくにも手紙が来るんだろう。」とかえる。
「手紙を下さい」っていう手紙を自分から書けばいいと教わったかえる。
自分から手紙を書き、来る日も来る日も自分に手紙が来るのを待つのです。
でも、誰からも手紙は来ず、とうとう、かえるは、その郵便箱のおうちから出ていってしまう。
出ていってしまった後で、ぼくが郵便箱を掃除します。中には、「てがみをください」と書かれたはっぱがいっぱいあったんですね。
その時にはじめて気づくのです。かえるはぼくに手紙を出していたんだと。だって、その郵便箱は、ぼくんちの郵便箱なんだから。
そして、ぼくは、かえるに手紙を書きます。だけど、出ていったかえるの住所がわからないのです。
強気でいばりんぼだったかえる。でも、手紙がほしかったんですね。そして、そのことに気づいてあげられなかったぼくの後悔。
ちょっとせつないお話です。